2020年 ドローン飛行申請の「包括申請」を徹底解説 条件・申請方法など

ドローン 包括申請 方法 TIPS

※2020年1月3日更新。情報を最新の内容に更新しました

こんにちは
ドローンインストラクターをしています、りんごロイド( @appleroidcom)です

このページにたどり着いたあなたは、ドローンは航空法で規制されており、自由に運用するためには飛行申請が必要なのだということを知っている方なのだと思います

そう言われるとあんまり自信ないなぁ

という方は関連記事で詳しく解説していますので、まずはそちらを一読していただければと思います

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飛行申請は通常、日時と場所を特定して飛行の許可や承認をもらうという手続きです

なのですが、包括申請という手続きを行い認可されることで、許可や承認についても包括的に受けることが可能になる制度が存在しています

包括的とは、日時や場所を特定しない許可・承認のことです。つまり

  • 日時を特定せずいつでも飛ばすことができる
  • 場所を特定せずどこでも飛ばすことができる

といったドローン運用が可能になるわけですね。これは便利!

さらにこれらを組み合わせて「日本全国どこでも、1年間いつでも飛ばすことができる」というようなカタチで申請を行うことも可能となっており、この認可がもらえるとドローン活用の利便性が一気に向上します

今回はこうした包括申請の特徴をはじめとして、具体的な申請の方法や申請の際に必要となる条件についても詳しく解説していこうと思います

※許可・承認という言葉が出てきていますが、飛行空域を飛ばすお許しのことを「許可」、飛行方法のお許しをもらうことを「承認」といいます

読みやすさを考慮して、以降では単に「包括許可」と書きますが、特に断りがない限り「包括許可・承認」を意味するものと考えて下さい

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通常申請・一括申請・包括申請の違い

それでは早速解説していきます

先ほども話しましたが、日時と場所を特定する通常申請と違い、これらを特定しないで飛行申請を行うのが包括申請と言われるものになります

そもそも航空法が定めるドローンの飛行申請方法は3種類存在しています

  • 通常申請
  • 一括申請
  • 包括申請

という3種類です

 

通常申請とは例えばこのようなものです

5月21日15時から16時。東京都〇〇区×丁目1番地を飛行させたいので、DID地区の飛行許可と、目視外飛行の飛行承認を申請します

日時も場所も特定していますよね

 

一括申請というのは、これらを複数件まとめて申請を行う方法です

5月21日15時から16時。東京都〇〇区×丁目1番地を飛行させたいので、DID地区の飛行許可と、目視外飛行の飛行承認を申請します

5月22日20時から21時。東京都△△区×丁目3番地を飛行させたいので、DID地区の飛行許可と、夜間飛行の飛行承認を申請します

以下略……

通常申請を複数件まとめて申請していますね

 

そして包括申請の例は以下のような感じ

東京都〇〇区×丁目1番地を飛行させたいのですが、いつ飛ばすかは分かりません。いつでも飛ばせる許可・承認を下さい

あるいは

5月21日15時から16時にかけて飛行させたいのですが現場が定まっていません。どこでも飛ばせる許可・承認を下さい

といったイメージです

そしてこれらを拡大解釈することで

いつでもどこでも飛ばせる許可・承認を下さい

という形で申請することも認められています

 

こんな飛行許可がもらえたら便利ですよね。これが包括申請の利点です

ただ、便利な申請である反面いくつか条件もありますので、次章ではそれらを解説していきたいと思います

ドローン包括許可・承認の条件と注意点

包括申請を行って飛行許可を受けるためにはいくつか気を付けるべきことと知っておかなければいけない点があります

まず、申請の際に気をつけなければいけないことですが、包括申請は全てのルールに対して行えるものではありません

具体的には、航空法が定めるルールのうち

  • 空港周辺
  • 高度150メートル以上の空域

については、包括申請を行うことができなくなっています

 

これらの場所でドローンを飛行させるためには、空港や管制室とフライトの調整を行ったうえで申請する必要があるため、包括申請ができなくなっているのです

また、原則として申請時に一緒に提出しなければならない飛行マニュアルに「マニュアル02」を用いるという方は、催し物上空についても包括申請を行うことができませんのでこちらも注意です

マニュアル02って、何?

飛行申請する際には飛行マニュアルというものを作って一緒に提出しないとダメなんだけど、国交省が予め用意してくれてるマニュアルを使いますと宣言することで、提出が不要になるんだよ

マニュアル01もあるの?

あるけど包括申請では使えないよ。飛行場所を特定した場合に使えるマニュアルだから、空港周辺や150メートル以上の上空を飛ばしたい場合にはこっちが使えるね

 

続いて、申請時の注意点です

これは次章の「具体的な申請方法」で詳しく説明しますが、包括申請は通常申請と比べて多少審査が厳しくなる……と言われています(国交省が明言しているわけではない)

申請内容によっては認可が下りない可能性もありますので注意して下さい

また、包括申請で申請可能な最長期間は、許可承認を受けた日から1年後の前日までとなります

 

最後は、包括許可を受けたユーザーに課せられる義務です

いつでもどこでも飛ばせる包括許可ですが、「認可を受けた後はなんにも気にせずフリーダム!」、というわけにはいきません

包括申請は元々、急な空撮依頼など業務を行う上で、通常申請では対応できない(申請の時間が無い)ケースに対応できるように設けられている制度です。「許可をあげるからあとはご自由に~」というわけではないんですね

そこで求められるのが飛行実績報告という手続きになります

「事前申請が間に合わないなら仕方ないよね。その代わりに事後報告でいいからちゃんとしてね」、というのが国交省が定めているルールになります

飛行実績報告の具体的な方法については別記事で解説していますのでこちらを参考にしてみて下さい

紙の許可証の人でも、DIPS『ドローン情報基盤システム』で実績報告を行う方法
ドローンの専門家が、ドローン情報基盤システム【DIPS】を使って、飛行実績報告を行う方法を解説。DIPSによる電子申請をした方はもちろんのこと、従来の紙ベースで申請を行った方がDIPSで実績報告する方法も細かく解説しています

ドローンの包括許可を取得する方法

それでは具体的な申請方法を解説していきたいと思います

そもそも基本的な飛行申請の方法が分からない!

という方は先にこちらの記事を参考にして、しっかりと理解しておいていただけたらと思います

誰でも無料でできる! ドローン飛行申請の提出方法 2020年版
ドローンを自由に運用するために必要となる航空法の制限に対しての飛行許可・承認申請。当記事では現役のドローンインストラクターが、紙ベースで申請する方法と電子申請する方法(DIPS)の両方を徹底解説しています。ドローンのことをしっかり学びたい方は参考にしてみて下さい

紙ベースの書式で行う方法と、オンラインサービスDIPSで行う方法とがありますので、どちらも解説していきます

※包括申請の考え方の根本を解説していますので、DIPSを使う予定の方も紙ベースの解説に目を通していただくことをおすすめします

紙ベースの書式で行う方法

まずは昔ながらの紙ベースで申請を行う方法です

こちらは様式1という書式の1ページ目です

ドローン 包括申請 方法

注意しなければいけない点に番号をふりました(タップ/クリックで拡大)

  1. 飛行の目的
  2. 飛行の日時
  3. 飛行の経路(飛行の場所)
  4. 飛行の高度
  5. 申請事項及び理由

それぞれについて解説していきます

 

まず「飛行の目的」なのですが、包括申請を行う場合、ここの目的は基本的に「業務」となっていないと審査に通るのは難しい……と言われています(国交省が明言したわけじゃない)

ということでこちらの欄は「業務」にチェックをつけます

ドローン 包括申請 方法

嘘をついていいという意味じゃないですよ(笑)

業務としてドローンを活用できるような目的を見つけてから申請を行うようにして下さい

業務にチェックをつけたらその横の『詳細な業務内容』についても、該当すると思う部分にチェックをつけて下さい。内容は完全な自己申告であり、特に証明等は必要ありません

チェックをつけなかった業務をやっちゃダメって意味じゃないよ。それに、業務で申請した人が趣味でもフライトさせるってのもOK

 

続いて「飛行の日時・経路・高度」は以下のように記入します

ドローン 包括申請 方法

飛行の日時は画像の通り

  • 自:〇〇年〇月〇日以降の許可・承認を受けた日
  • 至:〇〇年〇月〇日以降の許可・承認を受けた日から1年後の前日

という書き方をします。日付のところには自分が申請を行う申請日を入れて下さい。これで、日時は「1年間」という意味になります

飛行の経路はとても簡単。「全国の地表150m未満の垂直経路」と入れて下さい

これで経路(場所)が「日本全国の150m未満のエリア」となります。150m未満と入っているのは、先ほど説明した通り150m以上の上空では包括申請を行えないからです

そして飛行の高度は、地表等からの高度の部分に「150m未満」と記入します。
海抜高度は空欄で大丈夫です(ここは空港周辺での飛行や150m以上での飛行などの際に使用する欄です)

 

申請事項及び理由」には以下のように記入します

ドローン 包括申請 方法

当たり前のことが書いてあるだけなんですけどね(笑)

飛行禁止空域の飛行欄では、包括申請で取得可能な「人又は家屋の密集している地域の上空(DID地区)」だけにチェックをつけます

その下には理由を書く欄がありますので「飛行場所がDID地区に該当する可能性があるため」と書いて下さい

続いて飛行の方法欄では、催し物上空以外の全てにチェックをつけることが可能です

ただし農薬散布をしたり、物資輸送をしないのであれば「危険物の輸送」と「物件投下」のチェックは外して下さい。申請するドローンがMavicとかなのに農薬散布するのはおかしいですよね

こちらもやはり理由を書く欄がありますので「依頼によって、夜間や一時的な目視外飛行が必要となるため。場所によって、30m以上の距離が確保できない可能性があるため。農薬散布を行うため」と書いて下さい

これで1ページ目は終了です。その他の欄については通常申請と全く同じ書き方で大丈夫です

 

続いて2ページ目ですが

ドローン 包括申請 方法

こちらは通常申請と全く同じですので割愛します

 

最後に3ページ目です

ドローン 包括申請 方法

注意すべき点は保険の部分になります

包括申請を行う際には保険への加入がほぼ必須です。保険に加入していない方はまず許可がもらえません

ドローン 包括申請 方法

画像はDJIの機体を買うと付いてくるエアロエントリーの無償付帯保険の記入例ですが、このように『加入している』状態で包括申請を行ってください

……そう。DJIの機体だったら、このように保険がついてきますので、簡単に包括申請を行うことが可能になっているのです

ヤフオクで包括申請方法を有料で売ってるけしからんヤツがるけど、実はこの原理を利用した方法を紹介してるだけだよ

 

詐欺まがいの情報にお金を払わなくても、全て当記事で解説している内容ですし、何より国交省が全て公開してくれている内容ですので、騙されて買わないように注意して下さいね

 

以上で包括申請は完了です。その他の項目については通常申請と全く同じ記述で大丈夫です

めちゃめちゃ簡単だと思いませんか?

誰でも簡単に行えることですので、変な業者に騙されないよう、正しい知識を持って正しい申請を行っていただけたらと思います

DIPSで申請を行う方法

紙ベースではなくDIPSで申請される方はこちらを併せて参考にしてみて下さい

ドローン 包括申請 方法

まずDIPSにログインして「申請書の作成」をクリックします

ドローン 包括申請 方法

作成画面に移行したら上記のように入力します(画像拡大で確認して下さい)

基本的には紙ベースでの申請で説明した通りなのですが、微妙に違っている点について補足しておきます

下の方にある「年間を通じて飛行しますか?」というチェックボックスがありますが、こちらを「はい」にチェックします。これで1年間という期間を設定できます

その下の「飛行する期間を入力して下さい」では、許可の開始日を入力します。申請は10開庁日前までに行う必要がありますので、開始日時は申請日より10開庁日以降の日を設定して下さい

さらにその下「飛行する場所はどこですか?」というチェックボックスは「特定の場所・経路で飛行しない」を選択して下さい

 

続いてステップ2

ドローン 包括申請 方法

こちらが2ページ目になります

まず1番の欄で「飛行の経路」を選択します。先ほど特定の経路で飛行しないを選びましたが、それは日本全国なのか、それとも特定の都道府県なのかを選択して下さい

続いて2番です

ここには、何か自身で行っている「安全対策」がある場合にその内容を書いて下さい。無記入でも申請は可能ですが、安全策をとっていた場合には審査の際に考慮してもらえる……かもしれません

例えば「フライトの際は安全運行管理者、操縦者、補助者の3名体制で運用し、周囲の安全確保を十分に行いながら飛行させる」、などのように書きます

最後に3番ですが、ご自身の住んでいる地域に合わせて提出先を選んでください。包括申請の場合は、東京航空局か大阪航空局のどちらかになります

 

続いてステップ3

ドローン 包括申請 方法

こちらが3ページ目です。ここは通常申請と全く同じですので割愛します。機体とパイロットの選択、使用する飛行マニュアルの選択を行ってください

 

最後にステップ4

ドローン 包括申請 方法

紙ベースのところでも解説したように、包括申請の場合、保険への加入は必須レベルです

それ以外の箇所は通常申請と同じです

 

以上で申請書が完成します

ドローン 包括申請 方法

作成された書類や添付資料が正しいことをリンクをクリックして確認し、問題なければチェックボックスにチェックをつけて「申請する」を押して下さい

これで包括申請は完了です

おわりに

私は現役のドローンインストラクターですが、ここで解説する内容はドローンスクールで教えている内容と全く一緒です

ドローンスクールの方たちはもしかすると無料でこういう情報が出回ることを嫌がるかもしれません

でも、それっておかしな話だと思うんです

航空法(のドローンの項目)は、ドローンの安全運用のために定められた法律です。と同時に、先進技術の発展を阻害しないために、申請すればその制限を超えて運用できると言う「特別申請ルール」が設けられています

そうした法律の特性を考えれば、これらの知識は一般に広く周知されるべきであるはずなのですが、利権のためなのか何なのか、あまり詳しい解説が出てきていない今の現状が、ドローンに携わる人間の一人としてすごく嫌でしたので、この解説を行わせていただきました

 

この記事を読んで、安全に楽しくドローンを使っていける方が一人でも増えたら、ドローン業界の末端を担う一人としてとても嬉しく思います

みなさん、安全フライトで楽しんで下さいね

 

それではまた~

コメント

  1. DJI卒業生です。申請料2万~5万なんてばかばかしいですよね。この申請料ですとドローンの普及には程遠いもののなってしまいます。わたくしも個人で申請してみて仲間のメンバーに教えてゆきたいと思います。
    ご指導ありがとうございました。

    • DJI CAMP卒業生なんですね。私が言うのもアレですが、受講していただきありがとうございます
      DJI CAMPのカリキュラムはJUIDAなんかと違ってほとんど申請については触れないですものね。この記事が参考になれば幸いです
      楽しく・安全なドローン活用でいっぱいフライトできるといいですね♪

  2. りんごロイド様、大変分かり易く解説頂き、ありがとうございます。
    自分で申請をしたいと、国交省など多くのHP等を拝見したのですが、りんごロイド様のページが群を抜いて分かり易かったので、感謝を込めてコメントさせて頂きました。
    これからも、健全で安全なドローン飛行のために、参考となることがあれば記事をお願いします。

    PS.小生は、DJI CAMP卒業したてですが、今後のドローンの可能性に挑戦します。

    • コメントありがとうございます
      参考になったようで嬉しいです
      許可をもらってもあとはフリーダムではなく、安全運航を心がけるのが大事ですよね
      コメントにも書いて下さっていますのでその点も安心ですね

      どうぞご安全に