こんんちは、ドローンインストラクターのりんごロイドです
DJIの新ドローン(模型航空機)DJI Mini 2が発売されて2週間あまりが経ちました
この間、何度もフライトさせてみて感じたMavic Miniとの違いや、新しく追加された機能の使い方・使い勝手についてこの記事でまとめてみたいと思います
例によって、あまり他の人が書かないようなニッチなレビューや解説が中心です(笑)
新機能については設定方法なども解説しますが、Mavic Miniと共通の機能や設定については解説していませんので、基本的なMini 2やDJI Flyアプリの使い方を知りたいという方は以下の記事も併せて参考にしてみて下さい
では行ってみます
本体・送信機・専用バッグの進化
まずは外観から
本体の進化
本体についてはほとんど変化がありませんが、実用上で唯一影響のありそうな変化がフロントLEDの搭載です
このフロントLEDの採用によって、機体の前後が視認しやすくなった……と言いたいところなのですが、実は昼間は全く見えません(笑) 目の前にいてもLEDはほぼ見えない。このあたり、PhantomやMavicシリーズとは違います
ただMini 2は模型航空機であるため、航空法における「夜間飛行禁止」の規制を受けないので、日の出直前や直後のいわゆるマジックアワーに飛行させる方も多いかと思います
そうした薄暗い状況であればLEDも多少は役に立ってくれました。ただし面積が小さく輝度も低いため、距離が離れるとやはり視認できなくなるのであまり期待しすぎない方がいいかと思います
あとカメラのフレームに4Kの刻印がなされましたが
これはどうでもいいですかね(笑)
送信機(プロポ)の進化
こちらはかなり大きな進化ポイントになります
カメラの進化も捨てがたいですが、送信機の進化こそが最大の改善点と言ってもいいかもしれません。通信距離についてはまた後で解説するとして、それ以外にもたくさんの進化点があります
まず、モバイルデバイスをプロポ上部に取り付けるスタイルになったわけですが、やはりこっちの方が圧倒的に取り扱いやすいと感じます
また、モバイルデバイスとの通信ケーブルがプロポにうまく収納できるようになっている点も素晴らしいです
やっぱDJI流石だなぁと思いました
そして、スマートコントローラーと同じく警告が必要な場面ではプロポの振動(バイブレーション)とビープ音によって知らせてくれる機能が搭載され、ステータスの変化を見落とさないようになっています
まさに小さなスマコンで、付属のプロポがこれだけ高機能というのはとても高評価なポイントだと感じました
専用バッグの進化
Fly More Comboを買った人には付いてくるキャリングバッグ(単品での購入も可能)ですが、これもMavic Miniのグレーのケースと比べてかなり良くなっています
というのも、Mavic Miniの純正ケースはサイズがかなりキッチリだったこともあり、機体にプロペラホルダーを装着している状態ではケースにしまえないという欠点がありました
しかし今度の収納バッグは大容量になったため、当然プロペラホルダーを装着した状態でも余裕で収納できます
個人的に嬉しかったのは、スマホ用電動ジンバルのDJI OM 4を一緒に入れて持ち歩くことも可能なサイズだったという点
本体・送信機・バッテリーハブを入れるだけだとまだバッグに隙間がありブカブカしてるのですが、そこにOM 4を入れることで隙間がピシッとうまって気持ちよくなります。多分、最初からそれを想定したバッグなのだろうと思います
飛行性能(モーター)の進化
ここからは、実際にフライトさせるうえでの進化点になります
Mavic Miniと比べてブラシレスモーターの出力が改良されたことで、以前よりも強風に強くなったと言われていますが、実際に飛ばした感想としては
良くなったような気もするけど……うーん?
ぐらいな感じでした
私がテスト飛行させる際は川の上(河川管理事務所確認済み)で行うのですが、ご存知のように川というものは川風の影響がありますのでそこそこ強風が吹いています
そうした環境下でも風に押し負けることなくきちんと戻ってくることができるのですが、これはMavic Miniでも同じでした
さらに、先ほども写真を見せましたが
高度120m程度で強風警告が出てしまうというのもMavic Miniと同じでした
もちろん全く同じ日に同じ場所で飛ばしたわけではないので単純比較はできないのですが、体感と合わせても劇的に向上したとは言えないような気がしています。少なくとも、耐風能力が10m/sの機種と同じように考えない方がいいと思います
講習でも毎回言うのですが、耐風能力レベル5の機種を風速10.7m/sまで耐えられるとは考えない方がいいです。平均である9.35m/sぐらいを目安にすべきと思いますし、万全を期すなら低い方の基準である風速8m/sを耐風限界と思った方が安全だと思いますよ
良くなった気もするけど過信し過ぎず、安全運用でお願いしたいなと思いました
通信距離の進化
これは色々なところで言われているので今さら感もありますのでちょっとだけ
Mavic Miniで採用されていた拡張Wi-Fi方式の通信から、Mini 2ではOcuSync2.0を採用したことによって通信可能距離が理論値で3倍に伸びています
これは確かにその通りで、通信安定性はかなり向上したと実感しています
私のテスト環境ですと、Mavic Miniは直線距離にして400m程度で映像が途切れたりステータスが「通信なし」となってしまっていたものが、Mini 2では600m程度まで飛ばしましたが全く不安定になる素振りを見せませんでした
※ここでいう『距離』とはホームからの水平距離ではなく、ピタゴラスの定理によって求めた純粋な直線距離を意味しています
これは体感になってしまいますが、Lightbridge接続のPhantom 4やInspire 2よりも、こんなちっぽけなMini 2の方が通信品質が安定しているのではないかと感じました
少なくとも通信に関しては、真の意味で『Mavic 2のMiniバージョン』と言えるようになったのではないかと思います
GPS(GNSS)の進化
こちらはSNSにボソッと呟いたところ結構反響をいただけた部分です
何故かメーカーも大っぴらに宣伝していないのですが、実はDJI Mini 2のGNSSはGPS+GLONASS+GALILEOという3システムに対応したものになっています
DJI製の空撮で使われるいわゆる民生用とか言われる機種でGALILEOにまで対応している機種は、このMini 2しかないのです! Phantom 4 ProもMavic 2 ProもGPS+GLONASSというシステムでしかないことを考えるとこれは大盤振る舞いです
※産業用機まで含めれば他にもありますけどね
で、実際に測位能力が上がったのかと言うと……上がってるんですね、これが
上記画像を見ていただくと分かりますが、離陸時点で既に16個ほどの衛星を取得できています。この場所はしょっちゅう飛ばしに行きますが、GPS+GLONASS機だと離陸前は概ね10~11個程度の取得である場合が多いです
私は田舎住まいですので山間で飛ばすことも多いのですが、GALILEOも使えるようになったことでGPSロストのリスクが下がったことは嬉しい進化だと言えます
ただし測位精度については未知数です
というのも、低空では安定してホバリングしているのですがこれは下方ビジョンセンサーを併用しているためであり、他の機種でも同様に安定するからです。そしてビジョンの効かない上空まで高度を上げると、どのぐらいの精度でホバリングしているのかよく見えないんですよね……
とりあえず「今まで以上にキャッチできる衛星の電波が増えたおかげで安定度・安心感が増した」と思っておいて間違いないかと感じています
撮影機能の進化
最後に撮影機能の進化についてです。新しく追加された項目について個別に紹介していきますね
4K撮影に対応
この点を魅力に感じる方も一定数いそうな、4K撮影への対応がなされました
上記の通りDJI Flyアプリから簡単に解像度を切り替えることができますが、4K撮影の場合フレームレートは最大で30fpsまでとなっています
ただ、スペックを見る限りではセンサー・レンズはMavic Miniと同じものですので、画質面での向上を期待していると少し裏切られるかもしれません。2.7Kだろうが4Kだろうが、等倍で観た時の画質は変わらないってことです
でも解像度至上主義の人にとっては嬉しい進化であるのかもしれませんし、小さな画面で観る場合や4Kコンテンツとして公開するのでしたらその恩恵に与れることでしょう
用途によって判断するのが良いと思います
ズーム機能の搭載
これも魅力に感じる人がいるでしょう。Mavic Miniでは不可能だったズーム機能が搭載されました
が、ズームについてはひとつしっかり理解しておくべきことがあります。それは、Mini 2に搭載されているズームはデジタルズームであり、Mavic 2 Zoomのようなズームカメラとは違うということです
そもそもズームというのは、カメラのレンズを物理的に動かして焦点距離を変えることです。これが光学ズームなのですが、それとは別に最近のカメラには、ソフト上で拡大してズームしてるように見せかけるという機能が備わっています。これがデジタルズームです
で、Mini 2には2倍から4倍までのデジタルズームが備わっているのですが、デジタルズームはその仕様上どうしても画質の劣化が伴ってしまうのです
以下詳しく説明しますが、「ウンチクいらねーよ」って方は読み飛ばして下さい(笑)
Mini 2のカメラが16:9アスペクト比で撮影する時の解像度は4000×2250ピクセルであると公式サイトに書かれています
デジタルズームというのは、このサイズの写真の中心部分を切り出してズームしたように見せかけるという処理になります。画像の一部を切り取るわけですので、当然画素数は少なくなります
例えば2倍ズームする場合、縦も横も1/2サイズになりますので面積は1/4になります。つまり画素数も1/4になるということです
Mini 2の場合は4Kで2倍、フルHDなら4倍までのズームが可能なのですが、それぞれを行った際の画素数を見て下さい
このように、2倍ズームをした時の画素数は2000×1125ピクセルとなるわけですが、これは4Kが要求する3840×2160ピクセルという画素数に足りません。同様に、4倍ズーム時は1000×563ピクセルとなるわけですが、これもフルHDが要求する1920×1080ピクセルに足りません
この足りない部分を、画像処理エンジンがアップスケーリングすることによって要求される画素数を満たすようにしています。つまり、ズームされた画像というのはソフトウェア上で補完された画像であり、その分だけ画質は劣化しているということになるわけなんですね
極端にいうと↑こんな感じ。Mini 2のズームはこうなんだということは知ったうえで使う必要があります
さて。
先ほど『デジタルズームはどうしても劣化してしまう』と書きましたが、実は劣化を伴わないデジタルズームも存在します。それがクロップと言われるものです。原理としては先ほどのデジタルズームと同じなのですが……
もう一度この図をご覧ください
2倍ズームの際の解像度は2000×1125ピクセルで、これは4Kには足りないと言いましたが、フルHDの解像度(1920×1080)には足りていることが分かります
つまり、フルHD画質で撮影する際の2倍ズームであればアップコンバートの必要が無く、ただ中心を切り出すだけで済み、画質の劣化が無いということになります。これがクロップです
クロップは画質劣化が伴わないため、多くのメーカーが『ロスレスズーム』という言い方をしていたりします。DJIもそう
で、(たぶん)DJIからレビュー依頼を受けてMini 2を紹介している多くの記事が
2倍ズームはロスレス、4倍ズームは多少の劣化を伴うデジタルズーム
という書き方をしていると思うのですが、これは厳密には正しくないってことになります。正しくは
という表現になるわけです
※さらに厳密に言うなら、4K撮影の1.1倍ズームならロスレスだけど……とか色々パターンはあるけどややこしいので割愛
2倍がロスレスだと思っていると「4K撮影の2倍ズームはロスレスなんだ」と誤解してしまいますので、その点は注意して下さい
以上、ウンチク終わり
ズーム機能の使い方
長くなってしまいましたのでズーム機能の使い方はこちらで解説します
まず、「そもそもズーム機能が使えない!」って方がいると思います
これは機体のファームウェアのアップデートをしていないせいですので、何はなくともファームアップをしましょう
DJI Flyアプリのトップ画面から「更新」を選びます
ファームアップがかかるのでしばらく待ちましょう。本体は自動で何度か再起動します
ファームアップが終わると表示がこのように変わります。なお、最終的に機体の電源は切れてしまうのでファームアップが終わったら手動で電源を入れ直して下さい
以上でズーム機能が使えるようになります
ズーム機能は公式サイトでも標準機能として紹介されてるんだから、最初からそのファームを入れといてくれよって感じですけどね。個人的にはこのことから、Mini 2の開発はMavic Air 2のアップデートより前に始まっていたことが分かって面白かったですが……
で、早速ズーム機能を試すと分かると思いますが
上記のようにズーム機能は動画撮影時だけの機能で、静止画撮影時に使うことはできません。ちょっと残念ですね
動画モードではズームが使えるわけですが、これはタップする度に倍率が変わります
前の章で解説した通り、解像度によって2倍までだったり4倍までだったり上限がありますので、4倍ズームしたいのであれば画質をフルHDにしておかないとダメです
タップではなく長押しすることで倍率を細かく調節したり、徐々にズームさせていくような操作も可能となっています
が、私のスライドの仕方が下手なのか、あまり滑らかなズームインやズームアウトはできませんでした
先述したようにズーム機能は画質の劣化もありますし、これで映像を撮るというよりは、接近しなくても遠くのものを確認できるという点を重視して活用していくのが良いのではないかと感じました
遠くからでもおおよそのディティールを確認できるというのは安全上意義のあることだと思います
ただ、4倍ズームしてもブレがほとんど気にならないジンバルの性能はさすがDJIだなぁと思います
クイックショットの進化
Mavic Miniから追加されたクイックショットとして『ブーメラン』という機能があります
これは既存の機能である『サークル』の軌道を楕円に変更したようなもので、個人的にはあまり大したことないなと思ってしまいました
何か活用方法を思いついたら教えてもらえると嬉しいです
パノラマ撮影・スフィア撮影・広角撮影
これも新機能になります。パノラマ機能ですね
要は、機体が自動で複数枚の写真を撮影し、それを合成することによって表題のような写真を生成してくれるという機能になります
180°というのはスマホなんかのパノラマと同じでイメージしやすいかと思いますので他2つについて
まずスフィアですが、これはいわゆる全天周写真になります
DJI Flyアプリ上でこれをグリグリと動かして様々な角度から観ることができます
続いて広角なのですが、DJI Mini 2の画角は35mm換算で28mmとなっていますので超広角というには若干狭めです。広角機能は、複数枚の写真を合成することでより広角に写してくれるという機能になっています
残念ながら他機種のように画素数が上がることはほとんどなく、単に画角が拡がるというだけの機能のようです(24mmぐらいになってる気がするけど……どうだろう?)
一応、解像度が4000×3000ピクセルから4819×3739ピクセルに向上し、アスペクト比も4:3からもう少し正方形に近くなります。インスタ向き?
まとめ
ということで、今回はDJI Mini 2の新機能を中心に色々と書かせていただきました
個人的な満足度は高いですが、Mavic Miniを持ってる人がわざわざ買い替えるほどかというと、うーん……といった感じです
私が良かったと思うのは、まずは新しいプロポが素晴らしいと思うところと、通信方式がOcuSyncになったことによる伝送品質の向上、そしてGALILEOにまで対応したGNSSによる安心感の向上です
逆にカメラ機能の向上についてはそれほど感動しませんでした
個人的な感想ではありますが、これらが機体導入の参考になれば嬉しく思います
それではまた~
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