こんにちは
ドローンインストラクターをしています、りんごロイド( @appleroidcom)です
先日、DJIから精密農業向けドローンの「P4 MULTISPECTRAL」が発表されました
DJIはこれまでにも農薬散布ドローンとしてAgrass MG-1を発売していましたが、精密農業に特化したドローンのリリースはこれが初となります
ドローン(ICTやIoT技術)+農業という組み合わせは聞いたことある方も多いと思います。スマート農業とかAI農業とも呼ばれ、ドローンこそ出てきませんでしたが下町ロケットでも話題になりましたよね。精密農業はそうしたスマート農業の中の一分野だと思ってもらっていいと思います
今回の記事では新たに登場したP4 Multispectralのスペック・概要に加えて
- 精密農業って何?
- 農業と最新技術がどう関係するの?
といったあたりの部分についても、超ざっくりとではありますが解説していってみたいと思います。知ってると誰かに「へぇ~」っと言ってもらえるかもしれない程度にはお伝えできればと思うのですが煩雑になりすぎるのもアレだし……
できるだけ簡潔に分かり安くお伝えできるよう努力します(笑)
P4 MULTISPECTRALの特長・スペック
P4 Multispectralは見た目の通り、DJIの超ヒットドローンである「Phantom 4 Pro」をベースにしています
もっと言うと、「Phantom 4 Pro」にRTKモジュールを搭載し、高精度な位置測位を可能とした派生機種である「Phantom 4 RTK」が基になっています。背中にニョキっと突き出したRTKモジュールが特徴的ですね
従来のPhantom 4 ProからP4 Multispectral(Phantom 4 RTK)になって進化している点は以下です
- 伝送システムがLightblidgeからOcuSyncに変わり、伝送距離・伝送品質が向上している
- 対応GNSSの増加(基本はGPS+Galileo。アジアはそれに加えてBeiDou。その他の地域はGLONASS)
逆にスペックダウンしているのは以下です
- 最高速度の低下:スポーツモードが無いため、最高速度はAttiモード時の58Km/hまで(P4Pは72Km/h)
- 飛行時間の減少:機体重量が増えているため、最大27分までに低下(P4Pは30分)
エンタメ的に楽しみたいなら通常のPhantom 4 Proを買ってね♪ ってことですね。とはいえ既にディスコンになってるので、Mavic 2を買うことになるわけですが……
Phantom 4 RTKからP4 Multispectralになって変わった点は、何と言っても搭載しているカメラです。これこそが精密農業向けドローンのキモとなります
P4 Multispectralには6眼のカメラが搭載されています
上段左から順にレッドエッジ、近赤外線、グリーン。下段は左から可視光、レッド、ブルーというカメラ配置となっています
各カメラは1/2.9インチCMOSセンサーとなっていますので、可視光(RGB)カメラがあるとはいえ通常の空撮画質はお察しです。これを空撮にも使おうとするのは無理ではないですが、クオリティを求めるのであれば空撮用ドローンを別途購入すべきでしょう
可視光カメラが搭載されているのは、フライト中にNDVI(正規化植生指数)分析画像と通常の映像をスムーズに切り替えられるようにするためです。NDVI画像は赤外線カメラで見るような映像となるため、操縦や現況把握がしづらいという特性があるためこのような仕組みになっているものと思われます
その他の特長として
- RTKモジュール上部に日照センサーを搭載。異なる時間帯の計測でも、正確なNDVIデータを取得・分析可能
- TimeSyncシステムにより測位データをcm単位で取得(P4 RTKと同じ)
- D-RTK 2 モバイルステーション(別売り)に接続することでネットワークRTKを利用可能。オフラインの場合でも後処理キネマティックによって、後から精度を担保することが可能(P4 RTKと同じ)
という感じになっています
スペックだけ見ればPhantom 4 RTKの上位互換版であるように思えるわけですが、先ほども言ったようにカメラの性能が全く違っていますので、この機種を買えばP4 RTKのように使えるというわけではないという点に注意して下さい
画質を必要としない業務であればいけますね
P4 Multispectralの使用時は基本的に自動航行で定期的にフライト・撮影を行うことになりますが、使用されるアプリはGS Proになります。もちろん、TimeSyncやRTKにより通常のP4Pと比べて精度は格段に上がっています
お値段はDJI TERRAアプリとDJI GS Pro(有料機能含む)アプリ1年間の使用料込みで85万円程度と言われております。D-RTK 2 モバイルステーションがセットになったモデルで120万円程度となるようです。代理店に見積もりを依頼してみて下さい
ではこの機種を使って、具体的にどのように農業に活用していくのでしょうか
このあたりの解説は当機種に限らず、精密農業というものがどういうものなのか? という点とも関わってきますので、次章で精密農業全体の話と絡めながら解説していきたいと思います
ドローンを活用した精密農業って、何?
ここからはP4 Multispectralのスペック等に関する話ではありませんので、興味のある方だけ読んでいただければ大丈夫です
P4 Multispectralをはじめとする精密農業向けのドローンの特徴はマルチスペクトルカメラにあるわけですが、このカメラによって何をどのように撮影し、どのように活用していくのかをざっくり解説していきたいと思います
まず、精密農業とは何なのか? という話からです
ということになります。上記の定義は私がかみ砕いて書いたものであり、正確な定義は以下
「精密農業」とは農地・農作物の状態を良く観察し、きめ細かく制御し、農作物の収量及び品質の向上を図り、その結果に基づき次年度の計画を立てる一連の農業管理手法である
引用:農林水産省
ベテラン農家さんが「今が収穫のベストタイミングじゃ!」とか、「ここの土地も痩せてきたから別作物に切り替えるかのぅ」といったように、経験や勘で判断していた部分を、科学的に管理・分析して一定の品質を目指していきます
これにより品質ムラが無くなるだけでなく、人手不足が叫ばれて久しい農業において、素人でも一定の品質管理や収穫を期待することができ、新規参入者を集めやすくなるという狙いもあります
こうした科学的情報を把握・分析するために使われるのがマルチスペクトルカメラです
マルチスペクトルとは複数の異なる波長の光のことで、それぞれを個別に検出(撮影)できるカメラがマルチスペクトルカメラと呼ばれます
このマルチスペクトルカメラで何が分かるのか? 結論から言うと『光合成が活発に行われているかどうか』を判別することができます。データを蓄積していくことで他にも病気や虫害などの異常も検出が可能となります
こうした判断を、マルチスペクトルカメラが撮影した画像・データを基にNDVIを割り出して行っていきます
グリーンチャンネルのカメラが植生を、レッドが人工物を、ブルーが水分をといった具合に、要素を個別に分析することが可能。これによって生育状況だけでなく、土壌の状態や含有水分量なども判別できるそうです。尿素や窒素なども判別できるのだとか
得られたデータをどのように分析・判断するのかは専門家に委ねないと分かりませんが、取得したデータをアップロードして判別してくれるクラウドサービスがセットになっているケースが多いと思いますので、専門知識が無い方でも使っていくことができるようになっています
クラウドサービスはAIが担っているところが多いですが、専門家の知見を基にしたAIだそうですので信頼はできるものなのだと思われます
ということで、ここまで見てきて分かる通りマルチスペクトルカメラがあれば精密農業はできるということになり、ドローンは必須なわけではありません
ではなぜドローンを使うのかというと、その方が広範囲を短時間で撮影できるからです。自動航行により、決まったポイントを定期的に観測していくのにも適しています。ついでに言えばドローン(のアプリ)がクラウドと連携しやすいので、撮影から解析までシームレスな流れで行えるというのもありますかね
さらに、P4 Multispectralはできませんが、生育状況に応じて農薬散布や追肥が必要な個所を割り出し、それを基に自動航行のルートを自動作成して、農薬散布ドローンが自律飛行して対応するといったような、半完全自動化農業をも目指すことが可能となるわけです
DJIはこのデータを基にしてAgrass MG-1と連携していくような活用方法を考えているようですね
まとめ
ということで今回はP4 Multispectralの紹介と、それに関係した『精密農業とは?』という点について、超簡単にではありますが書かせていただきました
現時点のドローンはまだ「何かを撮影すること」に使うというのが最も向いている活用方法です
その撮影を空から行うことで省力化できる業種――特に人手不足が叫ばれている農業と建設業におけるドローンの活用には国も力を入れている分野ですので、これからますます盛んになっていくのではないかと期待しています
興味のある方は今のうちから少しずつ調べておいて、新世代農業・新世代建設業への転身を考えてみるのも面白いかもしれませんよ
それではまた~
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