※6/18追記あり
GPDの新境地(?)として少し前に発表されたデュアルディスプレイ搭載のラップトップGPD DUO
これまでのゲーム用途機体は、私の使い方とは少し縁遠いものですがそれを我慢して使っていました。が、今度はクリエイティブ用途向けの機体で、標準で二画面、しかもOLED。それもAdobe RGBカバー率100%でかつAI PCということで自分にドンピシャ! むちゃくちゃ楽しみにしていました
……が
仕様詳細が判明してくるにつれて、どうも自分が期待したようなマシンにはなっていないようで、買う気満々だったのですがどうにも迷いが生じてきています
楽しみにしていただけに落胆も大きかったので、この記事ではGPD DUOの何が期待外れだったのかをまとめて書いていってみたいと思います
なお、いつも言うことですがこれはあくまで私の個人的感想です
PC、それもこういうニッチなガジェットの評価は、その人の使い方によって大きく変わります。なので私にとってはクソでも、他の方からしたら喜ばしい部分もあることでしょう
もちろん記事中では「〇〇だからガッカリ」と根拠を明示します(根拠すら示さず文句言うだけ、あるいは逆に褒めるだけというのは真のクソだと思うので)が、その根拠にも同意できない人がいるだろうことも百も承知です
そうした点を承知で、ファンの方とかには不快になるかもしれませんが事実を客観的に見て自分に置き換え、参考にできる方のみ読んでいただけたらと思います
GPD DUOの仕様と特長
※6/18追記:ガッカリポイントが大幅に修正されました
ガッカリな点を書く前に、まず現時点で分かっているGPD DUOの仕様をまとめておきたいと思います
項目 | 仕様 |
CPU | AMD Ryzen AI 9 HX 370(最大冷却可能cTDP60W) |
GPU | iGPU(AMD Radeon 890M) |
メモリ | LPDDR5X 7500MT/s 16GB/32GB/64GB/96GB※1 |
ストレージ | PCIe 4.0×4 2280 NVMeスロット×2 最大16TB※2 |
ディスプレイ | Samsung製 AM-OLED Aurora13.3インチ×2 リフレッシュレート 60Hz 2880×1800(16:10)×2 コントラスト比 1,000,000:1 色深度 10bit |
色域 | sRGB 100%、Adobe RGB 100%、DCI-P3 100%、NTSC 96% |
デジタイザ | MPP2.0プロトコル 4096段階筆圧 |
I/Oポート | USB4×1、USB Type-C(3.2 Gen2)×1、USB Type-A(3.2 Gen1)×2、 |
バッテリー容量 | 80Wh |
サイズ | 297mm × 209.65mm × ? |
重量 | 未公表 |
※1:96GBメモリは先行販売及びクラファンのみで、各国公式版には無しとの情報あり
※2:製品版最大4TB(空きスロット1)、クラファン版は8TB(4TB+4TB)。現時点でNVMe SSDは8TBが最大のため16TBがMAXだが、スロット自体に容量制限は無し
※3:DP ALTモードのみ対応で一般的な使い方は不可。後述
また、この機種の特にユニークな特長として挙げられる点に以下のようなものがあります
- バタフライ機構により自由自在にレイアウトを変更できる画面
- セカンダリディスプレイを別のホスト端末の外部モニターとして使える
現時点で判明しているのはこのようなところになっています
ディスプレイの秀逸さは目を見張るものがあり、色域の広さなど超絶良さそうに見えます。またその二画面を自由にレイアウトしたり、他の機器の外部ディスプレイとして使えるなど、ワクワクする仕様が踊っています
反面、スペックシートの時点から既に不穏な仕様も見え隠れしていますね。このあたりを詳しく見ていきます
GPD DUOの残念な点
では現時点で判明している点におけるGPD DUOのガッカリしてしまった点をまとめていきます
今後より詳細が明らかになったり、発売前に仕様変更されることによってこの項目は増えたり減ったりする可能性があります
古いAPU(6/6追記あり)(6/18さらに追記あり)
※6/18追記:Ryzen 8840U搭載計画が破棄され、はじめからStrix Point(Ryzen AI 9 HX 370)が搭載されることになりました。良かった~。なので以下に書いてある文章は古い情報なので気にしなくて大丈夫になりました
いや、古くはない現行のAPUではあるのですが……これがいちばんガッカリしました
GPD DUOが発表されたとき、第一報から既に「AI PC」という言葉が使われていました。これを見て当然、Microsoftが提唱するAI PCのことを言っているのだと多くの人が思ったと思います。それはつまりNPUだけで45TOPS以上の性能を誇るSoCが搭載されることを意味しています
この要件を満たすCPU・APU・SoCは現時点でSnapDragon Xシリーズしか無いわけですが、さすがにGPDがWindows on Armを採用するとは思えませんから、次期CPU・APUの採用が期待されていました
多くの人が期待していたのはStrix Point(現AMD AI 300シリーズ)の採用ですが、私はクリエイティブワークにはIntel使いたい派なのでLunar Lakeに期待していました
しかしGPD DUO情報公開から2日後ぐらいに、TDP35Wで最大60Wということも明かされたので、低電力向け(従来のUシリーズ)であるLunar Lakeでは無さそうということも分かってきてしまいました。それでもStrix Pointならまあいいかな、と思っていたのですが……
蓋を開けてみたら現行のRyzen 7 8840Uって、ズコーッて感じです。どこがAI PCだよ!?
そりゃ確かにXDNA搭載してますけど、12TOPS程度で定義を満たしてないし、だったら今までのGPD WIN 4とかMax2とかMiniとかも全部AI PCじゃん! あえて今回名乗ったなら違うチップが載ると期待するじゃん!!
って感じです
発表した時期も良くなかったですね。COMPUTEXでAMDもIntelも次期APU・SoCの詳細を発表したばかりなので、8840Uはガッカリ感が激増になってしまいました
6/6追記
公表から2日しか経ってませんが、なんとGPD DUOにRyzen AI 300シリーズ、それもAI HX 300シリーズを搭載する(ことができる)ということが公表されました。問い合わせが非常に多かったそうで、私と同じように落胆した方がめちゃめちゃいたんでしょう(笑)
ただし、どうもすぐに搭載されるわけではなく将来的にRyzen AI 300版も出るという意味のようです。8840U版を買うとすぐに型遅れになってしまうという、GPDお得意の戦法を食らうことになってしまいそうなので注意が必要ですね
13.3インチというサイズ
GPD DUOの第一報が出たとき、と言っても公式ではなくDiscord内での話なのですが、その時に「GPD DUOは12インチ級の機体」と言われていました。そして公式も「世界で最も小型な二画面ラップトップ」という言い方をしていました
12インチというサイズはGPDとしてはデカくUMPCでもありませんが、とはいえ確かに他に類を見ない小型サイズの二画面ノートPCであり、しかもそれがOLED画面を搭載して出るのならなんて魅力的な製品だろう♪ と思っていました
が、発表されたのは13.3インチ×2というサイズ
Yoga Book 9iとおんなじかーい!!
と突っ込まずにはいられませんでした
いや、もちろんGPD DUOの297mm×210mmというA4用紙と全く同じサイズというのは確かに世界最小でそれはそれで魅力ではあるのですが、それは微差というもの
だったらYoga Book 9iやASUSのZenBook DUO 14でも大きさはあまり変わりなく、これらの方が品質・サポートは上で、何よりもこれらの二機種はキーボードが分離できます
GPDはキーボードが一体型であることに価値があると言っていました
確かにそういう意見もあるのでしょうが、私の使い方で考えるとGPD DUOがウリの一つにしているタブレットスタイルで使いたい。そんな時にキーボードショートカットを多用することになります。しかし一体型ではそれが困難になってしまいます
別の無線キーボードとか左手デバイスとか用意すりゃいいじゃん
という意見もあるでしょう。もしこの機種が本当に12インチのオンリーワン機種だったのなら、そうした不便も我慢して使えたと思います。でも他に同等の品が既にあって、そっちには最初から無線化できるキーボードが付いてるなら、はなからそっちを選ぶ方がいいです
中華製UMPC全般に言えることですが、私があれら不便なUMPCを好んで使うのは、他には無いオンリーワンな尖った仕様で、ユニークな製品だと思うからです。既に同等品が存在していて、何ならそれらに劣っている点もあるのならあえて選びたいとは思いません
さらに言うなら、13.3インチかつキーボードが独立していない一体型であるなら、そのメリットを活かしてdGPUを搭載できたんじゃないの? とも思ってしまいます
例えばデュアル画面ではありませんが、ASUSのProArt PX13は同じ13.3インチOLEDでRyzen AI 9 HX 370+RTX 4070まで搭載できるのにサイズは298.2mm×209.9mmと、GPD DUOとほぼ変わりません
必ず持ち歩いているiPadを気軽にセカンダリディスプレイに出来るようになっている現在、こうした同等サイズのライバル機の長所(新APU、dGPU、日本語キーボード等々)を捨ててでもGPD DUOの二画面に魅力があるかというと……うーん?
ただ、これらのライバルと比較してGPD DUOの方が優れていると思える点もあります
- メモリ96GB版がある(※クラファン版のみので国内正規版には無い)
- OcuLinkポートがある
この二点を考慮しつつ、あとは値段次第でどうするか決めたいと思いますが、十中八九買わないだろうと思います
外部ディスプレイモードの欠点
これもかなり期待していた部分だけにすごく残念でした
私事なのですが、実は私、ちょうど有機ELのポータブルモニターを買おうと思っていました。サイズは13.3インチ~15.6インチぐらいで
そんな時にGPD DUOが発表され、なんと外部ディスプレイ入力機能があって他の端末のサブディスプレイとして使えるというじゃありませんか!
だったら「GPD DUOに多少不満があっても、その用途も鑑みればガジェット的な面白さと併せて多少納得いかない部分があっても買ってもいいのかなぁ……」と思っていたのですが、どうもこれがかなり残念仕様のようです
この外部入力の仕様は以下の通りになっています
- DP-ALTモード(ビデオ信号のみ)をサポート
- オーディオ信号非サポート
- データ送信非サポート
- 充電モード切り替え
これを見てもよく分からないかもしれませんのでもう少し詳しく書きます
まず、外部ディスプレイとして使いたいときにはディスプレイ側に備わっているType-Cポートにホスト端末を繋ぐのですが、サポートしているのはビデオ信号のみとなっています。つまり、GPD DUO側に映像を映せても音は出ません
じゃあ音はどこから出るの?
というと、ホスト端末側(PCとかスマホとかゲーム機側)から出ます。えぇ!? 何それ?
さらにこのポートはDP-ALTの映像信号のみやり取りできる仕様でデータ送信はサポート外となります。なので、映像を映す以外のことはできません。GPD DUOとして使用中にUSBメモリとか挿しても使えないということです
完全に他端末のセカンダリディスプレイとして使うためだけのポートであり、しかも音声は送れず映像を映すためだけのポート……
ポータブルモニターとは得てしてそういうものだと言われればそれまでなのですが、GPD DUOはPCですし、DTS:X対応の立派なスピーカーも付いてるわけですのでこれらの仕様にはちょっとガッカリです
ただ、良いというかユニークだなと思える点もありました。それはGPD DUOの電源が入っていない時にも外部ディスプレイとしての使用は出来る(ただしホスト端末による)という点です
GPD DUOの電源が入っている時には、セカンダリディスプレイの電力はGPD DUOのバッテリーから賄われますが、GPD DUOの電源が入っていない時でも、ホスト端末が対応してさえいれば同様に外部ディスプレイとしての使用が可能になります。これはなかなか良いです
ただしこの場合、GPD DUOのディスプレイで消費される電力はホスト端末側から供給されることになりますので、何か別の給電手段と併用しないとホスト端末側の消費電力が増えバッテリーを急消費してしまう可能性がある点は承知しておく必要があります
また、この時どのぐらいの電力を供給できるかもホスト端末の仕様に依存します。従って現時点では、「GPD DUOの電源OFF時における外部ディスプレイとしての使用時は、最大輝度を保証できません」ということが明言されています
最後に余談ですが、GPD DUOディスプレイ側のType-Cポート近くにある+/-ボタンはセカンダリディスプレイ使用時の画面輝度調整として使うためのボタンになっています。なのでGPD DUOの電源が入ってない状態でも輝度調整が可能になっています。これは気が利いていると思いました
まとめ
ということで今回はGPD DUOの(私にとって)期待外れだった点をまとめさせていただきました
もちろん良いところもあります。やっぱりディスプレイの品質は魅力的だし、クラファン版だけとはいえメモリ96GBも魅力です。ASUSやLENOVOといった大手の同等機種・ライバル機種には採用されていないOcuLinkがあるなど長所もあります
でも、何よりも残念なのはやっぱりAPUの世代の古さです。本当はIntelが良かったけど、AMDでもAI 9 HX370だったら全然嬉しかった。最悪AI 9 365でも我慢できましたが、今さら8840Uではちょっと食指が動きません
※6/18の情報により、最初からRyzen AI 9 HX370が搭載されることが決まりました! これなら買いです
他にも残念なところが色々と見えてきてしまい、期待も大きかった分本当に残念です
唯一良いところがあるとすれば、GPDが初めてOLED液晶を採用してくれ、さらに色域にまで言及できるパネルを選んでくれたという実績を作ってくれた点でしょうか
幸いGPDの製品サイクルは超早いので、今回は期待外れでしたがすぐに次世代SoCを採用した二画面OLEDのマシンをリリースしてくれると信じています。その時は記事中にも書いた通り、12インチ程度のサイズになってくれたら最高なのですが
なおここに書いた情報はあくまでも6/4時点のものになっています。発売までに仕様変更が行われて新APUやSoCを採用することに変わってくれたなら、それはとても嬉しいですので、まず無理だとは思いますがほんのちょっと期待して続報を待ちたいと思います
6/6追記
すぐではないけどRyzen AI HX 300シリーズ搭載版も(将来的に?)出ることが確認されました。良かった……
それではまた~
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