カタログスペック通りならUMPC界隈において最強の性能を持つPC、それがSMACH Zです
私もクラウドファンディングで出資をしてクレームも出さず粛々と待ち続けているのですが、「いつ出るのか?」、「本当に出るのか?」など物議を醸す機種でもあります
実はSMACH ZにはNDA(機密保持契約)というものが交わされており、出資者にだけ公開されている情報があるものの、それをネットやSNSで公開することは禁止されています。この秘密主義も、SMACHが詐欺っぽいと言われてしまった一因なのではないかと思うのですが、先日のE3において、ようやくかなり突っ込んだ部分まで一般の方にも情報が公開されました
このE3で明らかになった内容についてはNDAが設けられておらず、自由にネットで公開することが可能となっていますので、晴れて当ブログでもSMACH Zを記事にすることが可能となりました。主に現地に行った方の情報の引用という体にして、現在公開できる情報をまとめてみたいと思います
そもそもSMACH Zって何?
という方もいると思いますので、スペックのおさらいも兼ねてSMACH Zを紹介しておこうかと思います
SMACH Z(スマックゼット)はスペインのスタートアップがクラウドファンディングで出資を募って開発したハンドヘルド型端末です。目的はずばり「重量級のゲームをどこでも気軽に楽しめるようにする端末」として開発が始まりました
STEAMで人気の重量級(動作させるのにPCスペックが求められる)ゲームなんかもNintendo SwitchやPS Vitaのようにどこでも気軽にできるようにしようというテーマなわけですね
ハンドヘルド端末と言っているのは、当初この端末はSMACH OSというLinuxベースの独自OSを搭載する予定だったためです。しかしその後Windows10に対応することが発表され、晴れてUMPCを名乗れる機種となりました
私はオンラインゲームは全くやらないのですが、そのCPU性能&グラフィック性能があればどこでもゲームのように動画編集やDTMが出来るかも? と期待して出資しました
そんなSMACH Zの性能一覧がこちら。分かりやすいよう、OneMix 3S Platinumと、おまけでiPad Proとの性能差も書いておきます
SMACH Z Ultra | OneMix 3S Platinum | iPad Pro 1TBモデル | |
CPU(SoC) | Ryzen Embedded V1605B | Core i7-8500Y | A12X Bionic |
CPUスコア | 7454 | 4067 | – |
GeekBench4 ※値は平均値 |
シングル 3500 マルチ 9000 |
シングル 3700 マルチ 7000 |
シングル 5000 マルチ 17000 |
GPU | AMD Radeon Vega8 | Intel UHD 617 | AppleカスタムGPU |
GPUスコア | 1741 | 不明(900前後) | – |
Ice Storm Unlimited グラフィックスコア |
109891 | 77156 | 196741 |
メモリ | 16GB/最大32GB DDR4 SO-DIMM |
16GB DDR3 増設不可 |
6GB 増設不可 |
ストレージ | 256GB/最大無制限 M.2 SSD 2242サイズ |
512GB 増設不可 |
1TB 増設不可 |
ディスプレイ | 6インチタッチ 1920×1080 |
8.4インチタッチ 2560×1600 |
11インチタッチ 2388×1668 |
バッテリー | 3200mAh(4セル) | 8600mAh(1セル) | 7800mAh |
インターフェース | USB A、USB C、micro USB、DP1.2、SDカードスロット、ヘッドホンジャック | USB A、USB C、micro HDMI、ヘッドホンジャック、micro SDカードスロット、デジタイザ | USB C、デジタイザ |
OS | Windows10 Home/Smach OS | Windows10 Home | iOS |
サイズ | 277 × 100 × 36mm | 204 × 129 × 14.9 mm | 247.6×178.5×5.9mm |
重量 | 644g | 656g | 468g |
価格 | 144,500円~ | 110,000円前後 | 200,000円前後 |
という感じでもうすぐ発売するOneMix 3Sのプラチナ版よりも1.5~2倍程度の性能を持っていることが分かります。それにしても改めてiPad Proの性能はスゴイです。これでWindowsが動けばなぁ……
SMACH Zの良いところ
実はあんまり無いんですよね、これが
この機種、本当は2年前に出るはずだったのですが、2年前にこのスペックだったら神機種だったと思います。でも、今さら出ても魅力がかなり半減なんですよね。それでも一応メリットを挙げると
- Windows UMPCとしては一応今でも最強の性能
- UMPCとしては珍しいDDR4 SO-DIMMメモリを採用
- 無駄に大きすぎない解像度
- ゲームをやる人にとって最適なスレート型デザイン+ボタン
- STEAMコントローラー由来のスライドタッチパッド搭載
- メモリ、ストレージを自分で換装可能。将来的にはSoCも換装可能に
という点でしょうか。最初に言ったように私はゲームはやりませんが、左右のスライドタッチパッドはそのままWindowsのポインティングデバイスとしても使えるそうですので、例えば動画編集ソフトのカラーホイールやDTM打ち込み時のモジュレーションホイールに割り当てることができれば便利そうです
それとこれは人を選ぶかもしれませんが、PCを自作した経験のある人間にとっては内部モジュールにアクセスしやすくアップグレードや改造がしやすいのはけっこう魅力的です
でも、そんなところですかね
SMACH Zの悪いところ
悪いところは結構ある気がします(笑) 個人的に特に致命的だと感じる部分は
- 横幅が大きすぎる
- サイズに対して画面が小さい
- 謎仕様のバッテリー
- メーカーの姿勢
このあたりです
まず、UMPCとカテゴライズしているものの、横幅のサイズが277mmということでこれはiPad Pro 11インチの横幅よりも大きいです。むしろiPad Pro 12.9インチに近いという……。ハッキリ言ってデカすぎ
これだったら普通にMX150搭載の薄型ノート買う方がマシな気がします。性能もMX150の方が上だし
そして無駄にデカいクセに画面は6インチとか、これは今どきの狭額縁ベゼルの真逆をいくスタイルです。ゲームギアかな? ただ、ゲーム用途であることを考えると解像度がフルHDなのとアスペクト比が16:9なのは、正しい判断をしたんだなと思いますのでそこだけは好印象です
かなり心配なのはバッテリーです
V1605BをどのぐらいのTDPで動かすのかという詳細な数値はNDAによって公開できないのですが、Core m3の数倍となっていることだけは申し上げておきます。そうなると電圧を稼がないといけないので、容量よりもセル数を増やすのは仕方ないことなのですが、その結果搭載できた容量はなんと3,200mAh! スマホかな?
恐らく日常使用においても3~4時間程度。ゲームプレイ時は1時間半ぐらいでバッテリーが切れてしまうのではないかと非常に心配しています。電源つなぎっぱで動かさないといけないなら、大型ノートやデスクトップでもいいのですが……
メーカーの姿勢については何も言うことはありません。スペイン人気質って、知ってる人は知ってるかなりアバウトな性格らしいですね
こうして改めて書き出してみて思いましたが、私は出資なのでキャンセルもできませんしガジェット好きなのでまだ楽しみも見つけられるかもしれませんが、一般の方には全く持っておススメできない製品ですね、これ(笑)
E3で判明した情報
これをメインに書くはずだったのに前置き(?)をダラダラと書いてしまいました
まず、いくつかのゲームにおいて実際に動かしていた際のFPSが判明したものがあります
それによると、モンハンワールドはおおよそ17fps、そして2016年リリースのDoomがおおよそ30fpsというスコアだったとのこと
この数値は確かにガッカリしてしまうような結果ではありますが、720PのGPD WIN 2と比較するのもまた違う気がします。そのままサクサク動かないのは残念ですが、SMACHでも解像度を720Pに下げると同時にゲーム設定をいじることで、もう少しは改善するのではないかと思っています
また、同サイトではE3会場においてSmach ZがTDP15Wで動いていたことも公開してくれています。さらに、25Wで動作させることも可能なパワードックを構想中であることも書いてくれています
これらのTDP数値については今は言及できないのですが(Tom’s Hardwareさんも同じなのでしょう)、きっともう少し良い未来が待っていると思いますよ(笑)
また、Notebook Check さんも同じ記事を引用して見解を述べていますが、そこで語られる結論はほとんど私と一緒……というよりもっと辛辣で、「SMACH Zは3年遅い」「始まる前からオワコン」と、けっこう厳しいことが書かれています
それから、スライドパッドの遅延についてもSNSなんかでかなり話題になっていました。ゲームでは致命的だという声も……。私がゲーマーでないからなのか、動画を見てもいまいち遅延が分からないのですが、本当だとしたら残念です
ちなみにこれについてはメーカーが公式フォーラムで反証を出しているのですが、例によってNDAによりここには書けません(ToT) なぜ、堂々と弁明をしないのか!? 不思議でなりません
今回のE3において、SMACH Zが確かに存在して動いていること、そしていつになるかは分からないものの本当に発売されることの証明が出来たことは本当に良かったと思います。Doomのタイムアタックトーナメントをやったりもして盛り上がったようですしね
しかしスペイン人のノンビリ気質が災いしたのか、リリースまで時間がかかりすぎました。3年とはいいませんが、せめて1年前に出てくれていたならまた評価も違ったことと思います
Notebook Checkさんの「始まる前からオワコン」というのは言いえて妙だと思います。悲しいなぁ
それではまた……
※発売時期についての続報が来ました
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