前回の記事でお伝えしたSGWZONEのGaming & AI BOX eGPU DockのRTX4060版がようやく届きました。配送遅っ!! そっちがミスったんだからもっと早い運送会社使ってほしかったです。相変わらず発送日は嘘つかれたし……
あと、これは海外通販では仕方ないことだけど、再送なのに輸入消費税がもう一度取られたのもイラっとしました。これは海外通販のリスクだって分かってるし保証を受けるためとかなら納得もできますが、今回は相手の発送ミスですので、うーん
このeGPU最大の特長はDIYによってGPUやポートを自由に交換・アップグレードできるという点にあります。将来的(今年年末頃)にはThuderbolt 5に対応したRTX4080/4090版もリリースすることをウリとしていますが
こんな企業体質じゃアップグレードキットなんて買えるかよ!
という感じです。この1カ月はほんとイライラしながら過ごしていました。私はけっこう海外通販やクラファンも使ってますが、間違いなく最低の購買体験でした
愚痴の前置きが長くなってしまいスミマセン。以後が本編です
SGWZONE Gaming & AI BOX eGPU Dockの概要と小ネタ
SGWZONEのGaming & AI BOX eGPU Dock 概要
GPDやOne-Netbookと比べてこのメーカー・製品はかなりマイナーだと思いますので、先にこの製品について簡単にどんなものなのか説明しておきたいと思います。ご存じの方は読み飛ばして下さい
このeGPUはGPD G1同様、GaN電源を内蔵したポータブル可能なeGPUです。ライバルとの大きな違いが、先ほども書いた、DIYによってGPUやポートを自由に交換・アップグレードできるという点になっています
Gaming & AI BOX eGPU Dockで採用されているGPUはMXM規格という、今の若い人は知らないかもしれないGPUになっています
以前、「ラップトップであってもデスクトップのようにGPUを交換できるようにしよう」という考えから作られた規格なのですが残念ながら一般受けせず廃れてしまいました
SGWZONEはこのMXM規格に則ってGPUモジュールを設計しており、現時点での選択肢を設定するのはもちろんのこと、将来的にはGPUをアップグレードしていけるようにというメリットももたせることをアピールポイントとしたeGPUになっています
現時点で選択できるGPUのバリエーションは以下
- AMD Radeon RX6600M
- Nvidia RTX 4060
注目すべきはRTX 4060で、このGPUはモバイル版やラップトップ版(Max-Q)ではなくデスクトップ版のGPU(AD107-400)を採用しています
もちろん今回レビューするのもRTX 4060版になります
また、ポートの交換もDIYによって可能でThuderbolt接続以外にOcuLink接続も可能となります。両方のポートを備えたモジュールは(現時点では)存在せず排他なのはちょっと残念ですが、OcuLinkを使っている人からすれば選択肢があるだけでもありがたいとも言えます
まあ、どちらかしか使えないなら性能が低下してもサンボルを使っていくべきだとは思いますが……
両者の違いは以下の通りです
USB4(Thunderbolt)モジュール | OcuLink 4.0×4モジュール | |
専用ポート | USB4 (Thuderbolt 3&4互換)×2 | OcuLink 4.4×4ポート×1 USB Type-C(3.0)×1 |
Type-Cポート給電能力 | 85W | 90W |
共通ポート | USB 3.0 Type-Aポート×3、HDMI2.0×2、DP1.4×1 |
ちなみにThuderboltモジュールですがこれはThunderbolt 3&4互換という表記になっており、あくまでUSB4仕様であるため相性問題などが出る可能性はあるかと思います。DIY仕様という点も含め、ある程度知識のある人が使うことが想定されている製品なのかなと思います
ポン付けで使いたい人はぼったくり価格を払ってでもROG製品(XG Mobileと対応するASUS製PC)を使う方がストレスが少ないのではないかと思います
製品詳細やモジュール交換の方法などは前回の記事に書いているので、興味があったらそちらも見てみて下さい
SGWZONEのGaming & AI BOX eGPU Dockの小ネタ?
今回期せずしてAMD版とNvidia版のどちらも試す機会を得たわけなのですが、両者に微妙な違いがあったので一応書いておきます
まず筐体デザインがほんのわずかですが違います
まあこの製品自体がプロトタイプみたいなものなので、まだデザインも揺れているのかもしれませんが、もしかしたらAMD版とNvidia版を見分ける違いかもしれませんので一応記録
でも中身をDIY出来るわけですのでその区分けに意味はないはず。ということはやっぱただのデザイン揺れかもしれません
もう一点は電源ケーブルについて
先に届いたAMD版は2プラグの眼鏡コードでしたがNvidia版の方は3プラグのミッキーコードでした。消費電力的には眼鏡コードでも全然問題ないはずですので、これは内部的に使用されているGaN電源モジュールがひっそり変更されたことの現れなのかなと思います
ケーブルは10A/125V(1250W)のものが付属していましたが3pinで変換コネクタを使うと嵩張るのが嫌だったので7A/125V(875W)の社外品を使いました
問題なく使えています。消費電力は最大240W程度ですので当然ですね
その他、製品自体のサイズなどは特に違いはありません
SGWZONE Gaming & AI BOX eGPU Dock RTX4060の性能(ベンチマーク)
ベンチマーク概要
それではお待ちかね、SGWZONE Gaming & AI BOX eGPU(RTX4060)の性能を見ていってみたいと思います。いや、ほんとに待ちくたびれました……
今回はOcuLink / Thunderboltによる性能の違いを見ていきますが、参考情報としてGPD G1(OcuLink)のスコアも掲載しています
VBIOSの書き換えは行っていませんのでG1が100W TGPなのに対してSGWZONEは120Wと、電力の差によって若干ですがSGWZONE Gaming & AI BOX eGPUの方が高めのスコアが出ると思われます
本当はTGPを合わせて比較すべきなのですが、待たされすぎて既にG1が手元にありませんのでそれはもう出来ません。どちらもデフォルト状態ですので「買ってきてすぐに使った状態での差」という参考情報として捉えていただけたらと思います
また、以前別記事でも書いたような気がしますが、私は貧乏なためエアコンを入れることができません(ToT) G1の計測をしたときは春先で室温が15℃前後でしたが、今回SGWZONEを計測したのは35℃を超える猛暑日です。部屋の中でも33℃前後はありました
そのため、特に母艦側であるOneXPlayer X1にとって非常に厳しい状況になっており、マシンの設定的には同条件であるにも関わらず、CPUが絡むベンチに関してはG1計測時と比べて性能がガクッと落ちていますのでご了承ください
OneXPlayer X1(に搭載されたIntel Core Ultra)がどれだけ熱でやれれてしまうのを見るのも面白いかも? やっぱこんな小型機でTDP 35WなんてOne-Netbook社には厳しかったようです……
GPUの方は60℃程度で動作してましたので熱で性能が下がっていることは無いと思われます
その他のベンチ条件は以下になります
- 検証機体:OneXPlayer X1 / Core Ultra 7 155H / 64GB RAM
- 接続方法:OcuLink / USB 4(Thuderbolt 3同等)
- OcuLink速度:Auto
- GPUドライバ: 最新版(560.70)を使用
- 映像出力:内蔵ディスプレイ
- CPU TDP:35W
- Resizable BAR:有効
- 環境温度35度前後
- 日本語環境(一部Pugetbenchのみ英語環境)
- 解像度2560×1600・拡大率150%
それでは見ていってみましょう
GeekBench 5&6 GPU
SGWZONE OcuLink | SGWZONE Thuderbolt | GPD G1 |
|
GeekBench5 GPU(OpenCL) | 113244 | 110411 | 86482 |
GeekBench6 GPU(OpenCL) | 93213 | 82441 | 72612 |
このような結果になりました
順当かなと思いますが、簡易ベンチであるGeekBenchですのであまり鵜呑みにはできません
CINEBENCH 2024 GPU
CINEBENCHにてGPUのみ見ていきます
SGWZONE OcuLink | SGWZONE Thuderbolt | GPD G1 |
|
GPUスコア | 9596 | 9197 | 4644 |
このような結果になりました
SGWZONEの方はRTX4060デスクトップ版らしいスコアが出ていますので一安心です
というかG1のスコアの低さは謎ですね。CINEBENCHはCinema 4DのRedshiftによるレンダリングなわけですが、公式にはRX7600は「サポートされるはずだが積極的なテストは行っていない」という何とも言えない動作環境が開示されていますのでそのあたりが影響しているのかもしれません
3DMark Fire Strike
SGWZONE OcuLink | SGWZONE Thuderbolt | GPD G1 |
|
Graphics Score | 26060 | 18044 | 24302 |
Physics Score | 20332 | 21445 | 25295 |
Combined Score | 9467 | 9315 | 10814 |
総合スコア | 21403 | 16864 | 21720 |
このような結果になりました
何かの間違いかと思いましたが3回ほど計測してほぼ同一スコアでしたので間違いではありません。サンボル接続ではグラフィック性能が25%程低下しています。この性能低下率はいただけないですね。でも1個だけのテストじゃ分からないので他でも見ていきます
G1と比較するとグラフィック性能は1割弱上がっていますがTGPも1割ほど高いわけですので、GPUの性能としてはほぼ同一だろうと判断できますね
CPUが熱でやられてしまってPhysics、Combined、総合スコアはかなり悪くなってしまっているのが残念ですね
3DMark Time Spy
SGWZONE OcuLink | SGWZONE Thuderbolt | GPD G1 |
|
Graphics Score | 10317 | 9110 | 9201 |
Physics Score | 7980 | 7986 | 11137 |
総合スコア | 9882 | 8921 | 9447 |
先ほどのFire Strikeと同等の結果になりましたね。ただ、こちらはサンボル接続での性能低下割合も10%程度ですので、このぐらいなら利便性を優先してサンボル運用をしていってもいいかなと思えます
猛暑でCPUが足引っ張ってますが、本来なら総合スコア10,000オーバーは確実です。UMPC+ポータブルeGPUでスコア10,000超えというのは、ガジェオタとしてはなかなかワクワクする結果となりました
3DMark Port Royal & Speed Way & Steel Nomad
おまけでレイトレーシング系のベンチと、新しくリリースされたSteel Nomadを今回から計測し始めますのでまとめてここに記録しておきます
SGWZONE OcuLink | SGWZONE Thuderbolt | GPD G1 |
|
Port Royal | 5824 | 5206 | 4927 |
Speed Way | 2594 | 2406 | 1844 |
Steel Nomad | 2245 | 2198 | 未計測 |
このような結果になりました
一日の長があるからなのか、これらは明確にAMDよりNvidiaが勝るという結果となりましたね。サンボルでの性能低下は5~10%ですが、それでもなおG1よりもスコアが良いですのでこれはNvidiaの利点が出る部分と言えそうです
VRMark
もうやらないかも、と言っていたVRMarkですが比較のため今回のみ実施
SGWZONE OcuLink | SGWZONE Thuderbolt | GPD G1 |
|
Orange Room | 8982 | 7971 | 11047 |
Cyan Room | 9363 | 7919 | 3176 |
Blue Room | 2849 | 2596 | 2477 |
このような結果になりました
自分はもうVRをやめてしまったので、この結果を見てどうこういうことはありません
DQ10ベンチマーク
設定は最高品質・1920×1080・フルスクリーンです
SGWZONE OcuLink | SGWZONE Thuderbolt | GPD G1 |
|
スコア | 20249 | 21400 | 19766 |
評価 | すごく快適 | すごく快適 | すごく快適 |
これらの差は単なるベンチ上の誤差ですかね。有意な差は見受けられません
FF14&FF15ベンチマーク
設定はそれぞれ
- FF14:1920×1080・高品質(デスクトップPC)・ウィンドウ
- FF15:1920×1080・標準品質・ウィンドウ
となっています
SGWZONE OcuLink | SGWZONE Thuderbolt | GPD G1 |
|
FF14スコア | 12656 | 12301 | 12637 |
FF14評価 | とても快適 | とても快適 | とても快適 |
FF15スコア | 13249 | 10661 | 12198 |
FF15評価 | 非常に快適 | とても快適 | 非常に快適 |
多少CPUも影響するベンチですが、猛暑の中であってもSGWZONEが僅かに勝るという結果となりました。特にFF15の方は差が大きく出ています
とはいえ微差ですので、積極的にSGWZONEを選んでいくほどの差ではないとも感じます。サンボル運用でも問題ないような気がしますね
PugetBench
個人的に重要な要素なのですが……
SGWZONE OcuLink | SGWZONE Thuderbolt | GPD G1 |
|
PugetBench for Premiere Pro | 7121 | 4295 | 5369 |
PugetBench for Photoshop | 4975 | 4863 | 5850 |
PugetBench for After Effects | 746 | 698 | 768 |
このような結果になりました
Premiereのスコアが異常ですね。サンボルだと性能が4割減とかなってますがいくらなんでもそれは無いはず……
それとPhotoshopのスコアなのですが、なかなかベンチが完走できず5回目ぐらいでようやく成功したスコアをそのまま載せています。複数回計測できていませんので、これも信憑性は「?」です(そもそもPhotoshopはiGPU(Intel Arc)でのスコアがいちばん高かった!)
今回自分がめんどくさがって、OSは日本語版のまま回しました。加えて、PugetBenchは既にアプリ自体もベンチマークもアップデートがなされているのですが、G1計測時と条件を揃えるためにあえて旧バージョンを使用しています
これらのせいで結果がおかしい可能性もありますので参考程度にしていただけたらと思います
Stable Diffusion テスト
VRAMが8GBしかないですので、Stable Diffusion Forgeを使用します。seed値も固定し、完全に同条件で生成にかかった時間を比較します
呪文や設定などは画像でご確認ください
SGWZONE OcuLink | SGWZONE Thuderbolt | GPD G1 |
|
Stable Diffusion Forge 生成時間 | 18.4 sec. | 19.6 sec. | 実行不可 |
このような結果になりました
サンボルで使ってもほぼ変わらなさそうな気もしますが、生成はいわばガチャですので何度も何度もやり直していくと馬鹿にならない違いになってくるかもしれません
ただ、何百回も描き直すような用途で使う際には私の場合はデスクトップを使いますので、そういう意味ではあまり気にならない差かなとも思います
例えば上記の画像はりんごが手からズレて描かれています。こういう微修正程度のやり直し用途であれば、1秒ちょっとの差は無視できそうかなと、そういう意味になります
ちなみにForgeじゃなければG1でも生成できる(webUI DirectML版)わけなのですが、その時にはこれより低解像度(768×448で生成しアップスケール)の生成でも1枚の生成に5分以上かかってました。いくら高速化(Olive)してないと言ってもこれでは比較する意味は無いと思い省いています
まとめ
ということで今回はSGWZONE Gaming & AI BOX eGPU Dock RTX4060版についてまとめました
今回はもう本当にメーカーにやられました……。本当なら3月に届くはずだったのでG1と完全に同条件で比較できるはずだったのが、4月に延び5月に延び、そしてやっと6月末に送ってきたと思ったら商品間違いをして結局7月後半になってようやく、です
G1と条件を揃えたかったので、待ってる間はずっとX1のBIOSやファームウェアのアップデートもせず、ベンチソフトも当時のバージョンをずっと保持し続けていたため、無駄に待ってる期間が余計にしんどく思えてしまいました
そんなわけですのであまりメーカーに良い印象は持っていませんが、それを差し置いても私の結論としては
特殊な事情がない限り、無理してこの製品を使う価値は無い
です
記事を見ていただいての通り、性能的にRadeon RX7600M XTを搭載するGPD G1やONEXGPUと有意な差は見受けられません。大して差が無いのであれば、企業体質の良くないこの会社の製品を買うよりも、GPDやOne-Netbook製品を買う方が幸せになれると思います
私はGPD社やOne-Netbook社の良くない点も遠慮なく書かせてもらったりしてきましたが、SGWZONEと比べたらこれらの企業の対応は超優良です。そのぐらい差があります
加えて、確かにeGPU自体不安定さがありますし、OcuLink機は特にトラブルが起きやすく知識も必要となってしまいますが、それでも比較するとG1の方がはるかに簡単に安定して使えました
SGWZONEを買う場合には、知識があって、他にメイン機を持っている等で急いでおらず、トラブルも楽しめるガジェオタじゃないとちょっとツラいかなと思います
価格もほとんど変わらない、というかむしろGPDやONEXPLAYERの方が安いですし、製品サイズ(厚み)も半分で済みますしね
SGWZONEでライバル機より優れている点があるとすれば、猛暑日でもGPU温度は60℃程度で推移していて冷却性能はしっかりしていること、でしょうか。音はそれなりにしますが……
ではSGWZONEはどんな人なら買っても後悔しないのかというと
- 生成AI用途
- Nvidia固有の機能を使いたい人
- DIYで将来的なアップグレードをしていきたい人
- 特に使用目的はなく、ガジェオタとしてこの製品自体を愛でたい人
かなと思います。特に生成AIは現時点においてはまだ圧倒的にNvidia優位ですので、AMDの選択肢は基本的に無いです。VRAMの少なさは気になりますが、今回使ったForgeのように小容量VRAMでも実用的に使える技術も出てきていますし、将来的にDIYでRTX4080にでもすれば16GB VRAMになりますのでその問題もなくなります
ただしそのアップグレードキットの価格は決して安くないうえに、購入してもまたあの最低の購買体験(問い合わせるまでダンマリ、問い合わせても無視する、発送したと嘘をつく、しつこく確認すると逆ギレする)をしないといけないのかと思うと、私はちょっともう……遠慮したいです
あとは、NVIDIA BroadcastだとかNVIDIA Canvasだとかの独自機能を使いたい方ですが、これらのAI機能も今ではサードパーティーから山ほど同種のサービスが出てきていますので、どうしてもこれらを使いたい! という方でなければ積極的に選ぶ理由にはならないかもしれませんね
私はNvidiaをずっと使ってきているのでしばらくはこの製品を使っていこうと思いますが、アップグレードキットは買わないですし、他社からNvidia GPUを採用したポータブルeGPUが発売されたらすぐに乗り換えると思います
配送自体が遅いうえに接続トラブルも多いので「ゲームに使いたい」とか「創作に使いたい」とか、明確な目的をもってPCの性能向上を重要視している方にはおすすめできません
この製品がなかなか届かなくても、あるいは正常に接続できなくても、ニッチなガジェットとしてトラブルと楽しく向き合い、この製品自体をいじくることを楽しめる自信のある方は購入してみるのも面白い……かもしれませんよ(笑)
それではまた~
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