久々にドローンインストラクターらしい記事を公開することにしました
BETA FPVが販売する「FPV機なのに光学センサー&レーザーで位置・高度が維持できるドローン」なCetus Proを所持しています
古い機種ですがようやく無線局開局申請が通り、それから2ヶ月ほど飛ばしてみましたのでそれぞれについて感じたことをレビューしてみたいと思います
今回はCetus Proのレビューになります
Cetus Pro(FPV Kit)のレビュー概要
細かいことを書いてく前にとりあえずこの機種に対しての感想を先に書いちゃいます
こういった特殊な機種は好き嫌いが分かれると思うので、これで興味が湧いたら詳細を見ていただければと。イマイチだと感じたら買わない方がいいと思います
- FPV機としてはTiny Whoop程度の飛行性能
- ウリである位置・高度制御はおまけ程度であまり魅力はない
- FPVの練習機として見るなら普通のWhoopを買う方が良い(コスパ的な意味で)
- 頑丈さや作りの堅牢さは他のWhoopより優れている
- (Kitを買った場合)箱出しですぐに遊べるのはやっぱり楽
ネガティブな感想も並んでしまいましたがこれが偽らざる感想になります
75サイズの1セルバッテリー機ですので飛行性能は高くありません。悪いという意味ではなくて他の65サイズのWhoopと同じ程度です。値段の高さを考えるとあまり良くないですよね
値段を吊り上げている要因であるオプティカルセンサーとレーザーですが、これの精度はあまり期待しない方がいいです。比べちゃダメですがDJI FPVみたいな性能をイメージしてると大失敗します。というかそもそも同じ土俵に立ってない機種です
そんなおまけセンサーでも無いよりは有るほうが安全に練習できるでしょ? と思うとそれも違っていて、センサーの効くNモードではスティック感度が鈍すぎ(しかもBeta Flightに非対応なため調整できない)るため感覚が全く養われません
じゃあダメダメな機種なのかというと一応メリットもあって、1万円前後のWhoopと比べると頑丈で壊れにくいですし、Kitであればバインド済なため箱から出してすぐに使えるというのは初心者の方にはやっぱ有り難いだろうなぁとも感じます
このあたりのことをより深堀りしてレビューしていきますね
Cetus Pro(FPV Kit)内容物
今回のCetus Proも次回レビューするCetus Xも、単品とキットセットの2種類のバリアントが存在します。私はCetus Pro FPV KitとCetus X単品をそれぞれ買いました
なぜCetus Proはセットを買ってCetus Xではキットを買ってないのかというと、Cetus Proのキットは日本で合法で使えるけどCetus Xのキットは日本で合法に使えないからです
そのあたりも踏まえて内容物を見ていきます
キットに含まれるのは
- 本体
- 送信機(LiteRadio2 SE)
- FPVゴーグル(VR02 FPVゴーグル)
- 充電器
- 予備プロペラ
- バッテリー 1S 450mAh × 2
- 専用ケース
- マニュアル
- リペアキット
- USBコネクタ
となっています
5.8GHz帯の電波を使用して映像を伝送するドローン本体については無線従事者免許を所持したうえで無線局開局申請が必要となります
一方で送信機LiteRadio2 SEの方については日本の技適認証を受けていますので合法的に使用が可能です。Cetus X FPV Kitに付属するLiteRadio3にはこの技適が無いため合法的な利用はできず、Cetus Xキットはおすすめできないというわけなんですね
ちなみに電波を受信するだけのゴーグルは電波法の規制対象ではありませんので自由に使えます
バッテリーも450mAhのものが2本付いてきますので、しっかり飛ばしたい人には物足りないかもしれませんが初心者の方がとりあえず試してみるのにはそこそこ満足感があるのではないでしょうか? BT2.0プラグで取り扱いやすいのも良いと思います
ナイスなのは専用ケースですね。このケースに必要なものすべてまとめて収納することが可能になっています
なんかブカブカに見えるかもしれませんがなんとこちらのケース、Cetus Xでも同じように収納することが可能となっています。使いまわしなんでしょうね
飛行性能とモードについて
Cetus ProにはN/S/Mという3つのフライトモードが備わっており、プロポのスイッチでいつでも簡単に切り替えが可能となっています
Normal/Sports/Manualの略でしょうか? 専用の言い回しなので分かりにくいですがDJI FPVに合わせたのでしょうかね。SモードがいわゆるレベルモードでMモードがいわゆるアクロモードのことになっています
ホライズンに該当するモードはありません
Nモードの飛行性能と問題点について
ではNモードはというとこれが独自のモードで、オートホバリングが可能となる光学センサー&レーザーを活用した位置・高度制御モードになります。つまり普通のドローンのように使えるモードということ
メーカー発表の公式スペックでは「オートホバリング精度:水平±0.2m、垂直±0.3m(無風環境下)」と記載されています。いるのですが……ハッキリ言ってこれは嘘です
百聞は一見に如かずなのでなるべく早く動画も撮影して掲載できればと思っているのですが、見たらすぐ分かります。全然そんな精度ではホバリングしてくれません。フラフラするだけならまだしも予期せぬ制動を見せたりすることも多く全く信用できません
例えばこういう
数千円レベルのトイドローンよりも高度維持精度は悪いぐらい。ただこうしたトイドローンでは位置維持はできないのでその点では勝っていますが、同じ光学センサーによる位置保持が可能なRyzetech Telloなんかと比べてると月とスッポンほどの違いがあります
しかしFPV機のオマケ機能として搭載されてることを思えばそこはまだ許せます。マズいと思うのはその反応性の鈍さです
Mモードは民生用ドローンのPモード時の挙動を意識しているようで速度がかなり抑えられています。スティックを目一杯倒しても大きく動かないように設定されているのです。しかしながら先ほども書いたように、Mモードはお世辞にも安定しているとは言えず、予期せぬ挙動を見せることが度々あります
例えば機体が突然右方向にブワッと流れたとしましょう。すかさずエルロンを左に打って抑えたいわけですが、感度が鈍く設定されているため舵を打っても止まってくれないのです
もちろん強めに入れれば止まります。しかしこれで慣れてしまうとSモードやMモードで飛ばす時とは舵の入れ具合が変わりすぎてしまって全く練習にならなくなってしまうのです。むしろやればやるほど下手になる可能性すらあるという
これは本当に良くないと感じます
SモードとMモードの飛行性能について
ではS/Mモードはどうかというとこちらは普通のWhoopという印象。デフォルト状態で変なクセも無いですし1セル機なのでパワーを持て余すこともなく、操作しやすい素直な飛行をしてくれるなと感じます
私は75サイズで1セルというのが初体験だったため、2セルじゃないとちょっとパワー不足でモッタリするのではないかと不安だったのですが杞憂でした。より小型な65サイズ機と感覚は変わらないです
ちなみに速度についてもSLOW/MID/FASTの3つから切り替え可能になっており、こちらもプロポのスイッチでいつでも変更可能になっています
S/MモードについてはBETAFPV Configuratorを使用してPIDを調整することも可能ですので自分の好みに近づけることも可能になっています
BETAFPV Configuratorで設定できないの?
Cetus ProはBeta Flightに対応していないのでNモードの緩慢な動きのせいで逆に下手になると書きました
一方で先ほど、Beta Flightには対応してないけどBETAFPV Configuratorには対応しているのでPIDを調整できて自分好みに近づけることが可能とも書きました
じゃあBETAFPV ConfiguratorでNモードの感度上げればいいじゃん!
と思うところなのですが、ここが非常に残念なポイントになっています
こちらがBETAFPV ConfiguratorでのPID設定画面なのですが、うっすら『Basic/Acro』と書いてあるのが分かりますでしょうか
単体で接続したり送信機にリンクさせて起動したりと色々試してみたのですが、どうもBETAFPV ConfiguratorではS/MモードのPIDは設定できるものの、Nモードについては変更できないようなのです
微妙な変化だと見落とす恐れがあったので、わざとオーバーシュートさせたり振動してしまうような無茶苦茶な設定にしてみたりもしたのですが、S/Mモードでは激しく振動するのにNモードでは安定飛行のまま変わりません
つまり、気のせいではなくNモードにはPID設定が反映されない仕様になっている、ということになります。まあ初心者向けってことなので仕方ないのかもしれませんが、何度も言うようにFPVでアクロ飛行をやっていきたいならこの緩慢な反応に慣れ過ぎない方がいいと思います
まだ試せてないですが別プロポにバインドしてカーブをいじればこれも解消できるかもしれませんのでそれはまた後日試したら書きます。でもそれってもう入門じゃないですよね笑
BETAFPV Configuratorを使うには
一応これも簡単に書いておきます。かなり簡略化されたBeta Flightという印象ですが
付属のUSBコネクタを本体に挿しこみます。ケーブルで接続したらPCに接続します。稀にうまくいかないことがあるので、先にUSBコネクタを機体に挿してから反対のコネクタをPCに挿す方がいいと思います
それ以外に、ファームウェアが古い場合そのままだと認識しないことがあるので、その際にはバインドボタンを押しながらPCに接続します。その後ファームを最新に書き換えれば、あとは接続するだけで使えるようになります
右上の「Connect」を押して認識すると上図のような画面が開きます
左側にはこんなメニューが並んでますが出来ることを簡単に紹介すると
- Setup:キャリブレーション・初期化
- Receiver:受信状況・チャンネルの確認、受信プロトコルの変更
- Motors:モーターセットアップ・テスト(必ずプロペラを外しましょう)
- PID Tuning:PID設定(先述の通りS/Mモードのみと思われる)
- Sensors:各センサー(ジャイロ・加速度・磁気・気圧)ステータス・設定変更
という感じで大項目も小項目もかなりシンプルです。さらにCetus Proではそもそも対応していない項目もありますのであまり触る機会は無いかもしれませんね
プロポとゴーグルについて
この辺は感覚の話になってしまうのであまり書いても仕方ないかもしれませんが参考まで
まず、付属の送信機であるLiteRadio2 SEですがこれは値段のわりには悪くないプロポだと感じました
Trimスイッチが無いのは不便だと感じる方もいるかもしれませんが工場出荷状態での調整がしっかりしている印象を受けるのでまあいいかなという感じです。Smart Audioで簡単にキャリブレーションも出来ますし
なお、このプロポなのですが内部的に2種類あるようでBETAFPV Configuratorに対応しているものと対応していないバージョンが混在しているようです
私のものは対応バージョンですので上図のようにプロポをPCと接続することでBETAFPV Configuratorからある程度の設定が可能です。プロポ底面にあるUSBポートでPCとケーブル接続するだけなので簡単です
画面が変わったら右上の「Connect RC」を押すとメイン画面に入れます
モードの変更、チャンネル割り当ての変更、レンジの変更等ある程度の設定が出来ますのでこのあたりをいじりたい人はBETAFPV Configurator対応バージョンを購入するようにしましょう
非対応バージョンの場合にはLiteRadio_2_SE_Updataソフトで、モード設定変更ぐらいしかできないそうなので、もしも「あれ? 繋がらないぞ?」と思った場合にはプロポの裏面を確認してみて下さい
次に付属のゴーグルであるVR02 FPVゴーグルについてですが、これは全く期待していなかったのですが悪くない……というかだいぶ良いです
私はメインではFatsharkのHDOを使用しています。有機ELなわけですが、じゃあ映像がキレイに見れているのかというとあまりそうとも言えません。彩度が高く色味がキツく見えてしまって良し悪しに感じるところもあります
Cetus Pro FPV Kitに付属するVR02 FPVゴーグルは、作りこそチープですが、軽い・起動が早い・チャンネルサーチも早い・少し薄めだけど素直な色味で比較的見やすい――と、初めての方には必要十分なものだと感じます
突然ですが私はあまり目が良くありません。最近測ってないけど両目とも0.1ぐらい? でしょうか
メガネをかけたままこのゴーグルを装着するのはかなり困難で視度矯正のレンズなどもありません。そもそも左右ディスプレイではなくシングルディスプレイのミラー投影型ですので裸眼で見るしかないんです。でも、目の悪い私でもこのゴーグルではメガネ無しで見えます。何か分かりませんが見やすいです
ちなみにゴーグル自体の性能とは関係ないですがCetusシリーズはOSD上で様々な設定が行えるようになっています(いわゆるSmart Audio)ディスアームしている状態で左スティックを左に、右スティックを上に入れることで機能を呼び出せます『← / ↑』
スマホ直撮りで申し訳ないのですがイメージ掴んでいただければ……
TOF(つまりレーザー)やOPF(光学センサー)のON/OFF、LEDのON/OFFなんかはここから切り替えていきます。キャリブレーションもここから行えます。周波数の変更もできますがちゃんとJPにしておきましょう(笑)
その他の付属品
これもわざわざレビューの必要ない気がするのですが念のためサラッとだけ
まずケースですが、これ一つで本体もバッテリーもプロポもゴーグルも持ち歩けるのはなかなかよいです。先述の通りCetus Xを入れることもできますのでその点もナイスだと思います
次に充電器ですが、身近にあふれるようになったUSB-Type Cで2個同時に充電できる優れもの。充電時間も30分程度でなかなか優秀だと思います
また、充電器に接続せずにバッテリーを挿すと電圧チェッカーとして使えるのもなかなか気が利いています
USBコネクタも先に紹介しましたが、PCと機体を接続してBETAFPV Configuratorでファームウェアアップデートや各種設定をする際に使用します
マニュアル類とメンテキットは割愛
まとめ
ということで今回は、BETAFPVのオートホバリングも可能なTiny Whoop「Cetus Pro(FPV Kit)」について感じたことを書いていきました
ドローンを始めてみようという人にはいいのかもしれませんが、FPVをやっていきたいという方にはあまりおすすめ出来ないかなぁというのが正直な印象
ただ初めての方の立場に立ってみると、とにかく始めるまでの敷居が高いのがFPVドローンの欠点とも言えるので、その点をクリアしてくれるという点では意義のある機種なのかもしれません
次回はお兄ちゃんにあたるCetus Xのレビューを書いていきたいと思いますので興味のある方はぜひ。明日か明後日ぐらいに公開します
それではまた~
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