楽天が携帯に参入する件を解説してみる。今の楽天モバイルとは違うよ

楽天 携帯参入 解説 TIPS

今年の10月から第4の携帯キャリアとして参入する楽天

このニュースは多くの人が知っていると思いますが、じゃあ「具体的にどういうことになるのか」とか「今ある楽天モバイルと何が違うのか?」という話になると、ちゃんと理解できている人は少ない印象があります

そこで今回は、楽天が携帯キャリアに参入することで何が変わるのか? という点を中心に、格安SIMと言われるようなMVNOと、楽天を加えた4大キャリアのMNOとで何が違うのかなどを分かりやすくシンプルに解説してみようと思います

ネット上のこういう記事は、最終的に「任意の回線の契約をさせる」ための提灯アフィ記事ばかりになってしまった印象がありうんざり情報の正確性とか、正しいメリットが伝わるのかという点で不安を感じることが多いため、当記事は一切アフィリエイト広告は貼らずに解説します(勝手に表示されるリスティング広告はご容赦下さい)

客観的な解説を心がけますので、これを読んだ方が「自分にとって最適なのは3大キャリアか格安SIMか」を知るきっかけとなってくれたら嬉しく思います

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3大キャリアと格安SIMの違い 概要

まず、現在の日本における携帯電話の移動体通信事業者――いわゆる『携帯キャリア』と言われる事業者は3社しかありません。みなさんがよくご存じの

  • docomo
  • au
  • softbank

です

「え、マイネオは?」「LINEモバイルとかあるじゃん」「Y!モバ使ってんだけど」などなど思うかもしれませんが、通称『格安SIM』と言われるこれらは全て、移動体通信事業者ではありません

では何なのかというと「仮想移動体通信事業者」に分類されます

この両者の最大の違いは、通信を行うための物理的な回線網を自社で保有・運用しているかどうか、という点になります

docomo、au、softbankの3社は自社回線を保有・運用しており、それ以外の格安SIMと言われる事業者はこの3社のうちのどこかの回線を間借りしているというのが現状となっています

楽天は今現在「楽天モバイル」という携帯事業を展開していますが、これは「仮想移動体通信事業者」だということになるわけですね

楽天 携帯参入 解説

具体的にはサービス開始当初はdocomoの回線を。最近ではau回線も加わり、ユーザーはdocomo網かau網か、好きな方を選べるという仕様になっています

つまり今現在の楽天モバイルのユーザーは、間接的ながら実際にはdocomoユーザー又はauユーザーであるということになります

これを変えようというのが、今回の楽天回線開始という事業なのです

楽天が自社で基地局やネットワークを整備し、docomoやauに間借りしている状態ではなく、自社回線を使って通信を行えるようにすることを目指しています

なぜこのようなことをするのかというと、当然企業にとってメリットがあるからするわけです。その辺りのことを次章で解説していきます

なお、以後は移動体通信事業者のことをMNO、そして仮想移動体通信事業者のことをMVNOと呼称します。これは一般的な用語なので、この機会に覚えちゃうといいかもしれません

  • 移動体通信事業者(Mobile Network Operator):MNO
  • 仮想移動体通信事業者(Mobile Virtual Network Operator):MVNO

楽天はなぜMNOに参入するのか

MNOとMVNOにはそれぞれメリット・デメリットがあります。これは事業者側とユーザー側のどちらにも言えることですので、見やすく表にしてみようと思います

MNO メリット デメリット
事業者 設備やサービスの拡充を自社で行える
ユーザーへの信頼感が段違い
設備の設置・維持にコストがかかる
ユーザー 通信速度が高速
サービスに対しての信頼感が高い
料金が高い
MVNO メリット デメリット
事業者 自社でネットワークインフラを用意する必要がない
ゆえにサービス価格を安く設定可能
格安SIMが一般的に浸透したとは言い難く信頼感がイマイチ
サービスエリアは間借り先のMNOに依存する
ユーザー 料金が安い MNOと比べて通信速度が遅い
格安SIMに不信感を持つ人も一定数いる
多少知識が無いとAPN設定等分からない

おおよそこのような感じだと考えることができます

これを見ると分かる通り、企業側からしたらMVNOとして運用していく方がメリットが大きかったりします。ネットインフラの維持というのは膨大なコストがかかるため、安く回線を借り受けられるならその方がいいに決まっていますよね

でもMNO側もバカ聖人じゃないですので、全く同じサービスを提供できる環境を間借りさせたりはしません。その反動がMVNOのデメリットとして現われている

  • 回線速度が遅い
  • 特定のアプリが利用できない

といった点につながっています

回線速度が遅いというのは、MVNOに対して貸し出す帯域が決まっているため速度が上がりにくく、また同一の回線を使用するユーザーが増えるほど回線を圧迫していき、速度が出なくなってしまうために起きてしまうデメリットです

回線の一部を間借りしているわけですから元々の帯域が狭いうえに、すぐにパンクしてしまいやすいということになるわけですね

それから特定のアプリが使用できないという点。代表的なものだと「LINE」があります

楽天 携帯参入 解説

LINEは完全に使えないわけではありませんが、年齢認証を必要とする機能はMNOの年齢認証機能と紐づけられています。このため例えば、IDによるユーザー検索やともだち登録は格安SIMではできなくなっています(ただしLINEモバイルだけは独自の認証によって格安SIMでありながらフル機能が使えます。セコイ笑)

楽天 携帯参入 解説

そして格安SIMの多くは実店舗を持っていないことが多いため、SIMの契約やAPN設定など多少の知識が必要となってしまいます

これらのことからMVNO(格安SIM)に対して「遅い」「つながりにくい」「使えない」「難しい」という印象を持っている人が多く、圧倒的な料金の安さを誇っているにも関わらずMVNOへ移行する人は企業が思うほどは伸びていないという現状になってしまっています

実は楽天は、楽天モバイルを開始する際に「1000万契約を目指す」という目標を掲げていました。インフラは間借りしつつ、シェアだけはちゃっかりライバルと同水準で確保しようとしてたわけですから強欲です(笑)

しかし実際には3年で100万契約と、思うようにいかないといった厳しい現実が待っていました。原因は、先ほど挙げた諸々なのだろうと予測されます

そこで楽天は(渋々)新たにMNOとなることでユーザーの信頼性向上を図り、頓挫してしまった顧客の大幅獲得を目指していく、というのが今回の楽天モバイルMNO化の背景であると言えます

楽天がMNOになると変わること

では具体的にどういう流れで楽天のMNOサービスが始まるのかという点を解説しておきます

楽天のMNOは、現在MVNOである楽天モバイルを置き換えていくという形でスタートします。10月になったら楽天モバイルユーザーはみんな自社回線に切り替わるというわけではなく、段階を踏んで切り替わることが発表されました。最初は商用回線からスタートするとのこと

続いて一部のユーザーに対して提供を開始していくと発表しています。この一部のユーザーというのが、一般の希望者なのか現楽天モバイルユーザーの中の希望者なのかは不明です。以前は「楽天モバイルユーザーは自分で任意に切り替えが行える」とされていたのですが、それは見送られたことになります

その後はまずインターネットによる申し込みの受付を一般に行い、続いて実店舗でも申し込みを受け付けていくという流れをたどるそうです

続いて、恐らくみなさんが最も気になるであろう通信品質についてです

MNOとなる楽天モバイルに割り当てられた周波数帯は、1.7GHz帯という周波数帯です。現在はdocomo等で利用されているBand3と呼ばれる周波数帯ですね。現在はこれしか割り当てられていません(今後増える可能性はあり)

当然この周波数帯だけでは満足な通信が行えません。特にオフィス街や山間部など障害物が多いところでは、周波数が高いため回折性(障害物を回り込む性質)が低く、電波が届かないといったことが起きがちです

俺もプラチナバンド(1GHz以下の低周波数帯)をゲットするまではつながりにくかったぞ

そこで当面はauの回線を間借りするローミングという方法によって通信エリアを確保していくという方法が採られます。当面と書きましたがずっとかもしれません。総務省は「ローミングに頼り過ぎてはダメだ!」と楽天に釘を刺していますが、5G導入が間もなくですのでそれまではのらりくらりとかわしていく可能性はありそうです(笑)

楽天モバイルの自社回線の恩恵をフルに受けたい人は、Band3に対応した機種を購入すれば良いということになりますが、回折性が低いため電波には不安があることに加え、その回線が整備されるのは当面、東京・大阪・名古屋だけです

ということで現実的に楽天モバイルMNOを利用するには、auのバンドに対応した機種が必要になるということを覚えておく必要があります

となるとちょっと困ったことが分かってきますよね

現在docomo回線で楽天モバイルを使っている方は、回線を楽天の自社回線に切り替えてしまうと通信ができなくなる可能性があるということになります。これは使っている機種がauのバンドに対応しているかどうかによって決まります

例えば最近のiPhoneは対応バンドがものすごく多いですので問題ありませんが、昔のiPhone、あるいはdocomoからしか発売されていない機種の一部は、auのバンドに非対応のため回線切り替えを行ってはいけないということになりますので注意して下さいね

最後に料金について

……なのですが、これは三木谷社長が「他社に情報を与えたくない」ということで未だに明かされていません。私は一応、今のプランと大きく変わらない価格になるだろうと希望的な見方を持っていますが、もし値上げされてしまったらこれは非常にツラいです

なぜなら、自社回線の整備が東名阪エリアに限定されており実質はau回線のローミング(ほとんどMVNOと同等)であるにも関わらず、料金だけが値上げされることになるからです。しかもdocomo回線を使っていた層までau回線を使うことになるので、今より速度が遅くなる可能性すらあります

これは最悪の想像ですが、無いとは言えないところが怖いです

まとめ

シンプルに簡潔にと言ったのに全然簡潔じゃなかったですね、すみません……

楽天モバイルがMNOになることの変化をまとめると

  • 今の楽天モバイルよりも高速通信が可能になる
  • ただしそれは当面、東名阪エリアに限定される
  • 他のエリアは現状のau回線MVNOと同じかそれ以下の通信品質になる
  • 切り替えはすぐには行われない。一般に開放されたあとも任意のタイミングで切り替えが可能
  • docomoバンドにしか対応していない機種の人は、切り替えると通信ができなくなる可能性がある
  • 料金はMVNO並を維持してくれると期待したいが最悪値上げも覚悟しておいた方がいいかも

というような感じとなりました

実店舗を構え、MVNOではなくMNOとして再スタートを切ることになると今よりも親しみやすさ・信頼感が増してユーザーは増えると思われます。しかし当面は「遅い」「つながりにくい」などの不満も頻出するのではないかと思います

あれ? この光景はどこかで覚えがあるぞ……

そう。これってSoftbankがサービスを開始した時と全く一緒なんですよね。ですので私の予想としては、はじめは不満が出たりはするものの徐々に市民権を得ていき、最終的には4大キャリアとして他社と肩を並べるようになっていくのではないか、というイメージを抱いています

もし本当に価格据え置きだったら、一気に市場をさらっていく可能性もちょびっとあるかもしれませんけどね。ソフトバンクはプラチナバンドゲットとiPhoneの発売が起爆剤となりましたが、果たして楽天はどうなるでしょう!?

それでは今回はこのへんで~

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