ASUSのROG FLOW X13がちょっと期待外れで
またASUSに騙された……
という感じだったのですが、それに代わるメインとなるラップトップとしてRazer Blade 14を購入しました
今回はファーストインプレッションに基づくレビューと、ライバル(?)であるZephyrus G14、FLOW X13とのベンチマーク比較を行っていきたいと思います
メインラップトップとしてのRazer Blade 14
半分遊びのUMPCとは違い、自分がメインとするラップトップに求めることは
- デスクトップで行う作業の1/2ぐらいのことが出先で出来る。そのためにはデスクトップの1/2ぐらいの性能は欲しい
- 大きすぎず(15インチ以上はNG)、それでいて性能を犠牲にしていないこと
- ディスプレイの色域もデスクトップ環境に近い広色域が望ましい(Adobe RGBカバー率で90%以上は欲しい。DCI-P3カバー率は95%以上は欲しい)
- そしてもちろん、色再現性に変なクセが無いことも必要
- ストレスを感じないキーボード
となっています
よく言われるバッテリーの持続性については、仕事柄、電源のとれる場所でしか使わないため気にしていません
正直に告白するとRazerはこの中で2・3は文句ないのですが、1・4・5については購入するにあたってやや不安がありました
1.についてですが、私はクリエイティブ系ソフトをメインで使うため、そうするとCPU・GPUは文句ないのですがメモリの少なさがやや気になってました。オンボードはんだ付けのため増設もできません。だから最初はFLOW X13を買ったのです
4.については、確かにカタログスペックでは基準を満たす広色域ですし評判も良いようですが、やはり実物をこの目で見るまでは不安があります
5.については、配列は文句なく、かな印字が無い点も最高に気に入っているのですが、キーストロークが浅すぎる点が不安でした
レビューではこれらの点について『実際のところどうだったのか?』といった辺りを中心に見て行ってみたいと思います
Razer Blade 14 レビュー
ファーストインプレッション
では早速開封して、これらの心配が杞憂なのかどうなのかを見ていきたいと思います
外箱はこんな感じ。あまりRazerらしさのないシンプルな箱となっています
開けてみるといつものRazerな感じのデザインを纏った化粧箱が出てきました。でも以前より簡素ですね。エコな時代の流れなんですかね
ちなみにACアダプタや化粧箱はエアクッション性の固定具でまとめられていました。これもエコってことなんでしょうか
アダプタ以外の付属品はマニュアル、ステッカー、クリーニングクロスだけというシンプルさ。好きです。クロスが付いてるのは指紋がつきやすいことを自虐してるのでしょうか(笑)
Razerといえばこの天板ロゴのグリーンフラッシュが好きです(賛否ありそうですが)。Stealthでは発光しなくなっていましたがRazer Blade 14はちゃんと光ってくれるのも個人的に嬉しいです
キーボード配列はこんな感じ
写真は大量に出回っていますが実際に目にすると、キーピッチは広いもののキーのひとつひとつは小ぶりだと感じるので、その点気になる人はいるかも? 画像じゃ分かりづらいですが、エンターキーも通常より小さいですので気づきにくいのかなと思いました
発光時はこんな感じでもちろんRazer Chromaに対応です。フォントのデザインは昔のRazerの方が好きでしたね。ちょっと残念
気にかかっていた点は問題なかったのか?
最初に結論を書いておくと、全く問題なかったです。これまで使ってきた中でもかなり完成度の高いラップトップだと感じます
性能面
といっても1.について(メモリ少ない問題)はまだ使用時間が短いため判断は早計とも思いますが、PhotoshopとAfter Effectsを同時に開いて、並行しながら作業を進めてみましたが全く気になりませんでした
重いプロジェクトになれば話は変わると思いますが、デスクトップの1/2ぐらいの性能は……という私の希望には十分こたえてくれそうな感じです。何よりも次に紹介するディスプレイが素晴らしく、おかげで作業効率が上がったようにすら思えました
ちなみに
そんなにパフォーマンス重視するならRTX3080版を買えよ
と思われるかもしれませんが、Razer Blade 14のGPUはどちらのモデルもTGPが100W(80W+20W)に制限されてしまっているため、RTX3080は名前ばかりで、実際のところ性能はかなり絞られてしまってます
まあそれはRTX3070でも同じなのですが、3070の方がフルパフォーマンスに近い性能が発揮できる=性能の低下が少なくて済んでいるのでお得感もあります
RTX3070:80~125W
結果は最初にも書いたように、RTX3070で全く問題ないと感じています
このGPUの仕様はRazer独自のものではなく、RTX3000番台のGPUに共通するcTGPによるものですので、型番だけを見て性能を計らないよう注意が必要ですね
色域と色再現性
続いて4.の実機の色域と色再現性についてなのですが……このディスプレイはとんでもないです。まさにモンスター!
画像では絶対伝わらないだろうところが残念。かつてこれほどまでに色味に満足のいくラップトップを自分は知りませんでした。パーフェクトです
もちろんMacBook Proや、かつて使っていたOLEDディスプレイのラップトップ達は満足のいく画質ではあったのですが、それらってグレア液晶だったんですよね。エンタメ用途ならともかく、作業においてグレア液晶の反射はノイズです。だから私はいつもアンチグレアフィルムを貼っていましたが、当然画質は低下します
Razer Blade 14のディスプレイはアンチグレアでありながら、スペックに偽りのない色域・再現性を持っていると感じます。このディスプレイのためだけに買う価値があると言っても過言ではないと思います
とはいえ一般的には、Macとかのピカピカディスプレイの方をキレイだと感じる人も多いでしょうから万人におすすめできるわけではないですが、画像編集や動画編集をやる方には結構マジでおすすめです
キーストロークの浅さ
5.の「キーストロークの浅さ」については、うーん……
やはりキータッチが軽い、ストロークが浅いと感じてしまいます。ただし多少の抵抗感はあるので打鍵感は予想よりはマシです。それでも他の機種と比較するとやはり不満がありますので、ここを重視する方は注意かもです
キーピッチは確保されているうえに多少ですがクリック感もあるため、ブラインドタッチはできるし誤爆も少ないです。ただ何というか、打つときに少しだけ神経を使うといいますか……慣れれば改善することかもしれないんですけどね
あ、電源ボタンの位置だけは最悪なので『電源ボタンを押したときの動作』は『何もしない』にしておいた方がいいと思いますよ(笑)
総評
という感じで、発売当初はスルーしていたこの機種ですが実際に使ってみるとライバル機種(Zephyrus G14、FLOW X13)よりも圧倒的に使いやすく満足度も高いです。お値段も別格に高いだけのことはありました
使って感じたその他の長所と短所も簡単にまとめておきます。まずは長所
- 静音性は優秀
- かな印字の無いキーボードがすごく好き
- やっぱUSB-Aポートは2つはないと始まらない(ハブは実際のところめんどくさい)
- Fnキーを押したときにライティングがファンクションキー以外消灯すること
- 今度出る予定のM1X MacBook Proよりも性能が高い
短所はこちら
- ACアダプタがまるでレンガ。ゴツ過ぎて絶対に持ち歩きたくない
- しかしPD駆動でのグラフィック性能はiGPU以下(重要)
- SDカードスロットが無い。ハブを使って対応してるが面倒だし邪魔
- 以前よりマシになってるけど、やっぱ指紋はつきやすい
こんな感じです
ACアダプタについては覚悟してたから仕方ないかなとも思ってます。じゃあPDで使おうかと思うと、これがFLOW X13以上に性能低下が激しくてかなり厳しいです。しかし持ち歩くのはツライのでかなり悩ましいです
あ、動作音の優秀性にはびっくりしました。GPUに負荷をかけない限りはかなり静か。CPUに負担を強いる作業だとか、GPUを使ってもそれほど負荷がかからない時はファンの音がほぼ気にならないのはうれしい誤算でした
指紋について、自分は以前もRazer Blade使ってたことがあるので、それに比べると「お、改善してるじゃん」と嬉しくなりましたが、初めて使う人は気になるかもです
Razer Blade 14 ベンチマークをライバルと比較
いくら質感が高くても使い勝手がよくても、性能が劣っているようでは始まりませんのでライバル機種とベンチマーク比較をしていってみたいと思います
※Zephyrus G14は前世代であるRyzen9 4900HS/RTX2060/メモリ16GBモデルです。FLOW X13は現行の最上位であるRyzen9 5900HS/RTX3050 Ti/メモリ32GBモデルです
なおベンチの結果は全ての機種で『電源に接続』『高パフォーマンスモード』で統一してあります(それぞれのPCのユーティリティでも設定できますが、そちらも最もパフォーマンスが出るモードに設定してあります)
PassMark(CPU Mark)
Razer Blade 14 |
FLOW X13 | Zephyrus G14 | |
PASSMark | 4973 | 4812 | 4643 |
CPU Mark | 21178 | 21127 | 20641 |
2D Mark | 505 | 513 | 462 |
3D Mark | 12236 | 9229 | 10203 |
MEMORY Mark | 2688 | 2462 | 2975 |
DISK Mark | 29503 | 18120 | 13369 |
このような結果になりました
CPUについてはRyzenのHSだろうがHXだろうが気にするような差はないってことですね。メモリもLPDDR4X-4266のFLOW13と違って、DDR4-3200を搭載している2機種の方が優秀ですね
グラフィックについてはもちろんRazer Blade 14がダントツですが、こうしてPCの全体性能を眺めてみるとそれほど神経質になる性能差はなさそうです
GeekBench 4&5
Razer Blade 14 |
FLOW X13 | Zephyrus G14 | |
GeekBench4 シングルコア |
6139 | 6179 | 5367 |
GeekBench4 マルチコア |
31048 | 33150 | 30832 |
GeekBench4 GPU(OpenCL) |
291974 | 176978 | 183994 |
GeekBench5 シングルコア |
1457 | 1467 | 1221 |
GeekBench5 マルチコア |
7282 | 8175 | 8067 |
GeekBench5 GPU(OpenCL) |
114356 | 62311 | 66783 |
このような結果となりました
CPUのスコアを見るとRyzen HSを搭載する2機種が上回っていますね。噂ではRazer Blade 14の最高性能モードはGPUに注力するよう設定されており、CPUは多少控えめに回るんだと外国のレビュワーが言ってるのを聞いたことがあります。GPUのスコアが図抜けているのもその顕れかもしれませんね
CPU性能重視の方は注意かもですが、この傾向は後述するRazer Synapseの設定によって回避可能ですのであまり心配しなくてもいいかもしれません
CINEBENCH R20/R23
Razer Blade 14 |
FLOW X13 | Zephyrus G14 | |
CINEBENCH R20 マルチコア |
4526 | 4562 | 4435 |
CINEBENCH R23 マルチコア |
11579 | 9988 | 9437 |
このような結果となりました
最新のCINEBENCH R23ではR20や先ほどのGeekBenchとは違ったスコアになりました。このテストは上記3つの中では最も負荷が高いうえ実行時間も長いため、他の2機種は途中で熱による性能低下が起きたのかなと予想
かなり薄いRazer Blade 14ですが、ベイパーチャンバーによる冷却は非常に優秀なようです
PCMark10
Razer Blade 14 |
FLOW X13 | Zephyrus G14 | |
Essentials | 10012 | 9501 | 8770 |
Productivity | 9030 | 8287 | 7352 |
Digital Contents Creation | 9036 | 7369 | 7678 |
総合スコア | 6702 | 5979 | 5671 |
という結果に
こちらも長めのベンチなことに加えて実利用に近い形でのテストを行いますので、ここのスコアが良いのは嬉しいですね
GPUを多用するコンテンツ制作はもちろんですが、メモリやストレージの高速性によってどんな用途でもストレスなく使っていけそうです
Fire Strike(3DMark)
Razer Blade 14 |
FLOW X13 | Zephyrus G14 | |
Graphicsスコア | 21805 | 10406 | 14216 |
総合スコア | 20115 | 9726 | 13296 |
流石に桁違いの性能を見せつけてきましたね
と言ってもこれでもRTX3070の本来のスコアからすると微妙に低いです。まあ5~10%ぐらいですし、これを14インチウルトラブックサイズのPCが叩き出したと思うと感慨深いものがあります
ただ、PD駆動時はこのスコアが1/4ぐらいになります。どっちも5500ぐらいのスコアに……買う人は運用方法もよく考えた方がいいかも
Time Spy(3DMark)
Razer Blade 14 |
FLOW X13 | Zephyrus G14 | |
Graphicsスコア | 8970 | 4140 | 5333 |
総合スコア | 8897 | 4464 | 5702 |
こちらもダブルスコア状態ですね。現行のZephyrus G14ならRTX3060ですのでもう少しスコアは高くなりそうですが、それでもRazer Blade 14が勝ってるんですよね……。音も静かだし結構感動です
ドラクエ10ベンチマーク
条件を揃えるため全ての機種で「最高品質・1920×1080・フルスクリーン」で実施
Razer Blade 14 |
FLOW X13 | Zephyrus G14 | |
スコア | 21414 | 20852 | 18570 |
評価 | すごく快適 | すごく快適 | すごく快適 |
これは本当はやる必要がないのですが毎度のお約束なので一応。このスコアでは各機種の性能差は測れませんのであしからず
FF14ベンチマーク
条件を揃えるため全ての機種で「高品質(デスクトップ)・1920×1080・ウィンドウ」で実施
Razer Blade 14 |
FLOW X13 | Zephyrus G14 | |
スコア | 15284 | 11517 | 11395 |
評価 | 非常に快適 | とても快適 | とても快適 |
ついにウルトラブックが、最高評価である「非常に快適」をゲットしました。そりゃもっと設定下げればいきますけど、デフォルト設定でこの評価は感無量です
FF15ベンチマーク
条件を揃えるため全ての機種で「標準品質・1920×1080・ウィンドウ」で実施
Razer Blade 14 |
FLOW X13 | Zephyrus G14 | |
スコア | 10100 | 5744 | 7803 |
評価 | とても快適 | やや快適 | 快適 |
こちらもついに1万の大台へ――
CrystalDiskMark
Razer Blade 14 |
FLOW X13 | Zephyrus G14 | |
SEQ1M Q8T1 Read/Write | 3570.63 / 3025.17 |
2452.69 / 1997.76 | 1870.14 /1077.57 |
SEQ1M Q1T1 Read/Write | 2683.56 / 2971.72 |
1751.62 / 1973.25 | 1431.53 / 1073.16 |
RND4K Q32T1 Read/Write | 570.06 / 439.65 |
394.68 / 570.18 | 484.09 / 462.24 |
RND4K Q1T1 Read/Write | 49.68 / 146.43 |
42.52 / 140.41 | 47.15 / 103.77 |
こうして比較すると、ASUSのPCが安いのはこういう見えにくいところでコストを下げてるからなんだなぁと改めて感じます。その点Razer Bladeは一応そこそこのSSDを使ってくれています。もちろん最近のPCIe4接続SSDには負けてますので、どんぐりの背比べと思われる方もいるかもですが
ちなみにこれらの機種はどれもSSDの交換ができますので、ストレージテストはあまり意味がないかもしれませんね
補足 Razerはもっとパフォーマンスアップが可能
実はRazer Blade 14については、ASUSのライバル機種と違いさらにパフォーマンスをアップすることが可能だったりします
先に書いた通り、それぞれの機種ではユーティリティソフト(Razer Synapse、Armoury Create)にて最も性能重視のモードにしてありますが、Razerの場合にはさらにこれを上回るモードがあります
それがカスタムモードです
こちらを設定することでCPUとGPUのパフォーマンスをそれぞれ個別に設定することが可能となっています
例えばCPUだけを「ブースト」にしてCINEBENCHを回した際のスコアの変化は11579→13248で、向上率は約14%
逆にGPUだけを「高」にしてFF15ベンチを回した際には10100→10987で、向上率は約8%
ではCPUもGPUも最高設定にして、どちらも必要なテストをするとどうなるのか
Fire StrikeのGraphicsスコアは21805→22910で向上率は13%、Physicsスコアは23930→23684で向上率-1%、Combinedは11051→11617で向上率5%、総合スコアは20115→20973の向上率4%ですので、どちらも有効にするとGPUにより多くの比重が多く割かれCPUはブーストしないってことのようです
都合よく「どっちも最高性能で!」ってのは無理だということですね
今必要なのはCPU性能なのかGPU性能なのか、きちんと見極めて設定してやることでさらにハッピーに使っていけそうですね
GPU性能が欲しい場合には、CPUも「ブースト」に設定してやることでさらにGPU性能の方が向上するという謎設定です。Fire StrikeでもFFでも同様の傾向だったのでそういう仕様なのでしょう。こうすることで、さっきは8%だったFFの向上率も12%まで伸びましたよ
なお、このカスタム設定をすると静音性は犠牲になり、ライバルのASUS機種と同じぐらいファンの音が大きくなりますのでその点は注意です
唯一にして最大の欠点と、究極の選択
PD駆動時のパフォーマンスが激悪い
そんな素晴らしい機種Razer Blade 14にも、とてつもなく大きな欠点があります。それが途中でも何度か書いてきた
PD駆動時のパフォーマンスの低さ
これがまあ、人によってはお話にならないってレベルで低下します。PD駆動時は先に書いたRazer Synapseの設定も無効となってしまい設定不可となります。貧弱モードでの使用を強制され、回避策はないってことなんですね
購入される方はこうした特性を十分に承知してから買うことをおすすめします
ここから先はうんちくと想像が主なので読まなくてもいいです
以前にこちらの記事で書いたようにASUSの機種でも性能低下が顕著でした
そもそもなぜ性能が低下するのかというと、これはAMDのせいなのです。AMDのCPU(APU)はAC電源駆動時はIntelを凌駕するパフォーマンスを発揮しますが、バッテリー駆動時には性能が50%程度低下することが明らかになっています
Intelによってこの件が発表されたとき
プロセスルールの微細化で遅れをとってるIntelが、ライバルを貶めることでプライドを保ち始めたぞ。とんでもないイチャモンつけてカッコ悪っ(笑)
と言う人がたくさんいましたが、こうして実機を動かすとIntelの言い分は事実だということがハッキリ分かります。しかしこの点に不満があるわけではありません
そもそも35W~45WのCPUを62Wh程度のバッテリーで動かすのですから、1時間半弱で空っぽになってしまうこともあり得るわけで、そこにソフトウェアで制限がかかるのも止む無しと思っています
ただ思うのは
自分で設定させてくれよっ!
ってことなんですよね。世の中には「すぐに電池が切れてもいいから短時間でもフルパワーで回したい」という人もいるんです
ASUSのことは知りませんが、Razerはこの問題に対して「パフォーマンスの低下はAMDが設定したPSPP(PCIe Speed Power Policy)によるもので、我々に制御できるものではない」と言っています。ええ、そうなのぉ~っ!?
そんな電源管理なのですが、ROGシリーズやこのRazer Bladeは最大で100W動作するdGPUまで載っているわけですからよりシビアです。Razerの場合、仮に100WのPDで駆動すると、50Wが充電に回され残りの50Wがシステムに予約分として確保されるようです。ASUSは65Wらしいとも見ました
するとどういうことが起きるのか?
この50Wないし65Wを利用して、CPUとGPU(とSSDやメモリなどその他のシステム全体)を動作させるわけですので、MAX時の数分の1の性能しか発揮できなくなります
FLOW X13のAC電源は100W出力ですが、PDで得られるのは(Redditを信じるなら)65Wとなりますのでおよそ2/3です。当然パフォーマンスも2/3に低下するという理論になりますし、実際に以前の記事で検証した時はまさにそんな程度の低下割合でした
じゃあRazer Blade 14はというと、こちらのAC電源は230Wです。と言っても実際に230W使用しているわけではなく余裕を持たせてあり、実際には180W程度に収まっているものと思います。ただ正確には判別できないので、ここでは明らかになっているCPU最大42WとGPU最大100Wの合計で142Wだと考えてみたいと思います
それでも、本来142W必要なところが50Wしか得られなければ性能は1/3近くまで低下してしまうということになります。そしてそれは事実なのです。以下の表をご覧ください
AC接続時 | PD駆動時 | |
GeekBench 5 CPUマルチ | 7282 | 6754 |
GeekBench 5 GPU | 114356 | 33737 |
Fire Strike Graphics | 21805 | 5572 |
Fire Strike Physics | 21805 | 21968 |
Fire Strike 総合 | 20115 | 5204 |
FF14ベンチマーク スコア | 15284 | 5794 |
これが実際に私が測定した性能低下の度合いです。酷いものだと1/4ぐらいまで落ちているものがありますよね
表を見ると分かるのですが、CPUはあまり低下していないのにGPUの性能が著しく低下していることが分かります。50Wという限りある電力リソースを、CPUに多く割り当てているのでしょう
このセッティングをしているのがRazerなのかAMDなのかは分かりませんが、ASUSの方でも同じ傾向があったのでAMDの設定のような気がします
もしAMDの設定だとしたら、PD駆動時でも(自分たちが設計した)CPUは性能が良いように振る舞いつつ、他社のGPUが性能低下して足引っ張ってるように見せてるってことなので、かなりムカつきますね(笑)
究極の選択? あるいは解決策
こうなると私のようにRazer Blade 14かFLOW X13かで迷っている人は悩みますよね。何しろPD駆動時の性能はROG FLOW X13の方が勝っているのです。なので選択肢としては
- Razer Blade 14を所持。出先ではFLOW X13以下の性能だけど家では神性能だから我慢する
- Razer Blade 14を所持。死ぬほど持ち歩きにくいレンガのようなACアダプタを携帯して外でも神性能!
- FLOW X13を所持。出先でイマイチな性能(それでもBlade 14には勝っている)で使いつつ、家ではそこそこの性能で使っていく
- FLOW X13を所持。ちょっと持ち歩きにくいACアダプタを携帯し、家でも外でもそこそこの性能で使う
という感じになりそうです。どれもちょっとヤダ……
しかし今回死ぬほどRedditを読み漁ったところ、役立ちそうな情報を発見しました。偉大なる外国の同志の方よありがとう。曰く
「Razer Blade 14は、PD駆動時はCPUにリソースが多く割かれるが、バッテリー駆動時はGPUへの割り振りが増すので、CPU性能が低下する代わりにグラフィック性能が良くなる」
というもの。それを実際に試したのが以下です
PD駆動時 |
バッテリー駆動時 | FLOW X13 PD駆動時 | |
GeekBench 5 CPU マルチ | 6754 | 5957 | 8085 |
GeekBench 5 GPU | 33737 | 31954 | 28631 |
Fire Strike Graphics | 5572 | 9273 | 9385 |
Fire Strike Physics | 21968 | 15060 | 19571 |
Fire Strike 総合 | 5204 | 8204 | 8738 |
FF14ベンチマークスコア | 5794 | 7484 | 9261 |
おお、確かにCPUのスコアが下がりつつ、GPUの性能は上がってます(OpenCLはよくわからないけどDirectXは明らかにそう)。バッテリー駆動時は違うアルゴリズムになってるんでしょうね
比較用にFLOW X13のPD駆動時のスコアも載せてみました。まだFLOW X13の方が勝ってる項目もあるとはいえ、このぐらいの差であればACアダプタが使えるときの圧倒的な性能差を考えて、やはりRazer Blade 14の方がいいかなと感じました
そんなわけで私は、外で普通に使うとき→PD利用・外でグラフィック性能が必要なとき→バッテリー駆動・家とか→ACアダプタ利用 で行こうかと思います。これなら結構満足いく感じです
ただしGeforce Experienceとバッテリーの電源プランの設定変更をしないと、ここまでスコアは上がらないので注意
まとめ
ということで今回はRazer Blade 14の簡単なレビューと、ベンチマーク比較を書かせていただきました。長くなったので2記事に分ければ良かったですね(笑)
これまで使ってきたノートの中で最も性能が良かっただけでなく、ディスプレイも過去最高クラスのものでしたので、メインラップトップの座もしばらく安泰っぽい感じ。最近は買っては失敗ばかりだったので嬉しいです
もっと大きなサイズであればより高性能なものもたくさんありますが、ウルトラブックのサイズで私のわがままな要望をほぼ叶えてくれたRazer Blade 14……高かったですが買って良かったと心から思っています
PD駆動の問題は残っていますが、GPU性能が必要な場合にはあえてバッテリー動作にすることで最低限の性能も確保できることが分かったので、あとはもうRazerさんの頑張りを信じてみたいと思います
最後に、私が重視していた「デスクトップの半分の性能」が出せているのか、ザックリとした比較表でまとめてこの記事は終わりたいと思います。デスクトップ機の構成はCore i7-11700K/RTX3080/メモリDDR4-3200 64GBです
Razer Blade 14 | デスクトップ | |
PassMark 総合 | 4973 | 8458 |
PCMark10 総合 | 6702 | 7552 |
Fire Strike 総合 | 20115 | 28591 |
Time Spy 総合 | 8897 | 15372 |
FF15ベンチマーク スコア | 10100 | 17859 |
14インチの狭額縁ベゼルでウルトラブックのサイズながら、どうにかメイン機のデスクトップと比較して半分ぐらいの性能は達成してくれたようです。神! ありがとうRazer
それではまた~
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