Alienware X14 AC駆動時とPD運用時との違いを比較

Alienware X14 PD 性能 PC

前回は全体的なレビューとベンチマークをお届けしたAlienware X14ですが、これは既に多くの海外レビューが出ておりますので既出の情報でもありました

Alienware X14 実機レビューと各種ベンチマーク
Alienware X14の実機レビューとベンチマークをお届け。こちらの記事では外観レビュー、キーボード・ACアダプタ・ディスプレイについて、ファーストインプレッション、ベンチマーク結果をRazer Blade 14との比較でまとめています

今回は個人的に最も気になっている『ACアダプタ運用とPD運用ではどの程度パフォーマンスが低下するのか』ということを検証していきたいと思います

この点は著名レビュワーの方は書いてくれない(書けない?)部分になってますので、自腹レビュワーの私は不満に感じた部分も遠慮なくガンガン明らかにしていきたいと思います

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前提知識

既にこの知識を持っている方は読み飛ばし可です

結構多くの方が

第12世代Core i9だから高性能だぞ! RTX3080を積んでるから高性能だぞ!

と思ってるようなのですがそうではありません。あえて誤解を恐れずに言えば、何を積んでいるかはそこまで問題ではなく、大事なのは『どれだけ電力を消費しているのか』という点になります

電力=パワーなのです。名前に騙されちゃいけないよ、ってことですね

もちろんワット(電力)あたりのパフォーマンス【通称:ワッパ】も考慮すべきですが、現状のハイエンドラップトップにおいてはApple M1シリーズ以外ワッパにそこまで劇的な差は無いです。極端な話、同時期にリリースされたCPUであれば、ワッパの悪いCPUでも惜しみなく電力をかけてやれば性能は上がっていくことになります

Intelは以前からその傾向が強かったですが、12世代でようやくハイブリッド方式になって変化の兆しあり。AMDはワッパも性能もどちらも重視。Appleはワッパ重視かなと感じます

実際には世代の違いによるプロセスノードの微細化、コアの効率性、クロック、帯域幅、チップセットなど性能を決定する要因は様々です

が、分かりやすくするため『同世代のCPUで比較すれば概ね消費電力で性能が決まってくる』と、あえて雑な説明をしています。承知の上で書いてますのでツッコミは不要です

脱線してしまいました。閑話休題

ということは当然ながら、普段フルパワーでは200W程度で動作しているラップトップをPD(現状のPD3.0は上限100Wまで)やバッテリーで動作させてしまうと、得られる電力が減少するためそのぶん性能は低下していくことになります

今回はここを見ていきたいというわけです

Alienware X14に付属するACアダプタは130W出力のものになっています。それに対してPDは最大でも100Wですので、ライバル機である200WクラスのASUS Zehyrus G14 2022やRazer Blade 14よりかは電力低下割合が低いですがそれでも性能は低下するはずです

Alienware X14 PD 性能

今回使用するPD充電器をつないだ時の警告

ちなみにバッテリー駆動時の性能低下割合については既にNotebook Check 様がまとめてくれております。それによると

  • CPUのPL2は115Wに設定されているが、AC電源時の最大値は100W
  • それに対してバッテリー駆動時の最大値は80W
  • GPUは60W+Dynamic Boost15WでTGP75W。AC駆動時の最大値は75W
  • それに対してバッテリー駆動時の最大値は60W
  • CPU・GPUどちらにも負荷がかかっている際はGPU優先で動作する↓
  • バッテリー残量が50%以上の状態ではCPU 30~35W・GPU 60~65W
  • バッテリー残量が50%以下の状態ではCPU 30~35W・GPU 40~50W

となります。バッテリー動作時でも性能低下割合が少ない(特にGPU)のがAlienware X14の利点だということですね。これは予想通りの挙動で嬉しくなりました

では、フルパワー(130W)とはいかないまでも、それに近いパワー(90W~100W)の電力をPDで得ている場合にこれがどう変化するのか、見ていってみましょう

Alienware X14 PD運用時のベンチマーク

今回は90W給電が可能なこちらのPD充電器を使います

100Wの充電器使えよ!」って感じでしょうが、持ってないのです

じゃあ買えよ!」ともお思いでしょうが、貧乏なので次に買うならPD3.1に対応した101W~240W充電器まで待ちたいので今回はこちらで勘弁して下さい(ToT)

例によってこれまでメインで使ってきたラップトップであるRazer Blade 14(RTX3070)のPD運用時と比較していきます

PD給電時はターボ以上のモードに設定できないため、どちらの機種もバランス設定(設定可能な中で最もパフォーマンスが出る状態)で計測しています。また、どちらもバッテリー残量がほぼ100%の状態でPD給電を行いながらテストしています

なおグラフ画像の方にはACアダプタ接続時のスコアも掲載してありますので、性能低下具合の参考にしていただければ幸いです

PassMark(CPU Mark)

Alienware X14 PD90W
Razer Blade 14 PD90W
PASSMark 5222 4030
CPU Mark 28653 20188
2D Mark 486 384
3D Mark 11927 7494
MEMORY Mark 3264 2587
DISK Mark 37884 24326

Alienware X14 PD 性能

中々面白い結果になりました

PL2で115W(Alienware X14の場合は100Wまで)を要求するCPUはPDでは電力が足りず、フルロードすると少し性能が低下しています。と言ってもその性能低下率は10%程度で済んでいます

それに対してGPUの方は性能低下しておりません。これは60W+15WというGPUの要求電力を余裕で満たせる電力がPDで給電されているからということですかね

PD運用時においてはグラフィック性能含む全ての項目で、RTX3070を搭載するRazer Blade 14を上回っています

GeekBench 4&5

Alienware X14 PD90W
Razer Blade 14 PD90W
GeekBench4
シングルコア
7836 5914
GeekBench4
マルチコア
51161 26838
GeekBench4
GPU(OpenCL)
236486 81537
GeekBench5
シングルコア
1758 1424
GeekBench5
マルチコア
14048 6371
GeekBench5
GPU(OpenCL)
94587 35333

Alienware X14 PD 性能Alienware X14 PD 性能

どうにも変な結果になるGeekBenchです。さすがにこれを鵜呑みにする気になれないのですが……

一応このテスト結果だけを見ると、Alienware X14はPD運用においても全く性能低下が起きず、Razer Bladeとは天と地ほど性能差が開く――ということになります

GPUはともかくとして、Razer Bladeの方のCPU性能低下度合いはちょっと考えられないレベルですのであまり気にせず次にいきます

CINEBENCH R20/R23

Alienware X14 PD90W
Razer Blade 14 PD90W
CINEBENCH R20
シングルコア
677 559
CINEBENCH R20
マルチコア
4976 4200
CINEBENCH R23
シングルコア
1752 1424
CINEBENCH R23
マルチコア
12489 10673

Alienware X14 PD 性能

負荷のかかってないシングルコアテストでは性能低下が起きません。それに対して、フルロードが必要なマルチコアテストでは性能低下が起きています。低下率は15~20%程度でしょうか

それでもAlder Lakeの地力の高さがものを言って、ACアダプタに接続されているRyzen(5900HX)よりも高いパフォーマンスを発揮しているのは嬉しい誤算です

PD運用時のAlienware X14は、クソ重いACアダプタを持ち歩いて運用するRazer Blade 14よりもCPU性能が高いということになります

PCMark10

Alienware X14 PD90W
Razer Blade 14 PD90W
Essentials 10264 8825
Productivity 10036 8806
Digital Contents Creation 10165 6646
総合スコア 7280 5752

Alienware X14 PD 性能

こちらのテストで見る限り、Alienware X14はPD運用において一般的などの用途でもパフォーマンスが低下しないということになります

PCMark10は、他のベンチマークのようにフルロード状態を長時間続けたり、CPUもGPUも長時間酷使するようなテストはほぼありませんのでこのような結果になったのでしょう

実際そのような使い方になり得るのはクリエイション系のソフトを使う時ぐらいだと思いますので、一般利用においてはPD運用でもAC運用時と全く同じに使っていけると考えて良さそうです

PugetBench

Alienware X14 PD90W
Razer Blade 14 PD90W
PugetBench for Premiere Pro 839 326
PugetBench for Photoshop 1088 713
PugetBench for After Effects 886 407

Alienware X14 PD 性能

というわけでそんなクリエイティブ系のテストですが、これは嬉しい誤算でした

PD運用でも性能低下割合は10~15%程度に抑えられており、Adobe系ソフトの利用でもACアダプタで運用するRazer Blade 14よりもハイパフォーマンスだというのです!

私にとって最も重視するのがこれらの使い方ですので、この結果はかなりアガります

Fire Strike(3DMark)

Alienware X14 PD90W
Razer Blade 14 PD90W
Graphics Score 18633 5705
Physics Score 30411 21639
Combined Score 7602 2086
総合スコア 17141 5366

Alienware X14 PD 性能

これはちょっとよく分かりません

PDの方がACよりスコアが良いのは誤差の範囲だと思うのでいいのですが、Combinedのスコアは低下するはずだと思っていたのに、結果は変化なしでした

ハッキリしたことが言えず申し訳ないのですが、とりあえずPD運用でもパフォーマンスが低下していないことは確認できました

Time Spy(3DMark)

Alienware X14 PD90W
Razer Blade 14 PD90W
Graphics Score 7354 2098
CPU Score 14358 7913
総合スコア 7934 2357

Alienware X14 PD 性能

Fire Strikeと同じ傾向で、こちらもPDによるパフォーマンスの低下は見られませんでした。Combinedのスコアがなく、GraphicsとCPUそれぞれのスコアのみですので、こちらについてはある程度予想の範囲内です

それにしてもPD運用時のRazer Blade 14におけるGPU性能の低下は悲しくなるレベルです……。これめっちゃストレスでしたので、この点が改善してくれるのは本当に嬉しいです

ドラクエ10ベンチマーク

条件を揃えるため両機種とも「最高品質・1920×1080・フルスクリーン」で実施

Alienware X14 PD90W
Razer Blade 14 PD90W
スコア 21779 18626
評価 すごく快適 すごく快適

Alienware X14 PD 性能

惰性でやってるだけのテストなので参考にならないと思います。お気になさらず(笑)

FF14ベンチマーク

条件を揃えるため両機種とも「高品質(デスクトップ)・1920×1080・ウィンドウ」で実施

Alienware X14 PD90W
Razer Blade 14 PD90W
スコア 17135 5996
評価 非常に快適 普通

FF15ベンチマーク

条件を揃えるため両機種とも「標準品質・1920×1080・ウィンドウ」で実施

Alienware X14 PD90W
Razer Blade 14 PD90W
スコア 9460 2828
評価 とても快適 やや重い

Alienware X14 PD 性能

グラフは14と15とでまとめさせてもらいました

先ほどの3DMarkもそうでしたが、ゲームにおいてはCPUへの負荷が軽いため、GPUがダイナミックブーストを用いてきちんと60W+15Wのフル性能を発揮できているようです

つまり、ゲームを楽しみたい人も、Alienware X14であればPD運用でほぼフルパフォーマンスが発揮できるということになるわけなんですね

まとめ

ということで、ある程度予想していたとはいえ期待以上のPD動作性能を見せてくれたAlienware X14。今回使用した90W出力のPD充電器においては、ACアダプタ運用時とほとんど同じ性能で使えることが分かりました

本当に最高の結果です。悩みに悩んでZephyrus G14ではなく、こっちを購入してマジで良かったです

面白いのは、PD運用においては本来は全然性能が上のはずのRTX3070を搭載したRazer Blade 14よりも、Alienware X14の方がCPUはもちろんのことGPUでも高い性能を発揮できていること

Razer Bladeの方はPDで60Wまでとか制限かかってんじゃねーの? ケーブルが100Wに対応してねーんじゃねーの? 個体差や初期不良なんじゃねーの?

などと思うかもしれませんがそうではありません。Razer Bladeも負荷時はちゃんと75W~80W給電されています。Alienware X14と全く同じ充電器・ケーブルを使ってますし、同じだけの電力が供給されているのです

Alienware X14 PD 性能

RB14のPD時の様子。75W~80Wで給電

なのになぜこのような性能逆転現象が起きるのかというと、これはPD運用やバッテリー運用時にどれだけ電力を制限するのかということをベンダーが設定しているからです

例えば今回テストしたRazer Blade 14は、100W PDで動作させても50Wがシステム予約に回されてしまい残り50Wでブン回すという仕様になっているらしいことが以前にRedditに書かれていました。そしてこれはAMDの制限によるものだとも……

だからAMDを採用しているZephyrus G14は避けたかったというのが結構大きな理由です

それに対してAlienware X14はPD運用でも90W~95W(今回は90W PDのため実効84W前後)を安定して使うことができるので、それが性能差になって現れたんですね

Alienware X14 PD 性能

AWX14のPD時の様子。80W~84Wで給電

また、Razer Blade 14は(というよりAMDのRyzenを搭載している機種は)PD運用時にはCPUには多めに電力を回すけど、その分GPUの方はかなり性能を絞るという設定になっているみたいです。だからPD運用時には特にグラフィック性能の低下が著しくなる――と

こういうことってメーカーはちゃんと正直に書いておくべきだと思うんですよね

最近はAppleをはじめとして、メーカー各社がCPU名称やGPU名称で錯誤を起こさせたり、ベンチマークスコア詐欺をするケースが増えてきているように感じられてなんだか悲しいです

ノートPCを購入する際にはCPUやGPUの名前だけでなく

  • TDPやTGPはどのぐらいに設定されているのか?
  • それはユーザーの意思で変更できるのか?
  • PD使用やバッテリー使用ではどのぐらいの性能を出せるのか?

といったあたりまでしっかりと想像して買うことが大事なのかなと思います

あえてASUSのZephyrus G14 2022を見送った私ですが、その甲斐あって非常に満足いく結果となってとても嬉しく思っています。この記事が読者の皆さんがPCを選ぶ時の参考になれば幸いです

それではまた~

コメント

  1. Ankerの100W繋げたら90Wと表示されたので買わなくて良かったですねw

    • 匿名さん

      コメントありがとうございます。貴重な情報感謝です

  2. はじめまして、こんにちは
    今、まさに同じ内容で悩んでいて
    ゲーミングノートが欲しいが、あくまでモバイルとしての性能と
    実働性能が捨てられなくて悩んでた所に、コアな情報を頂きました。
    ありがとうございます。

    • 匿名さん

      コメントありがとうございます。お役に立ったなら嬉しいです。
      良いノートが見つかるといいですね

  3. Ankerから単穴で140WのUSB-PDの充電器が販売されておりますが
    もしかして試されてたりしないかな~と思いコメントしました。
    スペック上は付属ACアダプターと同等の電源供給が出来るので気になっています。

    • saiさん

      コメントありがとうございます
      Youtubeに動画を上げただけで記事には出来てませんでしたね、すみません。Ankerより一足早く出たアドテックさんので試しています
      https://www.youtube.com/watch?v=2_SwC8HfsF8

      残念ながら不可能です
      Ankerのものも同様ですが、最近出ている140W充電器は28V×5Aで140Wを実現しています
      対してAlienwareは20V×6.5Aで130Wを実現していますので電流上限により不可能ということになります
      詳しく興味があったら動画の解説を見ていただけると幸いです

      なお、Ankerの単穴140W充電器でも、当然100W未満の電力による給電は可能です
      実物を持ってないので絶対とは言えませんが、恐らく高い確率で90WのACアダプタとして認識されると思います

      • 回答ありがとうございます。
        Youtubeのほうは追えていませんでした。見てきました。

        PDで100W↑の給電が出来ないのは残念ですが
        PD規格側が5A超えに対応するよりもPC側がリビジョン3.1に対応してくるほうが早そうですし
        後継機(13世代coreiが載った)に期待ですね。

        • saiさん

          全くもってその通りだと思います。Appleだけはそつがないというか28V5Aで140W給電が出来るんですよね
          充電器メーカー側も「MacBook Proで使えます」というのをセールスポイントにするためにまずはそうした製品を出したように思えてしまいます

          個人的に期待したいのはやはり240W給電(48V5A)のPD3.1ですので、そちらに対応したゲーミングPCの登場に思いを馳せています
          13世代Core iのラップトップが出揃う頃には夢が叶ったらいいなと思っています

  4. PD給電中は充電は減らないでしょうか?
    自分が使っているものはpd給電でもゴリゴリ削れてしまって…

    • 田中太郎さん

      コメントありがとうございます
      使用内容にもよるのでしょうが私の使い方では減らず、むしろモリモリ増えていきます

      この機種はフルパワー時130Wの電力を要求しますがPDでは90Wまででしか給電できません(複数の100W PD充電器で90Wとして認識。もし100Wで給電できるものがあるなら100Wが最大となります)
      そのため重めのゲームなどでCPU&GPUをぶん回し続ければ減っていくことはあり得ると思います
      理論値ですが130W要求に対して90Wの給電ですので、この機種のバッテリー容量は80.5Whですから100WアダプタでPD充電しながらでも2時間程度で空っぽになってしまうことは理屈の上ではあり得ます

      重い作業をしていないのにバッテリーがゴリゴリ減っていくなら異常ですのでサポートに連絡した方がいいかもしれません
      HWMonitorなどのソフトで消費電力を監視しながら使ってみるのもいいかもしれません

      参考になれば幸いです