【画像解説】ドローンFPVのための電波の知識と、無線局開局申請の全手順

ドローン FPV 免許 解説 TIPS

こんにちは。ドローンインストラクターをしております、りんごロイドです

そういえばレーサー機やTiny Whoopに代表されるマイクロドローンなどをFPVで楽しむ際に必要となる、総務省への無線局開局についての解説をしていなかったことを思い出しました

うちのスクールは民生機を使った一般・産業向けの講習がメインとなっていますが、ごくたま~に(5GHz帯の)FPVにも興味があるという方がいて質問されますので、同じような想いを抱えている方のためにこの記事をまとめておこうと思います

ちょうど手元に無線局開局前のTiny Whoop nanoがありましたので、今回はこれを使って実際に無線局開局の手続きを行う手順を解説してみようと思います

tiny whoop nano

仕事柄もちろん無線従事者免許も持っておりますので、それなりに正確な解説ができると思いますので参考にしてみて下さい

スポンサーリンク

電波の免許についての前提条件

ウンチクですので知識をお持ちの方は読み飛ばし可です。ただ、ネット上には間違った情報も多いので知ってるつもりでも今一度確認してもらえると嬉しく思います

電波の免許って何?(ドローン編)

すでにご存じの方も多いかと思いますが、5GHz帯の電波を利用してFPVを楽しむためには電波の免許が必要です。ここが非常にややこしく、ネット上にも間違った情報が散見されますので改めて解説しておきます

なるべく簡潔に、でも詳細に分かりやすく解説するよう努力します

電波の免許は2種類ありまして

  • 無線従事者免許証
  • 無線局免許状

の2種類が必要となります

無線従事者免許は人間に対して与えられる免許で「アマチュア無線技士」とか「陸上特殊無線技士」などがこれにあたります

それに対して無線局免許は機器に対して与えられる免許です。電波を発信する装置は、免許を受けていないと使ってはいけないというルールがあるんですね(受信のみはOK)

プロポの電波について

ドローンで電波を出す装置としてまずプロポが考えられますが、「じゃあプロポも免許がないと使えないじゃん!」なのかというと、そういうわけではありません

一般的に日本で合法で利用可能なプロポは周波数が2.4GHzで微弱な出力(10mW/MHz以下)で通信を行います。この条件でさらに技適を取得していれば免許不要で使えるというルールが電波法には存在するんです

ドローン FPV 免許 解説

なので海外製のおもちゃドローンに付属するプロポは、周波数が2.4GHzで出力が10mW/MHz以下であっても、技適を取ってないせいで使えないものが多いんです

本当はもっと色々細かく分類されていたり使える周波数もいくつかあったりするのですが、これ以上の解説は情報過多になってしまうので、とりあえずプロポに関しては「技適を取得してればOK」と思ってもらって大丈夫かと思います

FPVのための画像伝送装置(VTX)は免許必須

しかしFPVをする際にはもう一つ、ドローンの機体から発信される電波が必ず存在します

機体のカメラが撮影した映像を受信機(モニター兼用のものが多い)に送ってやらなければFPVは不可能ですので、そのための電波を発信する機器が機体に取り付けられています。こうした近距離映像伝送装置のことをVTXと言います

VTXには5GHz帯の電波が使われていますので、使用するためには必ず何かしらの無線従事者免許が必要となります

いや、だったら俺2.4GHzのVTXでいいよ。DJIのドローンは映像伝送だって2.4GHzでしょ? それと同じでいいんだけど……

と思いますよね。なぜFPV重視のVTXは5GHz帯が中心なのでしょうか

電波は周波数が高くなるほど、同じデータを送った際に低遅延になるという特徴があります。先日始まった5G通信が『低遅延』をウリにしているのを聞いたことありませんか? これは4Gよりも5Gの方が周波数が高いためのメリットとなっています

FPVドローンにとってこの遅延はなかなか無視できない存在です

実機で確かめてみると、DJIのドローン映像は0コンマ数秒の遅延が発生していることが分かります。DJIドローンのような空撮用途であれば多少の画像遅延は気になりませんが、機敏な機動が要求されるレーサー機などではこの遅延が命取りになってしまいます

他にも電波干渉に強いとかデータ転送量が多いとかのメリットもあったり、逆に通信距離が短いとか遮蔽物に弱いとかのデメリットもあったりするのですがその辺の説明は割愛。興味があったら勉強してみて下さい

ということで低遅延の5GHz帯電波を使用したアナログVTXが主流となっており、日本では無線局免許が必須になってしまっているというわけです

で、無線局免許を受けるための「無線局開局届け」を提出するためには無線従事者免許が必須となっていますので、結局のところ無線従事者免許も無線局免許もどっちも必要になってしまうということになります

ここまでマジメに読んで下さった方は

あれ? でもVTXの方には技適が無くてもいいの?

と思うかもしれませんね。そうなんです、ダメなんです

……ダメなんですが。技適を取得しているVTXというものはほぼありません。そこで、使用する機器が技適機器相当として問題ないものであることを証明するため、保証団体に系統図というものを提出して保証を受けなければいけません

この保証団体は、JARDという団体とTSSという会社のどちらかから選ぶことが可能です

JARDの方が圧倒的に知名度が高く安心感がありますが、複数台の保証を受ける際にはTSSの方が安く済むためそちらを選ぶ方も多いようです(1台だけの場合はJARDの方が安い)

どちらを選んでも手順はあまり違いがありませんのでお好みで大丈夫です。今回の解説ではメジャーなJARDに頼んでみます

噂レベルではTSSは遅いとか対応が塩対応とか言われてたりしますがそんなことは無いと思います。なんでも同じですがタイミングとか担当者によるんでしょうね

保証が認められると「技術基準適合の保証書」というものがもらえますので、これを添付して総務省の通信局に申請することで、合法的にVTXを使用することが可能なわけです。分かりにくい仕組みですよね

「無線局の開局届け」をこの『系統図の提出』のことだと思っている人がいますがこれはあくまでも手続きの中の一環です。技適付きの機器でも、免許不要な周波数帯や出力でない限り、開局の届け出は必ず必要になります

例えば、「技適付きだ!」ということで話題になったDJI Digital FPV Systemであっても開局届けをして無線局免許を取得する必要がありますので、間違えないよう注意して下さい(さらに余談ですがDJI Digital FPV Systemはアマチュア無線では使えません)

資格・無線局の違いについて

さて

無線局を開局するわけですが、ここで2つの選択肢があります。それはアマチュア無線の無線局として開局するのか、無人移動体画像伝送システムとして開局するのかという選択です

この選択はとても重要。なぜならこれによって、出来ること出来ないことや必要な資格、用意すべきVTXなどが全て決まってくるからです

これは分かりやすいよう表にまとめてみます

アマチュア無線局 無人移動体画像伝送システム
必要な資格 アマチュア無線技士4級以上 陸上特殊無線技士3級以上
VTX 豊富な選択肢 かなり限定される
趣味利用 ×
業務利用 ×
周波数 5.8GHz帯(海外製)、5.6GHz帯(国産) 5.7GHz帯
費用 比較的安い(高いけど) ぼったくりレベル

このような感じ

まず、どちらの無線局で開局するのかによって必要な資格が違っていることが分かると思います。開局する無線局によってどちらの資格を取得するのか考えなければなりません

続いてVTXですが、一般にレーサーやマイクロドローンで使われるVTXはアマチュア無線局として開局するものが主流なため、こちらは選択肢が豊富です。それに対して無人移動体画像伝送システムの方はVTXがかなり限定されてきます

例えば今回開局するTiny Whoopのようなマイクロドローンにも載せられるVTXとなると、現状はHN10TというVTX一択となっています。販売はいつもお世話になっているボーダック様ですね

ドローン FPV 免許 解説

画像引用:ボーダック

マイクロよりも大きなサイズのドローンであれば、もう少しVTXの選択肢はありますが、それにしても数は多くありません

そして利用できる方法もそれぞれ違います。アマチュア無線は業務利用不可ですし、3陸特の方は趣味利用が不可となっています。というか元々が趣味で使うための資格/業務で使うための資格と区分されているので、汎用性は無いんですよね

これは厳密に考えると結構やっかいです

というのも、アマチュア無線局で開局してFPVデビューした人がレースに出て賞金を稼いでしまったら? あるいは映像撮影で報酬を得てしまったら?? もっと言うなら、その映像をYoutubeにでも公開して広告収入を得てしまったら???

これらはアウトということになります。ただし現時点では『黙認』となっている部分が多いのも事実ではありますが、厳密には電波法違反となりますので覚えておいて下さい

周波数帯もそれぞれ違っています。そもそも電波というのは『どの周波数を』『何に』『どこで』使っていいかということまで全部決められています。ついでに、

5.6GHzも使えるの? 5.8GHzだけじゃないの?

と思いますよね。違うんです。国産のVTXは5.6GHz帯となっていることが多く、海外製のVTXは5.8GHz帯となっていることが多いです。VTXは海外製が大多数のため、一般的にレース用FPVは5.8GHzという風潮になっていると言えます

しかし5.8GHz帯を使用する海外製のVTXは注意が必要です

5.8GHz帯はDSRCシステム(ETCとか)に割り当てられていたりしますので、運用に注意しないといけないのはもちろんですが、全ての帯域(チャンネル)がアマチュア無線で使えるわけではないということに気をつけなければなりません

もしお使いのVTXがアマチュア無線として国内利用できない周波数を発信してしまう機器だった場合は、その帯域の電波を発信しないように改造してから開局申請を行わなければいけません

自分でDIPスイッチをグルーガンで封印したり、スイッチ自体を取り外してしまうこともありますが、日本仕様として改造済みのVTXも売られています

昔は「改造の状況が分かる資料」(写真とか)の提出を求められましたが、最近は求められないこともあるみたいですね。今回も求められませんでした

そういう改造済みVTXを買う方がいいと思います

そして最後の費用なのですが、これはちょっとビックリするような価格差があります

アマチュア無線局を開局するのでしたら、VTX代と開局手数料、保証手数料を合わせても1万円前後で収まることが多いです。ところが5.7GHzの無人移動体画像伝送システムの場合こうはいきません

例えば先ほど紹介した、マイクロドローン用VTXの唯一の選択肢であるHN10TというVTXの場合、価格はなんと10万円弱です

さらにJUTM(日本無人機運航管理コンソーシアム)という団体の会員にならなければならず、この会費が年額10万円です。賛助会員でも無人移動体画像伝送システムを使うことは可能ですが、それでも年額3万円です。ついでに言うなら、法人か個人事業主の人しか入会できません

さらに……開局手数料自体も高額となっており2万円弱程かかります

色々と思うところはありますがこれが現行のルールですので仕方ないです。しかしJUTMだけは許せん! いくらなんでも足元見すぎだろ!? って思いますけどね(笑)

というわけで、今回の解説例のようなマイクロドローンやレーサー機などで免許を受けるなら、アマチュア無線局として開局するのがおすすめです。業務利用はできませんが、当面はレースで勝つのも無理でしょうし問題はないと思いますよ

この章のまとめ

ということで長々と書いてきましたが、予備知識・前提条件をまとめておきます

  • FPVをやるなら無線従事者の資格が要る
  • プロポは技適付きのものを選べば届け出はしなくて良い
  • VTXの届け出は必須なので「無線局開局届け」手続きをする。その際↓
  • 趣味で飛ばすならアマチュア無線局として開局(おススメ)
  • 業務で飛ばすなら無人移動体画像伝送システムの無線局申請
  • 開局する無線局に応じたVTXを用意すること
  • アマチュア無線が安くて手軽だが、厳密には副収入を得ることも違法

ということですね

今回の記事を書くにあたり、念のため3陸特とアマチュア無線の資格を取得した際に使用したテキストを引っ張り出してきて確認もしましたので内容は問題ない……はず

ドローン FPV 免許 解説

人によって解釈が違ってたりするのも電波のやっかいなところなんですけどね(笑) 曖昧な部分は総務省の通信局に電話で確認するのがおススメです

そんなわけで、今回は趣味利用のアマチュア無線局での開局となりますが具体的な申請手続き方法を解説していってみたいと思います

Tiny Whoop nanoで無線局開局申請する

ここから今回の本題です

今回は例としてTiny Whoop nanoを使用しますが、アマチュア無線局として開局するのであれば他の機体、他のVTXでも手順は同じです

必要なものを用意する

事前に用意すべきは以下

  • 電波を発信する装置(とその系統図)
  • 無線従事者免許証
  • 有効なメールアドレス

まず電波を発信する機器を用意します。プロポとVTXですね

tiny whoop nano

Tiny Whoop nanoにはこのようなプロポと受信機(モニター)が付属するモデルもあるのですが、このプロポは技適が無いため合法的に使うことができません。理論上はプロポも開局申請できるのですが、技適相当の保証を受けるのがまず無理なので現実的ではありません

やはりプロポについては技適付きのものを用意すべきです。そこで私が用意したのはJumperのT16 Plusというプロポです

技適ありなのでこれでプロポの方は申請不要で使うことが可能です。プロポ選びは悩ましいところですが、このプロポはマルチプロトコルなので他の機種の方でもほぼ間違いなく使えると思いますのでおすすめです。同じシリーズのT8SG V2なども人気ですね

受信機のプロトコルと合っていないと飛ばせませんのでプロポ選びも慎重に!

余談ですが受信機(モニター)の方は電波を発信しませんので問題なく国内使用可能です

続いてVTXですがTiny Whoop nanoには予めTBS Unify Pro NanoというVTXが組み込まれています。買ったショップさんの改造済みで系統図も付けて下さいました。この機種に限らず、マイクロドローン系は予めVTXが組み込まれていることがほとんどだと思います

このVTXの送信系統図を用意します

ドローン FPV 免許 解説

今回はショップでの購入時につけてもらった系統図がありますが、無い場合にはネット等で漁ると見つかるかもしれません。基本的には「系統図付き」として売られているものを買うのがいいと思います。あとはお馴染み戸澤さん のお世話になるか……(笑)

見つからない場合はメーカーに問い合わせてみるといいかもしれません。私は以前TBSのUnify Proを使った時、TBSに直接メールして「系統図下さい」と言ったらすぐに送ってくれました。TEAM BLACK SHEEPのこういうところが大好きです

ドローン FPV 免許 解説

最後に無線従事者免許証をお手元に用意して次へ進みます

無線局開局を電子申請する その1

用意ができたら総務省の電波利用電子申請ページへ行きましょう

ドローン FPV 免許 解説

2種類あるのですがアマチュア無線の場合はLite版で可能ですのでこちら へアクセスします

ドローン FPV 免許 解説

まず、必要に応じて「システムをご利用の前に」というところをクリックします。ここでお使いの端末のOS、ブラウザの状態をチェックしてくれますので不安な方はやっておきましょう

ドローン FPV 免許 解説

続いて「新規ユーザー登録」をクリックします

ドローン FPV 免許 解説

新規登録のため無線局免許は持ってないと思います。無線従事者免許だけお手元に用意して次に進んで下さい。次のページで利用規約が表示されるので、読んで納得できたら次に進んで下さい

ドローン FPV 免許 解説

まず個人での申請か団体としての申請かを選びます

ドローン FPV 免許 解説

すると上記のような入力項目が現われます(クリックで拡大)。全ての項目の入力ができたら最下段の「次へ」をクリックします

ドローン FPV 免許 解説

確認画面が現われますので問題なければ再最下段の「送信する」をクリックします

これで一旦作業は終了です。総務省に申請が届けられましたので、まずその旨を知らせるメールが届きます。さらに1週間ほど待機すると、登録した住所宛にユーザーID通知書というものが送られてきます

ドローン FPV 免許 解説

かなり前に手続きしたので今は通知書のデザインが違うかもしれません

ドローン FPV 免許 解説

この通知書の中にユーザーID初期パスワードが記されていますので、次はこれをもとに作業を続けていきます。ここからはちょっと長いですが頑張りましょう

ドローン FPV 免許 解説

トップページから「申請・届出」をクリックします

ドローン FPV 免許 解説

ログイン画面が表示されますので先ほどのユーザーIDと初期パスワードを入力してログインします

ドローン FPV 免許 解説

再度確認画面が表示されますので「はい(登録へ進む)」を選択します

ドローン FPV 免許 解説

新たに申請手続きを開始します」のラジオボタンをチェックします。その下の入力方法ですが、まずは「必要事項の最初からすべてを入力」を選びます

ドローン FPV 免許 解説

申請書の作成画面です。基本的に全ての項目を入力するのですが、解説が必要そうなところだけ補足しておきます

はじめに【申請の提出先】を選びます。お住いの地域によってどこの通信局に提出するのかが変わりますので該当する通信局を選んで下さい

1.申請者情報を入力するのですが、自分の申請であれば「登録済みユーザー情報を自動入力」を選べば必要事項を全て入力してくれます

2.電波法の欠格事項~と書いてありますが、ザックリ言うと過去2年以内に電波法違反で捕まったり、無線局免許を取り上げれたりしたことがないかどうかを答えます

3.ここは免許の有効期限を短くしたい場合のみ入力します。通常は5年間です。電波利用料を節約したいなどでなければ入力しなく良いと思います

4.電波利用料を前払いしたい場合はチェックを付けて下さい

5.先ほど同様「登録済みユーザー情報を自動入力」で自動で入力できます。メールアドレスはうまく入力されないこともあるのでその場合は手入力して下さい

全て入力出来たら次へ進みます

余談ですが、項目がとても長いクセに一時中断機能はついていません。入力を保存して中断したい時は右下の「入力内容保存」を選択して下さい。するとzipファイルがダウンロードできますので、次回は「保存したファイルを読み込んで編集」を選択し、ファイルを参照すれば続きから作業できます

次のページも先ほどの続きのような感じです

ドローン FPV 免許 解説

これが2ページ目なのですが、いちばん分かりにくいところでもありますので、悩みそうな箇所を部分的に拡大して解説していきたいと思います

ドローン FPV 免許 解説

まず【工事落成の予定期日】なのですが、保証済みの機器を使う方は未選択でOKとなっています。今回はJARDに技適の保証をお願いしますので不要となるわけです

ドローン FPV 免許 解説

続いて【無線設備の設置場所又は常置場所】ですが、ここは普段ドローンを保管しておく場所を入力します。大概の場合は自宅だと思いますが、会社とかの場合もありますよね。申請者情報からの自動入力も可能です

その下の【移動範囲】ですが、ここはもちろん「移動する」にチェックをつけます

ドローン FPV 免許 解説

その下の【電波の型式ならびに~】というところは迷う人も多そうです。これはVTXの送信系統図に書いてありますので確認して入力します

ドローン FPV 免許 解説

と言ってもほとんどの方がこの通りだと思いますけどね

型式のF8Wが選択肢に無いじゃん!

と思うかもしれませんが、アマチュア無線は略式によっていくつかの型式がまとめられています。それを調べるとF8Wは3SA4SAにまとめられていることが分かりますので、どちらかにチェックをつけます。今回は4SAを選びました。その他一覧表はこちら

分かりにくいのは【出力】のところで、ここはVTXの出力が小数点以下だったとしても1Wと記載するようにと言われています(手数料の関係です)。0.05Wと入力しても自動で1Wに修正され、1W分のお金が取られます

ということで今回の例では以下のように入力します

  • 希望する周波数帯:5600MHz
  • 電波の型式:4SA
  • 空中線電力:1W

この解説を読んでいる方は初めての申請だと思いますので、その下にある【備考】欄は空欄で大丈夫です

ドローン FPV 免許 解説

その下にある【工事設計書】の欄はとても重要です

送信空中線の型式】のところは空欄で大丈夫です。その下の【周波数測定装置の有無】は「」にチェックします

添付図面】の「送信系統図」のところにもチェックをつけます。そして最後の「電波法第3章に合致する~」のところにも忘れずにチェックをつけます

そうしたらこの欄の右上にある「編集」をクリックします

ドローン FPV 免許 解説

また難しそうな項目が開きました。例によって部分的に解説していきます

ドローン FPV 免許 解説

まず装置を区別するための【番号】をつけます。初めての登録なので1番でいいのではないでしょうか。その下の【適合装置~】のところはチェックをつけないで下さい。技適番号が無いですのでね

そして【発射可能な~】というところは先ほど同様希望する周波数帯と電波の型式を入力します。今回の例では周波数帯が5600MHzで型式はF8Wでしたよね

ドローン FPV 免許 解説

続いて【変調方式】を入力していきます。これも送信系統図に書いてありました。今回の例だと電波の型式は「F8W」、変調方式は「リアクタンス変調」なのですがプルダウンの中にはありませんので「上記以外の変調方式」を選択して、備考のところにリアクタンス変調と記入します

ドローン FPV 免許 解説

続いて【終段管】を記入します

終段管って何?

という感じかと思いますが、装置の最終段階についてる増幅器(通称アンプ)が終段管ですので、この名称や電圧を記入します。昔は真空管が主流だったので『管』の名称が使われているんですね

ドローン FPV 免許 解説

これもVTX送信系統図に書いてあるのですが、アンプがついていないVTXの系統図も見たことがあります。私は未経験ですが、そうした際にはトランスミッターの方の名称を入力すればOKです

ということで今回の例ですと

  • 終段管名称:RTC6671B
  • 個数:1
  • 電圧:3.3V

となります

ドローン FPV 免許 解説

続いて【定格出力】です。今度はVTXの正規の出力を入力することになります。今回の例ですと最大「50mW」ですのでそれを記入ですね。50mWと入力しても0.05Wと入力しても問題ありません(勝手に適切な形式に修正されます)

ドローン FPV 免許 解説

最後に【添付書類】としてVTX送信系統図を添付しますので、PDFにでもして用意しておいて下さい

ドローン FPV 免許 解説

添付を選択すると上記のような画面が開きますので、「送信機系統図」にチェックをつけ系統図を添付して「設定」をクリックして下さい

これで長かったこのページはおしまいです

ドローン FPV 免許 解説

次のページでは【申請料の計算】と【免状の受け取り方法を設定】します。申請料は「1W」と入力して自動計算で良いと思います。0.05Wとか50mWと入力しても自動的に1Wに修正され、その分のお金をとられます(ToT)

なお申請料の納付方法は電子納付のみとなっています

受け取り方法はお好きにどうぞ。便利な代引きを選択した場合には、個人情報の提供の同意にチェックをつけたうえで、送り先情報も入力して下さい

ドローン FPV 免許 解説

次へ」を選択すると確認画面が表示されます。入力内容に間違いがないことを確認したら、ページ下段の「次へ」をクリックして下さい

ドローン FPV 免許 解説

最終的な申請画面が出てくるのですが、このタイミングでは決して送信しないで下さい。「入力内容を保存」を選択し、パソコンにzipファイルを保存しておきます

このファイルをもとにしてJARDに保証申請を行い、「技術基準適合の保証書(開設)」というPDFを送ってもらってから改めて送信します。電子申請システムでの手続きは一旦ここでおしまいです。お疲れ様でした

JARDに技適の保証申請をする

「まだ続くのかよ!」と、心が折れそうになりますよね。でも一度経験しておけば作業量自体はそれほどでないので次回以降が楽になります

ということで頑張っていきましょう

まず、JARDのサイトにアクセスします。今回は電子申請ですのでこちら にアクセスしましょう

ドローン FPV 免許 解説

ページ中ほどにある【保証願書の入力】から「開設の場合」を選択します

ドローン FPV 免許 解説 JARD

するとこのようなページが開きます。また長いですので、悩みそうなところだけ補足していきます

ドローン FPV 免許 解説 JARD

免許を申請する無線設備】という欄です

まず「保証対象」というところにチェックをつけます。続いて「送信機の名称」を入れます。VTXの名称ですので今回の例ではTBS Unify Pro Nanoとなります。その他は空欄で大丈夫です。最後に「電波法3章に合致している」というところにチェックをつければOK

ドローン FPV 免許 解説 JARD

続いて【安全及び保安施設】というところです。この内容はドローンのVTXであれば基本的に全員一緒ですので、全く同じようにしてもらえば大丈夫です

容易に出入りできないように~というところは移動局の場合「該当しない」にチェックします。高圧電気も「該当しない」。保安施設も「該当しない」です

保守点検と遵守事項は全てチェックがついている必要がありますので、確認のうえ全てにチェックをつけて下さい

ドローン FPV 免許 解説 JARD

次の【参考事項】は何も入力しなくて大丈夫です

いちばん最後には【保証料】が自動計算されているのですが、JARDの基本保証を受けたことを証明するためのシールが欲しい方はここにチェックを入れて下さい。別に義務はありません

ドローン FPV 免許 解説

シールの発行は有料ですのでお好みで

 

以上で終了ですので「入力完了」をクリックして進んで下さい

ドローン FPV 免許 解説 JARD

確認画面が表示されます。間違いなければページ最下段の「次へ」をクリックして下さい

ドローン FPV 免許 解説 JARD

すると上記のような画面が開きます。ここでいよいよ、電子申請システムで作成して保存しておいたzipファイルの出番となります

参照」というところから申請書のzipファイルを添付して、「送信」を押せば手続きは完了です。するとJARDから『保証願書を受け付けました』というメールが届きますので、そのメールに書かれている口座へ保証料を振り込んで下さい

JARDの手続きはお金を振り込むまで開始されませんので、急ぐ方は振り込みも速攻で済ませるようにしましょう

審査が完了し無事に保証が開始されるとJARDからまたメールが届きます。そのメールに「技術基準適合の保証書(開設)」というPDFが添付されていますので、今度はそれをもとにして電子申請システムで最後の手続きを行います

ちなみに今回は1週間ほどで保証書を送ってきてくれましたので、手続きにかかる時間の目安にしてみて下さい

無線局開局を電子申請する その2

いよいよ最後です。このステップは短いですので安心して下さい

ふたたび総務省の電子申請Lite にアクセスしましょう

ドローン FPV 免許 解説

申請・届出」を選択します

ドローン FPV 免許 解説

免許所持の確認画面も、前回同様「はい」を選択して下さい

ドローン FPV 免許 解説

そうしましたら次の画面で、「新たに申請手続きを開始します」のラジオボタンをチェックし、入力方法を「保存したファイルを読み込んで編集」とします

ドローン FPV 免許 解説

先のステップで作成して保存しておいたzipファイル(電子申請ファイル)を「参照」から読み込んで添付します。その後「申請開始」を押しましょう

※JARDに申請ファイルを提出した際に、補正したものが送られてくる場合があります。その場合はJARDが直してくれたものを使うようにして下さい

前回全ての作業を終えていますので必要事項は入力済みのはずです

ドローン FPV 免許 解説

その代わりに【事項書及び工事設計書】という項目まで進んでいただき、このページのいちばん下にある【添付書類】というところに、JARDが送ってくれた「技術基準適合の保証書(開設)」を添付して下さい

あとは何も入力することがないので、確認画面まで進みます

ドローン FPV 免許 解説

記載内容に間違いがないことと、JARDからもらった保証書がきちんと添付できていることを確認したら次へ進みます

ドローン FPV 免許 解説

提出画面になりますので、今度こそ「送信」を押します!

ドローン FPV 免許 解説

提出が無事に完了すると上記画像のような画面になります

お問い合わせ番号が表示されていますが、正常に申請できればメールも届きますのでスクショとかはしなくても大丈夫。不安ならメモって下さい

今後の流れなどもこの画面で見られますが、そちらについてもメールに全てリンクが書かれていますので安心して下さい

これで申請は完了です。後は審査を待つだけですね。審査が終わり受付が受理されるとメールが送られてきます

受付が正式に受理されたら電子納付でお金を支払うことになります。電子納付というのはいわゆるペイジー(Pay-easy)のことで、これに対応した金融機関からネットバンキング又はATMで振り込みを行います

電子納付のためには「収納機関番号」、「納付番号」、「確認番号」の3つの情報が必要になりますので、電子申請Liteのマイページからこれらを確認します

ドローン FPV 免許 解説

トップページのタブメニューから「その他の機能」を選びます。【納付情報紹介】という項目がありますので「詳しくはこちら」を選択します

ドローン FPV 免許 解説

画面を進めると納付情報一覧を見ることができます。新しいものほど上に表示されていると思いますので、今回の申請に必要な3点情報をここから確認します。確認出来たらお好きな金融機関から電子納付を行って下さい

これで全ての手続きは完了です。お疲れ様でした

時期にもよるかもしれませんが、受付が受理されるまで10開庁日ほどかかり、お金を振り込んだ後の審査(?)でさらに5開庁日ほど待たされます。これぞお役所仕事! フライト予定のある方は余裕を持って申請するようにしましょう

あとは自分で選んだ配送方法で無線局免許が送られてきます

ドローン FPV 免許 解説

この無線局免許状は、無線局(この場合ドローンですね)の常置場所に備え付けておかなければなりません。たぶん自宅で登録した人が多いかと思いますので、自宅に据え付けておきましょう

ドローン FPV 免許 解説

一方で、無線従事者免許証の方は電波を使用する際には携帯しないといけないことになっていますので、FPVをやる時はアマチュア無線免許証を財布にでも入れておくようにしましょう

おまけ 無免許でもFPVが可能になるという報道について

ご存知の方も多いかもしれませんが、今年の1月に北〇道新聞が

電波の免許保持者がいれば、その人の立ち合いのもと無資格者でも5GHz帯の電波を使ってFPVが楽しめるようになる

と報道しました。これを受けて多くのドローンメディアさんが「緩和ひゃっほー♪」という記事を公開していますが、結論から言いますとこれは間違い(というか大げさな表現)ですので注意して下さい

記事には、趣味用のアマチュア無線局も業務用の無人移動体画像伝送システム無線局も、どちらもこのような方策が検討されていると書かれていました

しかし実際には、アマチュア無線のイベント等において臨時で社団局を開設することで、有資格者立ち合いのもと無資格者でもアマチュア無線を使えるようにすることを『検討している』というものであり、普段の練習には適用されません。レースについても、臨時社団局を開設していないと使うことはできなくなっています

また、業務用の無線局に対してはこのような検討自体が存在しません

これらの情報は私自身が総務省に問い合わせましたし、ドローンの電波と言えばこの人! という戸澤さんも全く同じことを言っています。私の記事だけじゃ信じられないという方は、ぜひ確認してみて下さい

ただ、業務用無線局には「主任無線従事者制度」の利用が認められています。この制度を利用することで、主任無線従事者(講習を受けないとなれない)立ち合いのもと、無資格者でもFPVを行うことが可能なんです。これは既に存在する制度です

主任無線従事者制度はアマチュア無線には適用できませんので、趣味利用の方はこれまで同様自分で無線従事者資格を取得し、無線局の開局をしないと満足にフライトさせることはできないと思いますので、頑張って免許を取得してもらえたらと思います

北〇道新聞、ちょっと間違えちゃったのかなぁ。と言っても新聞社のせいばかりとも言い切れません

知り合いのインストラクターの方が、記事が公開される前に「こうした情報は確かですか?」と新聞社から確認されたそうです。その方は「分かりません」と答えたそうですが、誰か他のドローンのプロ()の方が「確かです」とか適当なことを言っちゃって、そのせいで記事になっちゃったんだろうなぁと邪推しています

それから、技適の無い機器でも最大180日間国内利用が可能という電波法の緩和について

これは技適を取得していないスマホやドローン等でも、技適取得相当の認証(CE認証やFCC認証)を受けており、且つ、研究目的であれば届け出を行うことで国内で利用可能になるというものです

技適の有無にかかわらずFPVに用いられる5GHz帯の電波は免許が無いと使えないことに変わりありませんので、その点も勘違いしないように注意して下さい

まとめ

ということで、大変長い記事になってしまいましたが電波と免許の関係、そして具体的な電子申請方法について解説させていただきました

目次を参考に、自分が望む情報を探して部分的にでも参考にしてもらえれば幸いです

電波は分かりづらく、さらには法律自体が時代遅れになりつつあるので余計に混乱が起きているような印象があります。国にはコロナとかで必要以上に大騒ぎする前に、こうした部分をきちんと見直してほしいものだと思ってしまいます

それでは今回はこのへんで~

コメント