非常に喜ばしい……かもしれない情報が入りました。ハンドヘルド型UMPCであるSMACH Zの支援者に対して、追加料金なくスペックをアップする旨のメールが届いたのです
どのようにスペックがアップするかは注文内容によって変わりますが、最も興味深い変更点は、当初予定されていたSoCであるAMD Embedded V1605Bを上回るV1807Bを搭載するようになったという点です
カタログスペック上はGPD WIN MAXやOne Netbook OneGXを上回り最強のUMPCとなりますが、実際の所はどうなのか?
今回は各アップグレードの詳しい内容や、V1605BとV1807Bの性能差について。そして、同じくメールに記載されていた発売予定時期についてまとめていきたいと思います
SMACH Zのアップグレードについて
今回のアップグレードはフォーラム経由でなく、公式ショップからのメールによって知らされたため、NDA契約がされておりません。そのためこうして情報をお届けすることができるわけですが、この中に色々と詳しく書かれています。要約して紹介しますと
- 待たせてしまって申し訳ないが、支援者の忍耐とサポートに感謝しているので、補償として製品をアップグレードすることを決めた
- より上位版のSoCであるEmbedded V1807Bを搭載できるという補償を用意した
- 選択している製品(スペック)によってもニーズが変わることを理解しているので、他のパターンも用意してある
というようなことが書かれています。しかし何のこっちゃよく分かりません。ということでメールには具体例もちゃんと書かれています
- SMACH Zの基本的なスペックを底上げします。最低スペックはメモリ 8GB/SSD 128GBからとなります
- メモリ量とストレージ量は自由に組み合わせ可能だが、最高のカスタム構成として選択可能な最上位はメモリ 32GB/SSD 480GBとなります
- 今までに選択していたメモリとストレージをワンランクアップグレードします(細かな条件あり)
- 元々SMACH Z Pro、またはSMACH Z Ultra以上の構成で注文されていた人は、SoCがV1807Bにアップグレードされます
ということです。まだ分かりづらい気もするので、表にしてみました。表中の黒文字が旧スペックで、赤文字が新スペックです
SMACH Z | SMACH Z Pro | SMACH Z Ultra | |
SoC | Ryzen Embedded V1605B | Ryzen Embedded V1605B Ryzen Embedded V1807B |
|
コア数 | 4C / 8T | ||
GPU | Vega 8 | Vega 8 Vega 11 |
|
メモリ | 4GB~16GB 8GB~32GB |
8GB | 16GB |
ストレージ | 64GB~256GB 128GB~480GB |
128GB | 256GB |
ディスプレイ | 6インチタッチ 1920×1080 | ||
インターフェース | USB Type-A、USB Type-C、micro USB、Display Port1.2、SDカードスロット、ヘッドホンジャック | ||
バッテリー | 3200mAh | ||
サイズ | 277 × 100 × 36mm | ||
重量 | 644 g |
このようになっているわけですね
例として、『4GB / 64GB』というSMACHを注文していた人は『8GB / 128GB』にアップグレードされますし、カスタムしてストレージを256GBにしていたなら8GB / 480GBにアップグレードされることになるわけです。追加料金はかからず、恐らく手続きすら必要なく自動的にアップグレードされるようです
Pro及びUltraのメモリ量とストレージ容量に「?」マークがついているのは、補償としてのスペックアップがあるのかないのかがメールの文面からはハッキリ読み取れないためです
これまでProは中間グレードを、Ultraは最上位グレードを意味していましたので、それを引き継ぐのであればメモリ量とストレージ量も赤文字で書いたようにアップグレードされるのが道理です
しかしメールには「Pro又はUltraを選択したユーザーはV1807Bにアップグレードされます」という文言しか書かれていないため、メモリとストレージは据え置きという可能性もあります。つまり、メモリを32GBにしたりストレージを480GBにしたければ、さらに追加料金が必要になるかも…?
SMACH SHOPでは今のところまだ、このメールに書かれている内容が反映されていないため確かめる術がありません。分かり次第お知らせします
【7月31日追記】
判明しました。Pro及びUltra版を選択している人はメモリ/ストレージのアップグレードが無い代わりにSoCがアップグレードされます。メモリ4GB、あるいはSSD64GBのどちらか又は両方を選択している人のみ、ストレージとメモリがアップグレードされますがSoCのアプグレはありません
カメラの有無は関係なく、メモリ8GB以上かつストレージ128GB以上は全てPro版とみなされます。メモリ16GB以上かつストレージ256GB以上は全てUltra版とみなされます
例
- メモリ4GB/ストレージ64GBの基本を購入→メモリ8GB/ストレージ128GBへ
- メモリ16GB/ストレージ64GBにカスタマイズ→メモリ32GB/ストレージ128GBへ
- メモリ8GB/ストレージ256GBにカスタマイズ→SoCが1807bにアップグレード
AMD Ryzen Embedded V1807Bの性能
V1807BはV1605Bと比較してベースクロックが高くなっていますので、CPUの地力が高いことが予想できます。そして何よりも搭載されているグラフィックがVega 11にアップグレードされています
その名が示す通りチップ内のComputeユニット数自体が8基→11基に増えているわけですので、当然GPUとしての性能も格上ということになります
両者の性能差を見比べてみますと
Ryzen Embedded V1807B | Ryzen Embedded V1605B | |
CPUクロック | 3.35GH / 3.8GHz | 2GHz / 3.6GHz |
CU数 | 11基 | 8基 |
GPUクロック | 最大 1.3GHz | 最大 1.1GHz |
PassMarkスコア | 8604 | 7312 |
CineBench | シングル150 / マルチ760 | シングル140 / マルチ455 |
Fire Strike | 3183 | 2695 |
というような感じになっており、かなり性能が変わってくることが分かります
特にGPUの性能向上は顕著で、Fire Strikeのスコアは3000を突破し、Geforce MX150とほとんど同程度のスコアを出せるまでになってきます。チップ内蔵のiGPUでこの性能というのは、AMDさすがですという感じですね
……が。
これを見て「うひょー、ラッキー♪」と単純に喜べないというのがSMACH Zの現状であり、カタログスペックだけでは測れない点となりますのでそのあたりを考えていきたいと思います
V1807Bが載ることは本当にメリットなの?
先ほどのセクションで魅力的な数値を紹介しましたが、それもそのはず。実はV1605BとV1807Bでは、TDPレンジが違っているのです
V1605Bには12W-25WというTDPが設定されているのに対して、V1807Bには35W-54WというTDPレンジがメーカーであるAMDによって設定されています。つまりIntel CPUで考えるなら、同じi7という名前が付いていても15Wの低電圧版と45Wのハイエンドモバイル版が用意されているのと同じようなもの
例えば8550U(15W)と8750H(45W)を比較しているようなものであり、性能に開きがあるのは当然です。そして45W版のCPUを小型ノートパソコンに搭載できないのと同じように、TDP35W-のV1807Bを小型の筐体に載せることもできません
でもSMACH Zには載ってるじゃん。どういうこと!?
と思われるかもしれませんがこれはものすごい単純な話で、メーカーが推奨するTDP以下――具体的には、V1605Bと同じ15WまでTDPを落とすことによって搭載しています
ここまで落としてしまうと理論上の性能はV1605Bとほとんど変わらなくなってしまいます。どころか、メーカー設定のレンジ外で動かすわけですので、低電圧等によってむしろパフォーマンスが悪くなる懸念すらあります……
じゃあどうしてこんな補償内容にしたのかというと、これはもう「スペック厨のため」としか考えられません
まず、カタログスペック上のインパクトがすごいですのでそういう意味でスペック厨を惹き付けられますし、第二に、ギークなユーザーであれば自身でTDP設定を変更し35W駆動のハイスぺ機にするという夢を見ることができるからです
しかしこの夢は非常に厳しそうと言わざるを得ません
現時点で採用されているV1605BがPhawx氏に届けられたという記事をお届けしました
この中でも紹介していますが、チップはTDP15Wに設定されており、Phawx氏ほどの知識をもってしてもCPUをターボクロック(3.6GHz)で動かすことすら苦労しているとのこと。GPUに至っては400MHz程度でしか動かず、満足なパフォーマンスが得られていないということが報告されています
【7月23日追記】
その後Phawx氏は25W動作に成功したそうです。ゲームとしてのパフォーマンスを最大に保つために2コアで動作していますが、GPUクロックはいまいち上がりきらないとも語っていますね
こんな状況にあって、V1807Bが搭載されるからといってそれが何になるのでしょうか?
メーカー指定の最低TDPである35Wはおろか、25Wですら動かすことは至難の業ではないかと思います。15Wでしか動かないV1807Bであるならば、別にV1605Bのままでいいような気がします
また、仮に35Wで動かせたとしてもその時のバッテリー持続時間は40分~4時間ということが予想できます。これってどうなんでしょう……? まあどっちにしても、バッテリーが尽きる前に発熱によってブルスクが起きると思いますが
私もかなりのスペック厨ですが、いくらなんでもこれは現実的じゃないなぁというのを感じずにはいられません。ちょっとだけはワクワクしますけどね
まとめ
ということで、今まであまりにも適当な態度がなじられてきたSMACHチームですが、この補償内容はかなりユーザーのことを大切に思ってくれているということが伝わってきて好印象。手のひらクルーする人も多いのではないでしょうか?
無条件のメモリ&ストレージアップグレードというのは本当に神対応だと思います。が、もう一方のV1807B搭載に関してはあまり大きな期待をしすぎないほうがいいのではないかと思います
そしてこのメールには、最も気になる発売時期についても記載がありました
曰く、7月31日までに最終的な構成をユーザーが決定させること。その後必要となるコンポーネントの手配に2か月、そして組み立てとテストに1か月かかるため、出荷開始は11月になりそうだということが書かれています
予想通りほぼ年末となってしまいますが、ここまできたらあと少しの辛抱という気もしてきます。もうちょっとだけ気長に待ってみましょう(笑)
それではまた~
コメント
[…] https://appleroid.com/pc/smachz-upgrade-news/はぇーキッツい。 […]
Pro と Ultra でSSD/RAM のアップデートがないことについてですが、
同じく送られてきたメールのアップグレードお知らせの内容には、
“will be upgraded to the next tier in each category;”
各カテゴリの次の層ににアップデートされる
“If someone has its RAM or SSD upgraded to the limit along with a Basic SMACH Z spec, for example 4GB RAM/256GB SSD, there will be a new tier: 32GB RAM/480GB SSD; ”
“RAMまたはSSDを制限までアップグレードした場合、新しい層がある”
Basic版だけに言及せず、480G/ 32GB への アップグレードの説明もされているともうのですが、
Basic版のみというのは別のメールかフォーラム上での回答があったのでしょうか?
問い合わせの末に得た回答を又聞きしたものですね
ただ、それがフォーラムに書いてあるかどうかはお答えできないんです……。このあたり、バッカーの方ならご理解いただけるかと思います
私が見たのはdiscordだったかなぁ? それともredditだったかなぁ??
バッカーの方であればフォーラムは見られませんか? そこに書いてあるかどうかは言えませんが、フォーラムかdiscordかreddit、どこかで見つけられるのではないかと思いますよ
これが言える限界です。ご容赦くださいませ
ご返信ありがとうございます。
公式フォーラムについてNDAのため内容を公開できないのは理解しております。
注文はしているのですがバッカ―ではないためフォーラムは閲覧できずの状態です。
ただこちらのサイトでアップグレードの内容ついて言及されていたため、NDAに抵触していない公開情報(メール・discord・reddit)がどこかに上がっているのかと思いご質問致しました。
redditは定期的に閲覧しているのですが見た記憶がないので discordでしょうかね…
また進展などありましたら次の更新も楽しみにしています!
そうでしたか。ショップ経由でのご購入だったのですね。バッカーと早とちりしてしまってすみませんでした
SMACHチームはV1807bへのアップグレードにかなり自信を持っているようですので、「V1807bになるんだから十分でしょ?」というスタンスなのかもしれません
ちなみにredditには、Gamescomで試したところ、同じ15W動作でもV1807bの方が快適だったという感想も挙がってましたので参考にしてみるといいかもしれません
公開可能な情報をゲットできたら更新していきますので、良かったらまた遊びにいらして下さいね
[…] https://appleroid.com/pc/smachz-upgrade-news/はぇーキッツい。 […]
で、いつ出るんだっけ?
匿名さん
コメントありがとうございます
いつ出るんでしょうね(笑) 公式サイトの2019年12月にお届け! という文言が虚しく感じますね
[…] https://appleroid.com/pc/smachz-upgrade-news/はぇーキッツい。 […]