一昨日DJIの最新ドローンMavic 3が我が家に到着しました。お金がないのでCINEバージョンではなく普通のバージョンです
そして本日、実際にフライトと撮影テストに行ってきましたのでそこで感じたことを書いてみたいと思います。主にMavic 2 ProやPhantom 4 Proとの比較での印象ですが、この機種単体での感想も書いていきますね
ちなみにまだ1日しかフライト・撮影させていないので、比較的あっさりとしたレビューです
箱が小さいのは改悪のせい
外観のレビューは既にいんふるえんさー()の皆様が書いてますので、私ごとき雑魚が今更書いても仕方ないですが一点だけ
化粧箱がMavic Mini並みに小さくなりました。これは充電器が付属しなくなったためだと思われます
本体に挿さないと充電できない仕様は実際使ってみて、やっぱりかなり不便でした
充電ハブが別売りで1万円……高いよ。でもこれは今に始まったことじゃないので仕方ないですかね
飛行性能(の概要)について
ここに関してはあまり書くことありません。予想通りという印象でした。なのでサックリと書いていきます
機体の安定性
Phantom 4 Proの時代からかなり安定していましたので引き続き素晴らしいものがあります。逆に言うと大きな感動もありません
今回から対応GNSSに中国のBeidouが加わりましたので、取得できる衛星の電波数がかなり増加しています
しかしながらGNSS(GPS)を活かすアプリが今のところ存在しないため、あまりその恩恵を受けることが出来ないのは残念なところです
操作性
重量がMavic 2 Proよりも軽くなったはずなのですが、フライト中はMavic 2 Proよりも重さを感じさせる飛行です。プロペラからもブォォッという低音がします
と言っても、重量を感じはしますがPhantom 4 Proほどではありません。Mavic特有の機敏さも持ち合わせていると思いました。両者の中間ぐらいですかね
それから、スティックの感度がデフォルト状態では鈍化した印象を受けます。NモードなんだけどCモードに近くなり、多少の舵操作のミスを拾わない=ブレないように設定されている印象です
もちろんEXP設定で変更できるのですが、より初心者向きな設定になったのかなと感じます
飛行時間
飛行時間については確かに長いです。バッテリーを3本持って行ったのですが、2本分空っぽにしたところで本日は終了しました。合計で1時間ちょっと飛ばしていたかと思います。十分満足できます
そして飛行時間が伸びた関係でローバッテリー警告も変わっています
残量が15%を切った時点で初めてローバッテリー警告が表示され、リターントゥホームがかかるという動作でした。この時のRTHも、設定した高さまで高度を上げないアドバンストRTHです(周囲の明るさによって自動で変わるらしい)
これに関しては設定項目が(今のところ?)無いようです。今までの運用方法からすると機能を過信しすぎるのは怖い気もするのですが、そういうものなのだと理解しておくことにしました
障害物回避機能
障害物検知についても確実に進化している印象。APAS 5.0は素晴らしいです
日陰にある枯れ木の枝など、意地悪なシチュエーションで実験しましたがきちんと検知して回避していました。よけ方も、上にあがったり横に避けたり状況に合わせて的確に判断してます
Matrice 300ほどではないですがレーダーチャートによって障害物の方向とおおよその形状が表示されるのも良いです
ただし地図と排他のため、マップを表示中はレーダーを見ることができません。逆もまた然り。これはちょっと残念です
伝送品質
スマコンではなくノーマルの送信機ですが、OcuSync2.0での伝送でも全く問題はありません(そもそも機体からの伝送はO3+ですし)
超ロングレンジの飛行や電波環境の悪い街中等ではまた違ってくる可能性もありますが、とりあえず山間部で目視の範囲内なら相当安定しています。アンテナ表示もずっとバリ5でした
アプリの使用感
ここに関してはちょっと不満があります。主に撮影に関することなので、詳しくは次の章で書きます
現状ではファームウェアが未完成のため、クイックショットもタイムラプスもパノラマもなーんにも使うことができません。まあこれは仕方ないけど
あと、せっかくスマコンを使わず、ノーマル送信機に大型タブレットを取り付けているのだからインターフェースをもうちょっと改善してくれると嬉しいですが無理かなぁ
さっき書いた地図とレーダーも同時表示したいし、ヒストグラムとかも小さすぎです。せっかくiPadつけてるんだからそれを活かしたいですが、スマコンを売るために対応しないんだろうなぁ
撮影性能について
こっちについては、色々と思うところがありましたので、長くそして愚痴っぽくなります
撮影全般について
分かっちゃいたけど、DJI GO 4を使用するPhantom 4 ProやMavic 2 Proと比べて設定項目が少ない・あるいは使いにくい部分が多いように感じました
まず、カラープロファイルがノーマルかD-Logかしか選べません。旧機種のようなモノクロとかビビッド(鮮やか)とかが用意されていないのはどうなんでしょうか
メーカーが宣伝していたHNCS(ハッセルブラッドナチュラルカラーソリューション)の設定項目も無し。つまりは、ノーマルというのがHNCSであり、それ以外の設定はできないということです
撮って出しではなくD-Logでグレーディングをしろということなのかもしれません。が、このD-Logもちょっと使いにくい
D-Log撮影中はLog特有のくすんだ色でしか表示を確認することができません。DJI GO 4ではLog撮影中もLUTを当てた状態でライブビューを確認する機能がついていたのにそれが無くなってしまいました。えぇ~っ!?
さらにD-Log撮影中は、露出オーバーを教えてくれるゼブラ表示も無効になってしまいます。勘で撮影しろというのでしょうか?
一応右下に露出の状態が出るのでオーバー/アンダーぐらいは分かりますが、もうちょっと細かく知りたいのに……
ノーマルカラー(HNCS)で何も考えず撮影するだけであれば逆に分かりやすくて便利なのかもしれません。でも、Mavic 3はコンシューマー向けフラッグシップを謳う機種です。それにしてはかなり初心者寄りというか、使い勝手が悪いように思ってしまいました
メインカメラの品質について
これについてはMavic 2 Proと比較してかなり良くなっていると感じます。フォーサーズセンサーの力とハッセルブラッドのレンズの力なのでしょう
あまりカメラに詳しくない人でも違いを感じられるぐらい違っているかなと思います
ただし静止画については、センサーサイズが4/3になったことで、アスペクト比が従来の3:2から4:3になってしまいました。個人的にはフルサイズやAPS-Cと同じ3:2比率が好きなのでちょっと残念。フォーサーズセンサーの仕様なのではじめから分かっていたことではあるのですが
また動画についても、5.1Kで撮影するとアスペクト比が16:9にはならずもう少し横長になります
それと、動画についてはちょっと残念な事実も判明しました
Mavic 2 ProのD-LOG M 10bit HDR撮影は4:2:0というカラーサンプリング(クロマサンプリング)でした。カラーサンプリングとは、すごく乱暴に言うなら色の間引きのことです
私はMavic 3になってCINEモデルが4:2:2のカラーサンプリングを採用したのなら、ノーマルモデルも当然4:2:2だと思っていたのですが、その期待は裏切られました
Mavic 3ノーマルモデルのHDRは、Mavic 2 Proと同様の4:2:0のままということが撮影したデータから判明したのです
これはコーデックの違いに拠るものではありません。H.265で4:2:2というクロマサンプリングになっている機材も多くありますが、残念ながらMavic 3はそうしてこなかったということです
勝手に勘違いした自分が悪いと言われたらそれまでですが、こんなに重大なスペック間の差異があるのならきちんとスペック表に書いておいて欲しかったです……
ということでこの点を気にされる方で尚且つお金がある方は、迷わずCINEモデルを買うことをおすすめ致します
ただ、先にも書いたように撮影時の操作性があまり良くないのと、ブラインドテストをしたらどっちがProRes422 HQ(4:2:2)か判別できないという意見もあるため、コスパがいいかどうか判断に迷うところですが
参考までに、D-Logで撮影を行いカラーグレーディングした動画を載せておきます。個人的にはやはり劣化が感じられましたので、レトロフィルム調にすることで誤魔化すこととなりました(笑)
ただし2点ほど補足もあって、まずMavic 3 CINEのProResにすることでどれだけ改善するのかは未知数である点。空撮映像はディテールの細かい部分が多くなるため、ProResでも近いぐらいの劣化を起こす可能性はあります
もうひとつは撮影時のコーデックについてです。私はついついクセでH.265で撮影しましたが、Mavic 3はH.264の方がビットレートが高くなっています。そのためもしかしたら、H.264で撮影した場合にはより良い結果が得られる可能性は無きにしも非ずです
ご参考まで
ちなみにこちらのメインカメラのみPROモードに設定することが可能で、絞り・シャッタースピード・ISO感度・露出を好きに設定できます
例えば絞りだけをマニュアルにすれば自動的にAモードに、全てをマニュアルにすればMモードになるといった仕様ですが、これも操作性はイマイチですね。DJI Flyアプリを使うんでいいから、Mavic 3接続時だけでもプロ向けのGUIを用意してほしいところです
望遠カメラ品質・ズーム機能(探索モード)について
Mavic 3最大の特徴とも言えるのがデュアルカメラシステムによる望遠カメラが使えることでしょう。実際、これはすごく楽しいです
では性能的に満足いくのかというと……うーん(汗)
望遠カメラやズーム機能は探索モード時にのみ使用可能となります。探索モード中も通常モードと同じようにフライト可能でした。違いとしては、ジンバルの操作とラダー操作(機体の旋回)が、カメラ倍率に応じて自動的に鈍化されるというもの
これによって望遠時にも目が回ってしまうようなこともなく、被写体を捉え続けることが可能となっています。Matrice300に装着するH20シリーズカメラと同じような使用感ですのでこれはすごいです
しかし映像品質はイマイチです
まずズームなのですが、一部クロップも併用してくれているのかと思いましたが、映像を見る限り完全なデジタルズームのように見えます。しかも、劣化が結構大きいです。メインカメラの2倍ズームですら劣化していて、望遠カメラの非ズーム状態(7倍)よりも画質が悪いです
望遠カメラのデジタルズームはさらに悲惨です。2倍(アプリ上は14倍と表記)にズームしただけで解像感が失われてしまって、何かを撮影できるという感じではありません
あと、これはカメラだけの問題ではないですがシンチレーション(大気の揺らぎ)が酷く、被写体はぼやけてしまい、シャッキリした撮影をすることは困難のようです。シンチレーションは天候にも左右されますので別日にも検証しますが、あまり期待はできなさそうです
さらに探索モードは様々なことに制限がかかります
- Log撮影ができないうえに、フォーマットもMP4のみ(MOV選択不可)
- コーデックの選択不可(CINEモデルも同様でH.264のみ)
- RAW撮影も不可でJPEG撮影のみ
- PROモードを使えないためAUTO撮影のみ(絞り優先とかSS優先等が不可。ISO変更も不可)
使っていて楽しいです。楽しいのですが、やはりこれはフライトや撮影を補助するためのモードなのかなと感じます。フライト中や撮影前の状況確認等では役立つでしょう。でも、作品作りに使えるとは思わない方がいいかもしれません
まとめ
非常に悩ましい機種です
Mavic 3はCINEモデルと比較して予想よりも大きな撮影性能差を付けられていました。これは悔しいのですが、CINEモデルはノーマルモデル2台分以上の値段です
もちろん付属品やスマコンの分の値段もあるわけですが、倍以上の価格に投資をしても撮影機材としてはイマイチ使い勝手が良くないという事実が悩ましいところです
機体が持つ性能の良さを、DJI Flyというアプリでは活かしきれないのではないだろうか? そんなことを感じずにはいられないというのが現時点での感想となります
もちろん今後アップデートもされるでしょうからそちらに期待したいとは思うのですが、今更DJI GO 4は無理としても、DJI Pilotに対応させるとか出来なかったのかなと思ってしまいます
確かにドローンのアプリはマンマシーンインターフェースとしてはイマイチで、分かりづらく使いづらい面も多かったです。DJIはそこをシンプルに分かりやすくしていきたいのでしょう(Appleを崇拝している企業なので)
でも、カメラってのは、はじめは取っつきにくくても使いこなせば細かく自分流に使っていけるのがメリットだとも思ってます。フラッグシップを名乗る機種にはそっち方向にいって欲しかったというのが正直な感想です
おっさんの意見すぎますかね。老害かな?
有料でもいいので、FiLMiC Proのドローン版みたいな、本格カメラ撮影が可能なサードパーティ製のアプリの登場に期待したいと思います
それではまた~
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