mazexと住友林業の共同開発『林業用』ドローン MORITO(森飛)に注目

林業 ドローン MORITO ガジェット

こんにちは、ドローンインストラクターをしておりますりんごロイドです

突然ですが私は都心ではなく田舎に住んでおります。となると当然、地域ならではのドローンの活用方法を講義する――といったようなお仕事なんかもさせていただいております

当然、農業がいちばん多いんですがこの辺は大手が参入しているので私のような若輩者にはあまり出来ることはありません

農業以外でこれまでに多かったのは害獣対策や防災、それから山菜採りなどで山に立ち入って迷った人の捜索などに使いたいというお声。それから、限界集落で自由に出歩けないお年寄りの方が多いため故郷の風景を空撮して見せてあげたいなんていうものもありました

これらについてはある程度伝えてあげることが出来ていると思うのですが、これらと同じぐらい要望が多いながらもあまり適確なレクチャーが行えていなかった分野が『林業』です

私の住む町(村)も山だらけで林業も盛んです。しかしながら林業でドローンを使うためには色々と制約も多く、なかなかコレと言った方策を伝えることができずにいました

今回mazexが住友林業と共同開発した林業用ドローン「森飛-morito-」であれば、こうした現状を打破することが出来るのか、注目しています

スポンサーリンク

林業でドローンを使うということ

そもそも林業でドローンを使うには何が難しいのでしょうか?

林業従事者の方にお話しを聞くと、このように使いたいというご意見が多いようです

  • マーキングした樹木の巡回
  • 資材の運搬
  • 切り出した樹木の搬出

うーん、見事にどれもドローンが苦手なことばかりです(泣) 他にも聞いたような気がしますが、専門外のことなのであまり覚えていません、スミマセン……

樹木の巡回(パトロール)は、見回りが必要な樹木の様子を定期的に巡回するというものだそうです。何のために必要なのかまでは聞きませんでしたが、病気などを調べているのでしょうか……みなさんも山中で見たことあるかもしれませんね。山中の特定の樹木に目印をつけているアレです

これを実現するためにはGPSによる自動航行ではダメで、今JR等で盛んに実証実験が行われている『画像認識』だけで障害物を回避しルートを守って飛行する性能が求められます

残念ながら一般向けの民生用ドローンにはこうした機能を持ったものはありません。障害物回避だけなら多くの機種が備えていますが、精度は安全レベルとまでは言えないというのが実情です

そして「やっぱり来たか!」という感じの資材運搬ですが、これまたドローンには苦手な分野です

林業はトラックの立ち入れない山中に入っていくことも多いわりに、使用する機材はチェーンソーや発電機、植栽器具に防獣柵など重量のあるものが多いですよね。切り出した木材に至ってはさらに重量があります…

重いものを長時間運ぶ、というのは今のドローンが最も苦手で、克服するためにはバッテリーの革命が必要になってきてしまいます

リチウム硫黄電池が実用化されれば、あるいはより高効率の電池が開発されればまた変わってくるとは思いますが、現状では中々厳しい部分となっております

MORITO-森飛-の特長・出来ること

そんな実情を踏まえつつ、今回mazexから発表された住友林業との共同開発ドローン「MORITO-森飛-」にはどんなことが可能なのかを見ていってみたいと思います

林業 ドローン MORITO

画像引用:mazex

MORITOにはこんな冠言葉が付けられています

林業用自動苗木運搬ドローン

そう、このドローンは資材運搬用のドローンなのです。特にコンテナ苗木に特化した運搬ドローンですね。ですので望まれている使用用途の中の『自動定期巡回』に使っていける機体ではないということになります。ちょっと残念

しかしもう一つの大きな使途である林業向けの運搬に特化しているとのことですので、こちらの点は期待できるのではないかと思います

写真を見るだけで予想がつきますが、苗木の運搬は重労働です

林業 ドローン 森飛

画像引用:mazex

mazexの説明によると、重い苗木を背負って往復数十分かかる山道を何往復もしなければならないとのこと。この重労働をドローンを使って手早く安全に行おうというのがMORITOのコンセプトとなっています

一度に何本の苗木を運べるのかは苗木の種類などによっても変わると思いますが、MORITOのペイロードは8kgとなっています。一般的なコンテナ苗に換算すると40本~80本程度を一度に運ぶことが可能なのだそうですよ

この運搬ですが、吊り下げ型ではなくウィンチによる巻取り型となっています

何しろ現場が山ですので、ブラブラと吊り下げていたのでは木々に引っかけるリスクがありますし、遠心力によりバランスが崩れてしまいとんでもないリスクとなってしまいます

林業 ドローン 森飛

画像引用:mazex

そうしないための安心のウィンチ仕様というのは素晴らしいと感じました。引用させていただいた画像にもあるように、木々に阻まれて着陸できない現場でも高高度から安全に降ろせますし、山地特有の山谷風に対しても安心感があります

また、ウィンチで降ろした苗木は自動で外れる仕組みとなっています

林業 ドローン 森飛

画像引用:mazex

何しろモノが苗木ですので、地面にドスンと落とすわけにはいきません。そこで、ウィンチを下げていき、苗木が地面に接触すると自動的に外れるようなフックを開発したとのこと。それが上の画像のフックです

物理的・数学的なシミュレーションだけでなく『実際に使用した際の使い心地はどうなのか?』といった点をしっかりと検討して開発されていることが伝わってきて好印象ですね

森飛-morito-のスペック

こちらが気になる方も多いのではないかと思うのですが……実はこちらの製品はスペックの詳細が発表されていません。飛行性能などはまるっきり謎です

そこで、代わりにと言ってはなんですが現在公表されている仕様についてざっくりとご紹介させていただきたいと思います

まず、ペイロード(積載重量)が8kgだということを先ほどご紹介しましたが、それでは『苗木以外の資材も運べるのか?』というと、これは条件付きながらイエスです

理論上はペイロード以下の重量であれば飛行できますし積み荷の上げ下ろしも可能です。が、搭載する資材によって重心が異なっていますので、予期しない姿勢の乱れを引き起こす可能性は否定しきれないでしょう

それと、チェーンソーや燃料などを搭載する場合には航空法で規制されていますので、申請をして承認をもらわないとダメなので注意して下さい

続いてカメラについて

MORITOにも当然ながらカメラがついており、チルト方向へのジンバルピッチの調整が可能ですので資材の上げ下ろしをカメラで確認することも可能です

ただ、カメラ性能については触れられておりません

林業 ドローン MORITO

画像引用:mazex

こちらの画像を見るとRunCam製のカメラを使っているのではないか、ということが窺えます。RunCamはRC用のカメラを開発しており、主にドローンレースをはじめとしたFPV用途で使用されるカメラで、画質の綺麗さは二の次という印象があります

MORITOの使いみちを考えると画質を気にする人はそれほどいないとは思いますが、もしRunCamを使用しているのだとしたら、他の民生用ドローンと比較すると映像の質はガクッと落ちるだろうということは覚悟しておいた方が良さそうです

もちろんこの画像がたまたまRunCamのカメラでテストした際のもので、製品版では別のカメラが付けれるという可能性もあるのでハッキリとは分かりませんけどね

そして自動航行についてです

MORITOは自動航行機能を有しており、ワンオペレーションであったとしても専用アプリによる自動航行で資材を運搬して間に現場で作業を進められるので効率的だよ、ということがメーカーによってアピールされています

林業 ドローン 森飛

画像引用:mazex

画像を見るとDJI GS Proにそっくりなアプリが表示されています。というか、たぶんこれGS Proそのものだと思います

考えてみればこれは当然かもしれません。国交省の審査要領としては自動航行アプリとして認められるものは、DJIアプリ(GS Pro、DJI Pilot、DJI Terra等)を除くと3DRの「TOWER」とエンルートの「ミッションプランナー」しかありません

それ以外の自動航行アプリを使おうとすると認められず、追加基準として「補助者を配置し飛行経路全体が見渡せる位置で安全を監視しながら行うこと」という条件がついてしまいます

mazexが語るように、1人で自動航行中に別の業務を進められますよという使い方をしたければ、DJI GS Proを使うしかなかったのかもしれないということが予想できます

とはいえ安全ガイドラインには「自動航行中も機体を監視し、万一の際には速やかにマニュアル介入できるように備えておくこと」とも書かれていますのでそれとは矛盾してしまうんですけどね……。こういう齟齬が色んな所で出てきているのが、日本のドローンルールの良くない部分ですね

最後にサポート体制について

MORITOは、ドローンに不慣れな人でも混乱なく使っていけるよう手厚いサポートがついているのが魅力となっています

  • 国交省への飛行申請代行(飛行実績報告の時期にはお知らせ)
  • 1年間の無償付帯保険(更新時期にはお知らせ)

ドローンはどうしても航空法や関連法規の関係で「使うのめんどくさそう」と思われてしまいます。実際には何てことない作業なのですが、初めてだと尻込みする気持ちはよ~く分かります

MORITOはこうした部分で煩わされることがないよう、メーカーにお任せしておけばオールオッケーというサポート体制を備えています

申請等は一度でもやればすぐに分かりますしドローンへの理解も深まると思いますので、本当は使用者の方に自分でやって欲しいと個人的には思うのですが、このサポート体制は嬉しい人も多いのではないかと思います

めんどくさいことを解消するのはビジネスの基本ですので仕方ないですかね

まとめ

ということで今回は個人的にとても気になる林業特化ドローンMORITOについて色々と書いてみました。これで講義の際に多少は具体例として案内してあげられるかもしれません

林業従事者の方の要望を全て満たしてくれるようなものでは無さそうですが、大幅な省力化・効率化が期待できるというのは間違いなさそうです

ただそのためには当然代価も必要で、MORITOのお値段は2,680,000円(税抜)となっています。税込みで300万円弱ですね

このあたりのコストに見合う価値があるのかどうかも、次に林業従事者の方に講義する機会があった際には聞いてみたいと思います

それではまた~

関連サイト様

株式会社mazex 公式サイト

MORITO(森飛)製品ページ

プレスリリース

 

コメント