iPhoneユーザーに解説する 有機ELの仕組みと、長所・短所

有機EL 仕組み iPhone TIPS

こんにちは
有機EL大好き、りんごロイドです

有機ELマニアの私は以前から様々なOLED(有機ELのことです)端末を使ってきましたが、iPhoneユーザーの方はもしかするとiPhone XやXSではじめて有機ELを知った・使ったという方も多いのではないかと思います

また、最近はGalaxy Foldなど折りたたみスマホも話題ですが、こうした技術も有機ELパネルのおかげで実現できています

有機ELディスプレイを初めて見た方は、その画面のキレイさに感動したことと思いますが、もしかするとネットや口コミで

有機ELは画面焼けするよ

消費電力が高いよ

というようなネガティブワードを聞いたことがあるかもしれません

結論から言うと、これらは間違い、もしくは使い方に気をつければ問題ない部分となっています

今回は、特にiPhoneで有機ELデビューするという方のために

  • 有機ELって、何?
  • 有機ELの特徴と長所・短所
  • 有機ELで気をつけないといけないこと

などを、できるだけ分かりやすく解説してみたいと思います

もちろん、iPhoneユーザーではない方にとっても全く同じですので、興味のある方やトリビアとして知りたい方は参考にしてみて下さい

ウンチクはいらないから結論だけくれ! という場合には、最後の方の「有機ELの長所と短所」というあたりから読んでいただければと思います

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有機ELって何? 生きてるの?

有機EL 仕組み

有機ELは「発光する有機化合物の集合」だというのを聞いて

光る微生物がびっしり敷き詰められてるの!?

と思ってしまう方もいるかもしれません。 いや、いないかな?
私が最初そう思ってしまったので……(笑)

有機ELは生きていません

この呼び方は昔の化学に由来するものなのですが、現在は化学的に無機物から有機物を作り出すことが当たり前に行われており、呼び名が慣習として残っているだけです

なので有機ELは、一般的な意味での有機物ではなく無機物です
ウネウネ生きていませんので安心して下さい

※化学的には有機物となるのですが、このあたりのウンチクは割愛します

有機化合物というのは主に炭素を含む化合物全般を指すのですが、有機ELとはこうした有機化合物が発光する現象のことを言います(英語で略称を書くとOELとなります)

さらに、日本においてはこうした技術を用いたディスプレイパネル製品全般についても、「有機EL」という呼び方をしています

技術の名前であり、製品の名前でもあるんだね

ややこしい!

OLEDとかAMOLEDとかあるけど、何が違うの?

有機EL 仕組み

これらの呼び名は有機ELパネルの構造とも関係があったりしますので、ザックリと解説してみたいと思います

まずOLEDというのは有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode)の意味で、先ほど解説した有機EL(OEL)を利用したダイオードのことです

有機化合物を積層にすることで、発光ダイオード(LED)を構成しています

このOLEDに電気が流れることで発光します
もう少し言うと、電圧をかけて励起状態(エネルギーのかかった状態)になったOLEDが基底状態(エネルギーが最も低い状態)に移行する際に発光しています

有機EL 仕組み

この有機発光ダイオードをディスプレイの1画素ごとに配置しているわけですが、発光させるためには電気が必要ですので電極を取り付けなければなりません

でも、全ての画素に電極を取り付けようと思っても、配置の関係上、基板の全ての画素に取り付けることが難しくなっています

そこで、薄膜トランジスタ(TFT)のようなアクティブ素子を各画素に配置してOLEDを駆動するか、交差させた電極を配置してタイミングを合わせ、その交点となる画素を駆動していくか(パッシブ方式)のどちらかの方式が採用されています

これらをそれぞれ、アクティブマトリクス、パッシブマトリクスと言います

 

SAMSUNGが掲げるAMOLEDという言葉は、このうちのアクティブマトリクスを採用したOLEDであることを意味しています
Active Matrics OLEDの略ですね

ただややこしいのが、サムスンはパネルの製品名にもAMOLEDという言葉を使っていること

サムスンのAMOLEDパネルはOLEDパネルに必要となる層を少なくすることに成功し、より視認性を高めてあるという特徴があります

AMOLEDを名乗っていないパネルでもアクティブマトリクス方式が採られていることがほとんどですが、あえてスペックにAMOLEDという記載があった場合には、ただのOLEDパネルよりもスペックの良い(視認性の高い)OLEDパネルが採用されていると考えて良いと言えます

 

iPhoneはサムスン製とLG電子製の有機ELパネルを採用していますが、サムスン製のパネルであってもAMOLED表記とはなっていないことから、この両者はほとんど性能差が無いと言ってよいものとなっています

有機ELの発光方式の違い

発光方式の違いはディスプレイの色再現性や消費電力に影響を及ぼしますので、ちょろっと解説しておきます

有機ELのカラー発光方式

カラーを表現するカラー化方式ですが、大きく分けて2種類の発光方式があります

RGB発光方式とカラーフィルター方式という2種類です

RGB発光方式は、素子自体がそれぞれRGBに発光する方式で、1画素の中に3色のサブピクセルが搭載されている形状となっています

間にカラーフィルターを挿む必要が無いため色純度が高く、発光効率も良いです

有機EL 仕組み

対してカラーフィルター方式は、白色に発光する有機ELにカラーフィルターを重ねることでRGBを表現しています

有機EL 仕組み

この方式は液晶パネルの仕組みと似ていますが、有機EL自体の発光をコントロールできる特性から、液晶パネルと比べて高純度の黒色を表現出来たり、高コントラストであるという有機ELパネルのメリットを活かせるようになっています

どちらも美しい色再現の可能なパネルですが、比較するとRGB発光方式の方が色域が広く、よりキレイなパネルであると言えます

 

そして消費電力についても、カラーフィルターを通さなくて良いぶんRGB方式の方が低消費電力となっています

電力消費イメージはこんな感じです

カラーフィルター式OLED > 液晶 > RGB式OLED

右側のパネルほど、より消費電力が少ないことを意味します

 

なぜ、メリットばかりのRGB方式だけでなく、カラーフィルター方式も存在しているのかというと、それはコストが抑えられるからです

とはいえスマホに採用されているOLEDパネルは、ほとんどがRGB発光方式ですので安心して下さい

余談ですが、カラー発光方式は本当はもう1種類あります
ただ、現在はほとんど使われていないためここでは割愛します

有機ELパネルの製造方式

ついでなので製造方式の違いについても少し触れておきます

製造方式は真空蒸着と印刷の2種類の方式が存在します

「蒸着!」と言ってもギャバンではありません

ふ、古い……

 

両者の違いは、有機EL素子を真空状態で蒸発させて基盤に付着させるか、プリンターのように有機EL素子を基盤に吹き付けて印刷するかの違いです

基本的に小型の端末(スマホやPC)であれば蒸着方式が採用されていますが、製造工程が複雑なためOLEDパネルは高額となっています

一方、大型テレビ業界ではその昔、印刷方式で進めていこうという動きがありました
印刷方式の方が工程がシンプルなぶん、価格を抑えられるからです

しかし印刷方式は当時、有機EL素子をインク状にする技術が確立しておらず、開発コストがとてもかかってしまっていました

本来であれば印刷方式の方が低コストで生産可能なのですが、研究段階で莫大なお金がかかってしまったのですね

印刷方式を採用していたSONYなどは開発・量産に苦戦し、そうこうしているうちに蒸着方式を採用していたLG電子が有機ELテレビで圧倒的なシェアを持つようになりました

 

LG電子が採用しているのはカラーフィルター方式と蒸着方式を組み合わせた方法となっています

先ほどの説明を思い出していただきたいのですが、カラーフィルター方式はRGB発光方式と比べて消費電力が大きくなります

ですのでLG電子製の有機ELテレビは、同じサイズの液晶テレビと比較して電気代が高くなります

有機ELの消費電力が高いと思っている人は、たぶんこうした一面だけを見て勘違いしてしまっているのだと思います

有機ELテレビの市場をLGがほぼ独占 → LG製テレビを使っている人が電気代の高さを嘆く → カラーフィルター方式の特性を知らない人が「有機ELは電力消費が激しい」と一律に思い込んでしまう

こんな流れなんだろうなぁと予想します

 

まとめると、テレビ業界(主にLG製)の有機ELは液晶と比べて消費電力が大きいけど、スマホはRGB方式を採用しているので液晶と比べて消費電力が小さい!

となります

iPhone Xユーザーの方は安心して下さいね

 

そしてまたも余談ですが、2019年現在はSONYとパナソニックの技術を統合して開発されたJOLEDという印刷方式の大型パネルが登場してきています

こちらが主流になってくれば、有機ELテレビにおいても、液晶テレビと比較して消費電力が少なくなっていきますし、何より開発が進んでいくことで低コスト化に期待することができます

この方式が軌道に乗り生産体制が確立されると、製造コストは液晶パネル以下になると言われていますので頑張ってほしいものです

液晶よりキレイで消費電力も低いOLEDディスプレイが、液晶より安いなんてステキ☆

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有機ELで気を付けるべき焼き付き 実際どうなの?

有機EL 仕組み

ちょっと注意が必要なのが画面の焼き付きです

焼き付きの代表例が画面に残像が残ってしまう現象で、運が悪いとそのままずっと残り続けてしまいます

有機ELは液晶と違い、素子自体が発光しています

発光している間は電気が流れ続けているわけですので、徐々に素子は劣化していきます
これが焼き付きの原因になります

それでも素子自体は50,000時間以上はもつと言われていますが、同じ画面を映し続けてしまうと特定の色だけが表示され続けてしまうことになり、カラーバランスが崩れてしまって色が劣化することがあります(通称:色落ち)

これも焼き付きの一種です

 

有機ELが特に焼き付きを起こしやすいというわけではないので、昔のCRT(ブラウン管)に慣れている方であれば問題ないのですが、液晶しか知らない人にとっては注意が必要になります

液晶ディスプレイはその構造上焼き付きが非常に起きにくくなっていますので、スクリーンセーバーとか見たことない人も増えてきているのではないかと思いますので……

近年はシステム側で焼き付き対策も施されており、それほど神経質になる必要はないのですが、それでも対策として

  • 同画面で放置しない
  • PCの場合はスクリーンセーバーも検討する
  • 使わないときは消す

というようなことを意識すればより安全だと言えるかもしれません

ただ先ほども言ったように、有機ELパネルの焼き付き対策は近年かなり進んでいますのでこれらはやや大げさかなとも思います

 

「ホーム画面をつけっぱなしにする」だとか、テレビの場合であれば「24時間つけっぱなしにする」、といった使い方をしなければそこまで心配しなくても良いと思います

私はこれまで一度も焼き付きを起こしたことはありません
中には5年ぐらい使っているOLEDスマホもありますが、焼き付いていませんので安心して下さい

ゲームの寝落ちとかには注意して下さいね

有機ELの長所と短所 まとめ

ここまでに話してきたことも踏まえ、一覧でざっと有機ELの長所を挙げてみます

  • 色再現性が高く、特に黒色の表示に優れる
  • 応答速度が圧倒的に速い
  • 視野角が広い
  • コントラスト比が高い
  • 色域が広い
  • 消費電力が小さい(スマホなどRGB方式の場合)

有機ELディスプレイにはこれだけの長所があります

ダイナミックレンジの広さもそうですが、何よりも黒色の完全再現が魅力です
素子の発光自体をカットしているため、光漏れの無いキレイな黒色を表現出来ているわけですね

応答速度の速さやコントラスト比の高さはゲーマーにも向いていますし、色域の広さは写真現像や動画編集をする方にとっては非常に重要な部分ですので、そうした方には特におすすめのディスプレイとなります

 

続いて有機ELの短所はこちら

  • 製造コストが高く高額
  • 液晶と比べると画面焼けが起きやすくなっている
  • 消費電力が大きい(LG製テレビのようなカラーフィルター方式の場合)

こんな感じです

コストが高額なのは、上の方で説明した通り製造方式が印刷に切り替わっていくことで解消していくことと思います

消費電力についても説明した通り、電力消費が大きいのはカラーフィルター方式の場合であり、iPhoneのようなスマホでは逆に液晶より電力消費が小さいです(液晶と比較して30%ほど少ない)

焼き付きについてはそれほど心配することはないですが、万全を期すなら小まめな消灯やスクリーンセーバーの使用も検討していくと安心でしたね

今回iPhone X / XSユーザーの方をメインに解説を行ってきたわけですが、iPhoneの有機ELディスプレイはバッチリRGB発光方式となっていますので省電力です

安心して下さい

 

有機ELは本当に素晴らしいディスプレイだと、私は思っています
めちゃくちゃ大好きで、製品を選ぶ際には購入の大きな決め手となるほどです

今後はマイクロLEDや量子LEDが登場するとも言われていますが、2020年以降になるのは確実ですので、まだまだ有機EL――OLEDが至高のディスプレイの座に君臨する日々は続きそうです

それではまた~

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